雨は止まない

降りしきる雨は、二人の吐息さえも激しく打ち消していくようだった。

​清四郎の腕の中に閉じ込められた悠理は、逃げ場を失った熱を清四郎にぶつけるように、その広い背中に指を食い込ませる。

全身を濡らす冷たい雨とは対照的に、唇が触れ合う場所だけが、この世で唯一の熱源のように焼けていた。

​「……悠理。」

​清四郎が唇を離し、掠れた声で名を呼ぶ。

その瞳には、これまで隠し続けてきた感情の澱が、濁流のように溢れ出していた。

悠理のまっすぐな想いに、清四郎の理性は音を立てて崩れ去る。

​二度目の口づけは、先ほどまでとは比べ物にならないほどに貪欲で、激しいものだった。

清四郎は悠理を抱きすくめる腕に力を込め、その華奢な体を自身のものとして焼き付けようとする。

悠理もまた、清四郎を拒むことなど微塵も考えていない。愛おしさと切実さが混ざり合う中、雨音にやらしく湿った音さえもかき消されていく。

​もつれ合う吐息、絡み合う舌先。

雨は容赦なく二人を濡らし、肌を伝う雫が熱を帯びた体の上を流れていった。

「ずっと……このままがいい……」

悠理の懇願に清四郎も相槌を打つ。​この夜、二人は互いの存在だけを信じ、溺れていた。

ただ一心に、明日という言葉が遠い世界のことのように思えるほど、深く、激しく。

雨脚は激しさを増し、波音と混ざり合い、周囲の音を完全に塗り潰している。

​濡れそぼった髪が互いの額に貼りつき、頬を伝う滴が、まるで情熱の余韻をなぞるように顎先から滴り落ちる。

悠理は清四郎の肩に顔を埋め、荒い呼吸を繰り返した。その腕から伝わる力強い鼓動が、悠理の肋骨を震わせ、自分の心音と重なっていくのを感じる。

​「……大丈夫。もう……離しはしない。」

​清四郎の低い囁きが、雨音の隙間を縫って鼓膜を震わせる。それは甘い愛の言葉というよりも、悠理という存在をこの荒れ狂う嵐の中に繋ぎ止めておこうとする、切実な渇望だった。

​清四郎は悠理の背を抱え直し、そのまま雨のシャワーを浴びながら、さらに深く、執拗な口づけを繰り返した。

悠理もまた背伸びをし、清四郎の首に腕を回し、その熱を逃すまいとすがりつく。

雨にさらされた肌は冷たいはずなのに、二人の間にある密着した空間は、摩擦熱と互いを求める熱で溶けてしまいそうに熱かった。

​言葉を交わすよりも先に、二人は互いの渇きを埋め合うことだけに没頭していた。

雨は止まない………

二人の影が、浜辺に濃く消えてゆく………