orner

嘘も方便

嘘も方便(2)

嘘も方便(1) 「よっ。あんたが夜の街をうろつくなんて珍しいな。」 染み付いたたばこの香り。 高校生には見えない鋭い眼光と、無骨なファッション。 一見アウトローな彼だが根は真面目で、だからこそ僕たちと長く付き合えてい...
読み切り作品

Care

※ちょっと古い作品です 「いてててて…………あいつら不意打ちかよ。ったく。」 巷では名の知れた暴れん坊、剣菱悠理が珍しく足を引きずっている。 まだ幼さの残る膝小僧からは出血すら見られ、それはとても痛々しい光景だ...
読み切り作品

幸せと欲望とたった一つの愛情(R)

ゆっくり目を覚ませば、そこは波の音が聞こえる白い部屋で、 カーテン越しに淡い光が差し込み、遠くでは鳥がさえずっていた。 サイドテーブルに置かれたスマートフォンが数件のメールを知らせている。 タイトルだけ見れば、どれも急いで開く...
嘘も方便

嘘も方便(1)

ショート連載 高校三年の夏休み─── これで最後だと信じたいが、あいつがどんなハプニングを持ち込むかわからないので、確定事項ではない。 今日は久しぶりにESP研究会に顔を出した。 新メンバー二人迎え、いよいよ...
読み切り作品

青い夏の日(中)

前編 ────夕日が水平線に沈んでゆく 全員がそれぞれの過ごし方で楽しんだ一日が終わりを迎えようとしていた。 「ガーリックシュリンプ、おかわり!」 悠理の掛け声に別荘のおかかえ料理人が慌ててフライパンを振り出...
読み切り作品

僕と彼女と夜の街

高校入学して間もない頃の設定で ──── 長梅雨による湿った日々にうんざりだったが、心待ちにしていた推理小説の新刊が出たことで幾分か気持ちが浮上した。 80近い年齢で書き続ける作家の執念を感じつつ、ここ数年...
道場小話

道場小話6

初夏の日差しが磨かれた道場の床に射し込む。 師範代をはじめ、厳しい稽古に臨む子供たち。 様々な型を次から次へと繰り出す汗だくの彼らを、悠理は腕組みしながら眺めていた。 (清四郎もあんなだったのかな) ...
狐の婿取り

狐の婿入り〜第十話〜

狐の婿取りシリーズ 競うかのような鈴虫の音。 池には鴨の番(つがい)が優雅に水をかいている。 ススキや萩が冷たい風に揺れ、秋の庭を彩る。 いつしか深まっていた季節の中、悠理はただただ暇そうに庭を眺めていた。 い...

雨(HAPPY DAY)

絶え間なく降り続く雨は 大都会東京をすっぽり包むよう 雨足を強めていく 剣菱が持つ超高層ビルの最上階。 その宝石を撒き散らしたような街を、今年26歳を迎える清四郎は眉を顰めつつ眺めていた。 ...
読み切り作品

Snow storm(後・2)

(前) (中) (後・1) ※思ったより長くなりそうで分割しまくってます 朝が来た……とはいえ天気はさほど回復していない。 窓を揺らす風が少し弱まったくらいで、相変わらずの雪が降り続いて...