陽光が降り注ぐ真新しいリビングに、碧音の笑い声が鈴のように響き渡る。
「パパ!たかーい!」
清四郎の屈強な肩の上にまたがった碧音は、少し怖がりながらも、最高に嬉しそうな笑顔で父親の髪をくしゃくしゃに弄んでいた。
剣菱財閥の中枢役員として、日々厳格な空気に身を置く清四郎だが、今その顔に浮かんでいるのは、慈愛に満ちた父親の表情だ。
「おっと、あまり暴れないでくださいよ。碧音。」
そう言って娘の小さな足をしっかりと支える清四郎の所作には、愛娘を守る強さと優しさが同居している。
そんな様子を側で眺めながら、悠理が目を細めて笑った。
「あまり甘やかすとつけあがるぞ?」
言いながらも、隠しきれない幸福感が滲んでいる。
「どの口が言うんだか。」
清四郎は片眉を上げ、同じように微笑んだ。
結婚して6年。
二人には愛らしい娘が誕生し、日々親としての成長を遂げている。剣菱のお姫様と称される彼女は、ありとあらゆる贅沢を与えられる立場だが、なによりも喜ぶのは父親との時間だ。

多忙な清四郎とスキンシップ出来る僅かな時間を、彼女は存分に楽しむ。
清四郎は悠理と視線を合わせると、片目を瞑り、「交代してくれますか?」と告げた。
「碧音、こっちこい。」
「えーーー!やだぁ。」
不満の声を出す愛娘に、清四郎はやれやれと肩を竦める。
「あと十分……だけですよ。」
生まれる前は「厳しく、正しく育てます」と断言していた男。今はその台詞など忘れたかのように、激甘対応だ。
「へぇ、やさしいじゃん。」
「おや、嫉妬ですか?大丈夫……おまえには今夜たっぷり優しくしてやります。」
「ば、ばかやろ…!」
窓から差し込む午後の陽光が、三人で過ごす穏やかな時間をより一層輝かせる。
多忙な日常の中でふと立ち止まり、家族の温もりに触れるこのひとときこそが、清四郎にとって何物にも代えがたい宝物。
「そろそろいいでしょう?碧音も兄弟が欲しいと言ってますし。」
「……ふぇ?」
顔を赤くして俯く妻。
清四郎に抜かりはない。
しばらくして、計画通り、新たな命が悠理に宿ることとなる。