冬の始まり、そして……

外では、夜の静寂を塗り替えるように激しい雪が降り続いていた。

​あれから3つの季節が過ぎ、二人の距離はもはや、その体温だけで意思疎通が図れるほどに研ぎ澄まされていた。

​剣菱邸の夜は静かだ。

悠理は彼の膝の上に乗り、彼の首に腕を回して深く抱きつく。​以前のような、ただ甘えるだけではない。欲望を露わにした行為だ。

清四郎もまた悠理の背中にそっと手を添え、彼女の身体を懐深くへと引き寄せた。

二人の間に隙間など一ミリも存在しない。

互いの鼓動がまるで一つのリズムを刻むかのように重なっている。

優しいだけのキスはその濃度を増し、激しさと切ないまでの焦燥感が交差する官能的なものへと変化していた。

悠理は清四郎を求め、清四郎はそれに応える。単純で素直な性格の持ち主は、ここにきてようやく花開いたかのようだった。

​「………雪、積もるかな?」

​悠理が顔を上げ、唇を拭う。

その顔はほんのり上気していて、とろみを帯びた視線が堪らなく魅力的だった。

​「………ええ。きっと。」

​清四郎は低く掠れた声でそう呟くと、彼女の唇に指を置く。

潤んだ瞳と濡れた唇──

少年のような少女をここまで変えてしまったのは、ほかでもない清四郎だ。

初めて結ばれたのは夏の終わり。

仲間を置いて、楽園と謳われる南の孤島へ出かけた。

海と山、白い砂浜があるだけのプライベートアイランド。そこで二人は後戻りできない関係へと進んだのだ。

『………卒業したら、結婚しませんか?』

『え!?』

濃厚な夜を過ごした翌朝。

眩しいほどの朝日を浴びた白い砂浜で、清四郎はプロポーズをする。

前々から心に決めていたことだった。

そんな彼に悠理は驚くほかない。

男の本気を前に茶化すことは、悪手であると理解していた。

『か、考えとく!!』

それは明らかに照れ隠しだったが、その時の悠理には精一杯の答えだった。

 

そして秋が過ぎ……冬となる。

一般的なカップルと同じように、二人は求め合い、その密度を濃くしてゆく。

時折喧嘩もするが、それでも体を交えてしまえばすっかり仲直りするほど些細な内容。

小さなすれ違いは数日内に修正する努力を、清四郎は怠らなかった。

​かつては「恋人」という名前に戸惑うこともあった悠理だが、今、彼女の瞳に迷いはない。清四郎の胸元で小さく呼吸を整えながら、彼という存在が自分の世界の中心であることを、彼女自身が何よりも理解していた。

「もし……明日雪が積もってたら……」

「………ん?」

絡み合う視線。

清四郎は悠理の言葉の意味を慎重に探る。

美しく濡れたその瞳が、自分を好きで仕方ないと訴えている。何も心配することはない。

「あたいと………………結婚して?」

小さく呟いた大きな爆弾発言。

清四郎の鼓動が一瞬、確実に止まる。

やがて悠理の背中に置いた手が、じんわりと熱を持ち、小刻みに震え始めた。

「…………いいんですね?僕に独占されても。」

「う、うん……」

「一生ですよ?僕と一生、ともに……」

「わあってる!!あたいがそれを望んだんだから、早く返事しろよ!」

「わかりました。結婚しましょう。」

食い気味に返事をした清四郎の胸に、悠理が思いっきり飛び込んでくる。

「よし!!無敵の夫婦になろうな!」

 

そして、​翌朝──

 一面の銀世界を目の当たりにした二人は、クスクスと笑い合いながら、この世の果てまで共に生きよう!と誓いを立てた。

(終)