結婚記念日の一幕

 

 

 

清四郎は自分のチョイスが正しかったことを知る。

ヨーロッパ、イタリア。

美味しいものをたらふく食べた妻は、ご機嫌で宿泊地のホテルに戻り、更にシャンパンをあおった。

軽く3本は空けただろう。普通の人間なら泥酔状態だが、彼女はほろ酔い加減。

熟れた果実のような頬で、しっとりと甘えてくる。

「せぇしろ……………キスして……」

グラスを置き、煌めく夜の街を眺めていると、濡れた目で誘ってくる妻は、あまりにも魅力的だった。

もちろんそれに応える夫。

最初は軽く……でも彼女の心を震えさせるようなキスを落とす。

結婚して一年もなると、慣れてくるのが当然かも知れないが、二人は毎回新鮮な気持ちでキスを交わしていた。

互いの香りを胸いっぱい吸い込み、その先に待つ燃え上がるような夜を期待する。

一度離れた唇を惜しむように、悠理は「もっと……」と懇願した。

「いいですねぇ……おまえから求められるのは……。」

清四郎は目を細めて笑う。

「だって……記念日だろ……」

「記念日だから?もしかして僕へのご褒美なんですか?」

「そ……そういうわけじゃ……」

照れる妻の口を封じ、熱量の上がる口づけを与える。

唇が唇を犯していく。

下唇を啄み、吐息を奪うように重ね合う。

唇をこじ開け、いよいよ器用な舌が滑り込むと、吸い付くように絡めとられ、悠理は頭の芯が蕩けるような感覚に陥った。

「……はぁ…………んっ……っ…!」

その甘い声を聞きたいと思う反面、奪ってしまいたい衝動に駆られる。

呼吸荒く、朦朧としてきた妻を、更に濃厚なキスでぐだぐたにしてしまう夫は、もはや絶頂に向かわせようとしていた。

腰を優しくなぞる。

尾てい骨を刺激すれば、悠理は弾かれたように体を震わせた。

「ぁ……!やぁ……!」

そんな叫びを更に口で塞ぐ。

絡め合う舌が唾液に濡れ、啜り合うと、清四郎の下腹部は痛いほど膨張し始めた。

(だめだ……もっと楽しんでから……)

悠理と恋仲になるまで、キスなど好きではなかった。知識としてそれなりに経験したが、どれも儀式のようで燃え上がらない。

もともと相手を好きじゃなかったという理由もあり、心が燃えるなんてはずもなかったのだが……。

 

尾てい骨から臀部を鷲掴みにした清四郎は、軽く揺らしながら自分のモノをこすりつける。

キスに夢中になる妻は、夫の明らかな興奮の証を感じ取り、より一層、唇の快感に興じた。脳内で駆け巡るこの先の快楽へとつなげるために。

 

二人の身体は数ミリの隙間もなく重なり合っていた。ドクドクと激しいドラムのような心音を聞きながら、セックスよりも濃厚なキスで昂ぶってゆく。

(……そろそろ………か……)

清四郎は知り尽くした妻の体を抱きしめ、絡めあった舌を強く吸い込んだ。

「んんっ……っ!!!!」

その瞬間、悠理の全身が電撃を受けたように震え出す。

そして清四郎もまたその刺激を受け、静かに吐精を繰り返した。

 

腰が抜け、放心状態の悠理がベッドに横たわらされた時、清四郎の目には決して逃げられない野獣の光が灯っていた。

前戯としては激しすぎるものだったが、悠理自身、夫を強く求める布石となった。

キスの後……

「………まさか、朝までコース?」

恐る恐る聞けば、にっこりと笑う夫。

言葉にせずともわかるでしょう?といった風情である。

質のよいシーツの感触を心地よく感じながらも、これから始まる激しい闘いに身震いしてしまう。

「おまえなら……きっと最後まで付き合ってくれますよね?」

悪魔の囁きを聞き、悠理は胸の奥で(ジーザス!)と叫ぶ。

とはゆえ、期待しているのは確か。

「お手柔らかに……」

と意味のない呪文を唱え、優しき妻は静かに瞼を閉じた。