窓辺に柔らかな春の光が差し込む午後。
清四郎は、まだ幼い子供たちと過ごす穏やかなひと時に浸っていた。
彼の手には、生後三ヶ月の息子、朱朔(すざく)が穏やかに眠っている。
「お父さん、見て。これ朱朔に似てるよね。」
碧音(あおね)が持ってきた絵本を指差して言う。清四郎は、眠っている息子に気づかれないよう、静かに微笑んだ。
「おや、天使画ですか。」
彼は優しく答えるも、悠理はその絵を見て「盛りすぎだろ?」と茶化した。

二人の子達は夫婦それぞれの特徴を受け継いでいる。整った目鼻立ち、織り交ぜたような髪色。碧音は母親の性格を譲り受けたのか、お転婆気質であった。
「ママの小さい頃の写真とそっくりだよ?」
悠理も幼き頃は天使のような姿だった。
母、百合子はそのまま順調に、おしとやかに育つと信じていたことだろう。
結果は見てのとおりだが……。
「なるほど。朱朔は悠理似ですか……。」
時折小さな寝息を漏らす息子を見つめ、清四郎は心からの安らぎを感じていた。
腕の中の子はきっと健やかに、そして明るい光の中で育つことだろう。
何不自由のない環境の中、ありとあらゆるものが与えられ、ときに厳しく、ときに優しく、そして悠理のように真っ直ぐ、何者にも怯えない人生を歩むはずだ。
清四郎は、いつまでもこの幸せが続くようにと、願わずにはいられなかった。
一度手にした幸せを壊しなくはない。
そのためにするべきことは───
「清四郎、考え事?それともあたいに似たら困るって?」
覗き込む妻の茶目っ気ある表情に、清四郎は緊張の糸を切った。
この家族を、剣菱を守るため、彼は常に頭をフル回転させている。
妻の無邪気な笑顔を守るために……
そして愛する子どもたちのために。
「まさか。おまえに似てくれたら……助かりますよ。」
「ほんとかぁ?」
笑いながら娘を抱き上げる妻は、この家の光そのものだ。
彼女こそ、剣菱の象徴。
清四郎は、まだ眠っている息子を改めて見つめると、その額に優しい口付けを落とした。
「母のように真っ直ぐ、すくすく育つんですよ……」