新たなる絆へ

シャンパンの気泡が弾ける音さえ、ひどく遠くに聞こえる気がした。

 

​「……清四郎?」

 

​悠理が小さく呼びかける。その声は、いつも友人として呼びかけていた時よりもずっと震えていて、わずかに湿度を含んでいた。

 

​二人が交際を始めてから、今日でちょうど二週間。

長い間「刺激的な友人」という仮面を被り、互いの隣を歩き続けてきた。

だがしかし、一度その仮面が外れてしまえば、残るは堰を切ったような情熱だけだった。

 

​「すまない……もう、我慢できそうもない……」

 

​清四郎は低く掠れた声でそう言うと、そのまま悠理をベッドへ押し倒した。

彼は男で、彼女は女。

そんな当たり前の現実が目の当たりとなり、悠理は困惑とともに喉が乾く。

サイドテーブルに置かれたシャンパングラスは半分も減っていない。それほどまでに、二人の時間は加速していたのだ。

​清四郎の白シャツの襟元が乱れ、その額には薄っすらと汗が滲んでいる。悠理を見下ろす瞳には、これまでの穏やかな親しみの色はなく、一人の男として、彼女を渇望する熱だけが宿っていた。

​悠理の心臓が、耳元で早鐘を打つ。

これまで何度も肩を並べ、笑い合ってきたはずなのに、今、こうして彼の下に身を横たえている自分は、まるで知らない誰かのように感じられた。

清四郎の重み、体温、そして自分に向けられる熱のこもった視線。

そのすべてが、悠理の理性を溶かしていく。

​「……ずっと、こうしたかった……。」

いつから?と聞けないまま、悠理は喉を鳴らす。

​清四郎の手が、戸惑いながらも確かな意思を持って悠理の頬に触れる。

長い指を持つ、大きな手。

彼の手がこんなにも優しく触れるなんて、信じられない。

その繊細な動作に、悠理は堪らず目を閉じた。

果たして、友人という境界線を越えた先には、甘美な世界が待っているのだろうか?

不安と興味、そして期待。

分かることといえば、もう戻る必要は無いってことだけ。

​二人の影がベッドの上で重なり、夜の静寂が吐息だけで満たされていく。

長年積み上げてきた「友人」という絆は、今、新たなる関係の確かな礎となり、静かに、そして力強く燃え上がり始めていた。