夜の帳が下りたホテルの一室。
窓の外には街の灯りが宝石のように散らばり、二人だけの空間を静かに包み込んでいた。
「たまらないでしょう?」
男の声はやらしいまでに低く、甘い響きを帯びている。
彼の大きな手が、柔らかな彼女の髪を、頬を優しく、しかし離さないように包み込む。
彼が見つめる先には、高揚に染まる彼女の美しい顔があった。
「あたま……おかしくなりそう……」

洩らす吐息は熱く、視界が揺れるほどの陶酔の中にある。
すべてを恋人に委ね、ただその深い愛の中に溶けていきたいと願う。
二人の距離は、もはや影すら落とす隙間もない。男は愛おしそうに彼女の首元へ顔を寄せ、その肌に自身の温もりを刻むように吐息を漏らした。
「……それでいい。僕がとことん……おかしくしてやりますよ……」
本気混じりの声でそう言いながら、彼女を抱きしめる腕に一層力を込める。
彼の胸元にすがりつく彼女が深く息を吸い込むと、男の、清潔でどこかスリリングな香りが鼻腔を優しくくすぐった。
「早く……おまえのものになりたい……」
彼女の甘えた囁きは、もう理性など必要ないと告げる合図だった。
これ以上待ちたくない───!
互いの激しい鼓動が重なり合う。
世界に二人しかいないかのような錯覚の中で、彼らの甘美な夜はゆっくり、確実に溶けていった。