夜に惑う

夜に惑う

夜に惑う(熱夜:R)

“酒豪である”、と自負しているつもりだ。滅多なことでもない限り、酒にのまれたりはしない。騒ぐだけ騒いでスカッと眠れば、朝はすっきりいい目覚め。食欲すら減退せず、通常モードで三杯飯を食らう。だからこんなにも長く、ふわふわと宙に浮いたような酔い...
夜に惑う

夜に惑う(ラスト)

清四郎が彼らの後ろ姿を見つけた時、タイミング悪く、タクシーの前に酔っ払いのサラリーマンらしき男が飛び出してきた。急ブレーキをかける運転手。軽い舌打ちこそ出たが、客の前である。罵倒は寸でのところで飲み込んだのだろう。クラクションを軽く二回鳴ら...
夜に惑う

第五話

自宅に帰った清四郎は、ほろ苦い思いを噛みしめていた。日はすっかり傾き、夜を連れてきている。もやもやする胸の奥にまで侵食する勢いで。ベッドに横たわり思案を巡らすも、気持ちはちっとも晴れやしない。─────悠理に男の影それはあってはならない事態...
夜に惑う

第四話

甘い店内に残された悠理は、呆然と目の前にある皿を見つめていた。清四郎が残したパンケーキを食べるべきかどうかを迷っていたからだ。唐突に席を立ち上がりその場から立ち去った意味を想像する事もなく。「なんだ?あいつ………」皿の端で固まり始めたチョコ...
夜に惑う

第三話

お目当てのパンケーキ(特大トリプル・生クリーム・フルーツ増量)を二皿食べ終わった頃、悠理の携帯電話がけたたましく鳴った。彼女の大好きなロックバンドのヒット曲が甘い雰囲気の店内に響きわたり、清四郎は眉をひそめる。「こら、マナーが悪い。」「ごめ...
夜に惑う

第二話

あれから一週間。悠理はあの夜の返事を保留にし、もちろん告白されたことを魅録に伝えたりもしなかった。男女交際なんて柄じゃない。それも相手から告られるなんて……早太に抱かれた肩は別れた後も震え、鳥肌はなかなか引かなかった。気心の知れたダチとの触...
夜に惑う

第一話

「暇、だなぁ…………」ぽそり、呟いた台詞はすっかり温くなったキールロワイヤルの中に消えた。元々そこまで好きな酒じゃない。どうせならとっておきのシャンパンだけを楽しみたかったのに………今、席を外している男が勝手にオーダーしたのだ。女にはこれ、...