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読み切り作品

青い夏の日(中)

前編────夕日が水平線に沈んでゆく全員がそれぞれの過ごし方で楽しんだ一日が終わりを迎えようとしていた。「ガーリックシュリンプ、おかわり!」悠理の掛け声に別荘のおかかえ料理人が慌ててフライパンを振り出す。人数以上の料理を提供したはずだが、瞬...
読み切り作品

僕と彼女と夜の街

高校入学して間もない頃の設定で────長梅雨による湿った日々にうんざりだったが、心待ちにしていた推理小説の新刊が出たことで幾分か気持ちが浮上した。80近い年齢で書き続ける作家の執念を感じつつ、ここ数年の期待にどう応えてくれるか楽しみで仕方な...
道場小話

道場小話6

初夏の日差しが磨かれた道場の床に射し込む。師範代をはじめ、厳しい稽古に臨む子供たち。様々な型を次から次へと繰り出す汗だくの彼らを、悠理は腕組みしながら眺めていた。(清四郎もあんなだったのかな)今や一番弟子の名を堂々と名乗り、各大会で優勝し続...
狐の婿取り

狐の婿入り〜第十話〜

狐の婿取りシリーズ競うかのような鈴虫の音。池には鴨の番(つがい)が優雅に水をかいている。ススキや萩が冷たい風に揺れ、秋の庭を彩る。いつしか深まっていた季節の中、悠理はただただ暇そうに庭を眺めていた。いつも側にいるはずの魅録は牛や馬の手入れを...

雨(HAPPY DAY)

絶え間なく降り続く雨は大都会東京をすっぽり包むよう雨足を強めていく剣菱が持つ超高層ビルの最上階。その宝石を撒き散らしたような街を、今年26歳を迎える清四郎は眉を顰めつつ眺めていた。”今夜も遅くなる”そんなメールを愛する妻へ送ったのは、かれこ...
読み切り作品

Snow storm(後・2)

(前)(中)(後・1)※思ったより長くなりそうで分割しまくってます朝が来た……とはいえ天気はさほど回復していない。窓を揺らす風が少し弱まったくらいで、相変わらずの雪が降り続いていた。電気は復旧しないまま、ランタンの灯りだけが薄暗いリビングを...
読み切り作品

始まりの夜(ショート)

いつもなら、おなかがすいたと喚くだろう彼女も、さすがに今夜ばかりは借りてきた猫のようにおとなしい。互いの気持ちに気付いたのは高校三年の冬……それから幾度となくぶつかり合い、傷つけあい、現実逃避を繰り返したが、一年経った頃、素直な気持ちを伝え...
読み切り作品

健康の極意(ショート)

なぁ、清四郎。なんです?今年の桜も綺麗だったなぁ。そうですね。例年より少し早咲きでしたが。うん、散るのも早かった!………あっ!しまった!桜吹雪の中で遠山の金さんごっこすればよかったかも。いい年して……何考えてんです。と、年、年言うな!あたい...
読み切り作品

戸惑いと変化とその結果(後・R)

前編▲後編はR作品明らかな戸惑いを、悠理の瞳はもの語っていた。ヘーゼルカラーのそれは不安げに揺らめいている。水の中の木の葉のように。ほんのりと紅く色付いた瞼。きっと飲みすぎたワインの所為に違いないが、今はそこに違った意味を探してしまう。後ろ...
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Gratification

────肌寒い朝だった。雨が降りそうだ……と思ったが、傘を持たずに玄関をくぐる。気温は5度、いや8度はあるか。今冬買ったばかりのコートはまだ少し早かったかもしれない。街まで小一時間の散歩。帰りはおそらく荷物になるだろう。馴染みの本屋は明日か...