香港の摩天楼が放つ無数の光。
まるで宝石箱をひっくり返したかのように煌めいている。
その圧倒的な夜景を背に、悠理と清四郎の二人は、喧騒から隔絶された別荘のバルコニーで、ただ互いの存在だけを感じていた。
特急で仕立てあげたチャイナドレスに身を包む悠理は、いつもの勝気な表情を消し、甘く蕩けるような瞳で清四郎を見上げていた。
深いスリットから覗くしなやかな脚線美は、夜風を受けてなおさら艶やかに浮かび上がる。
清四郎はそんな魅力溢れる悠理の細い腰をしっかりと抱き寄せた。
「珍しく誘ってきますね……」
清四郎の柔らかな声が静寂に溶け込む。
欲情を押し殺した声。
視線は恋しい女の瞳に囚われたまま。
彼は悠理の首筋に触れた後、ゆっくり唇を重ねた。

それに併せ、悠理は清四郎の首に腕を回し、彼との距離をゼロにする。
触れる胸元。
心臓の鼓動が重なり合うのがわかった。
香港の夜景さえも、二人の熱を帯びた視界の中では、ただの背景にすぎない。
「清四郎……」
甘い声で名前を呼ぶ悠理はより深いキスを求め始める。
清四郎がそれに応えないわけがない。
粘膜を擦り合わせ、舌を絡め、互いの唾液を味わいながら、腰からスリットへとその手を伸ばしてゆく。
やがて唇が離れると、悠理の吐息は湿り気を帯び、すっかり熱く蕩けていた。
彼女を抱き寄せる清四郎の逞しい腕。
もう片方は欲望に忠実に動き始めている。
香港の光の海が、二人の吐息をより一層妖艶に染め上げていく。
「ここで……やるつもりなのか?」
悠理は清四郎の胸元に唇を這わせ、小悪魔のように微笑んだ。
しかし、その瞳の奥には隠しきれない情熱が揺らめいている。
清四郎はそんな小悪魔の顎を軽く指先ですくい上げ、逃げ場を失わせるようにじっと見つめ返した。
「おまえが望んだんでしょう?」
からかうような男の声は、悠理の耳元で低く響き、背筋にゾクりとした快楽の奔流を走らせる。
彼は悠理を抱きかかえるようにして、バルコニーのガラス窓の方へと身を預けた。
眼下では、夜の海を征くフェリーが静かな航跡を描き、街の喧騒が遠い夢の彼方のように感じられる。
悠理は清四郎のジャケットの襟を強く握りしめ、その身を委ねた。チャイナドレスの生地越しに、彼の肌の温度が否応なしに伝わってくる。
清四郎の唇が再び悠理の耳元で囁き、確実な愛撫を重ねる。
「ずいぶんと興奮させてくれましたからね……このドレスも……おまえのキスも……」
これ以上の台詞は必要なかった。
ただ互いの唇を求め、肌を重ねるごとに絆は甘く、そして抗いがたいほどに深く結びついていく。

悠理の喘ぎが光の海へと溶け込む頃、バルコニーに置かれたグラスの中で、シャンパンの泡が静かにその役目を終えていった。