連載物(短編)

夜に惑う

第五話

自宅に帰った清四郎は、ほろ苦い思いを噛みしめていた。日はすっかり傾き、夜を連れてきている。もやもやする胸の奥にまで侵食する勢いで。ベッドに横たわり思案を巡らすも、気持ちはちっとも晴れやしない。─────悠理に男の影それはあってはならない事態...
夜に惑う

第四話

甘い店内に残された悠理は、呆然と目の前にある皿を見つめていた。清四郎が残したパンケーキを食べるべきかどうかを迷っていたからだ。唐突に席を立ち上がりその場から立ち去った意味を想像する事もなく。「なんだ?あいつ………」皿の端で固まり始めたチョコ...
夜に惑う

第三話

お目当てのパンケーキ(特大トリプル・生クリーム・フルーツ増量)を二皿食べ終わった頃、悠理の携帯電話がけたたましく鳴った。彼女の大好きなロックバンドのヒット曲が甘い雰囲気の店内に響きわたり、清四郎は眉をひそめる。「こら、マナーが悪い。」「ごめ...
夜に惑う

第二話

あれから一週間。悠理はあの夜の返事を保留にし、もちろん告白されたことを魅録に伝えたりもしなかった。男女交際なんて柄じゃない。それも相手から告られるなんて……早太に抱かれた肩は別れた後も震え、鳥肌はなかなか引かなかった。気心の知れたダチとの触...
夜に惑う

第一話

「暇、だなぁ…………」ぽそり、呟いた台詞はすっかり温くなったキールロワイヤルの中に消えた。元々そこまで好きな酒じゃない。どうせならとっておきのシャンパンだけを楽しみたかったのに………今、席を外している男が勝手にオーダーしたのだ。女にはこれ、...
悠丞&椿シリーズ

南国の空の下で

「花清ちゃんと、悠花ちゃんは寝た?」「うん。昼間遊びすぎたからね。ぐっすりさ。」「なら…………これからは私たち二人きりの時間ね。」「…………椿ちゃん♡」ここは常夏の島、ハワイ。あの後、プライベートジェット機に乗り込んだ私達は、最小限の荷物で...
悠丞&椿シリーズ

入学式

聖プレジデント学園中等部は、春爛漫のその日、入学式を迎えていた。晴れ着を纏った父兄たち。浮き足だった生徒。そのほとんどが初等部からの持ち上がりだが、中学生という肩書きが心躍らせるのか、皆そわそわしていた。新入生代表の挨拶に、”松竹梅 椿(し...
悠丞&椿シリーズ

同じ温もりで・・・・

悠丞君は鈍感で、自分では解っていないようだけど、人を惹きつける魅力がとってもある男の子なの。善人、悪人の識別はほぼ100%正解だし、何故か相手の戦闘力を削ぐような空気感を醸し出しているのよね。あれは確か初等部に入って間もなくのこと。私と悠丞...
悠丞&椿シリーズ

僕の中の火花

僕は剣菱悠丞。中等部の最高学年となってまだ間もない。新しいクラスメイトの顔と名前も、少しずつだけどなんとか一致するようになってきた───気がする。先生達に至っては、間違えずによく覚えられるなって感心するよ、ほんと。うちの学園は基本エスカレー...
悠丞&椿シリーズ

僕のフィアンセ

僕の父さんと母さんは、この学園で伝説となった人達だ。誰に聞いても知っている。正直、ありがたいようなありがたくないような、微妙な感じ。特に父さんとは何かにつけ比べられるため、居心地は良くない。見た目だけそっくりの平凡な息子。成績もほどほど、運...