カーテンの隙間から差し込む柔らかい朝の光が、部屋の空気を温かく染め上げていた。
いつもと変わらぬ悠理の自室。
清四郎の腕の中で、部屋の主はゆっくりと目を覚ます。
昨日までの緊張や戸惑いが嘘であるかのように、背中に触れる大きな手の温もりと、規則正しい寝息が肌を通じて伝わってくる。
昨夜、二人が互いのすべてを受け入れ、身も心も結ばれた記憶が鮮やかに蘇り、悠理の頬はたちまち熱を帯びた。
(やっぱ、夢じゃなかったんだ……)
動けば起こしてしまうかもしれないと思いながらも、好奇心が勝り、そっと顔を上げる。すぐ近くで見上げる清四郎の顔は、眠っているせいか、普段よりも和らぎ穏やかだった。
長いまつげと高い鼻梁。
鋭角な顎のラインから伸びる男らしい首筋。
その中でどうしても見惚れてしまうのは、彼の整った唇であり……
この唇が悠理の身体中に触れ、あらゆる場所に痕跡を残したと思い出せば、顔に熱がこもってしまう。
(やらしすぎる……やっぱこいつ、スケベだったんだなぁ……)
そうは思いながらも初めての夜を望んだのは悠理のほうだった。
交際三ヶ月。
キス止まりの関係が焦れったくなり、自室に誘い込み押し倒した。
そんな恋人をマジマジと見つめながら、清四郎はニヤリと笑ったのだ。
「いいんですね?」
「な、なにがだよ?」
「この先深い関係になれば……おまえはもう逃げられませんよ?………人生の最期まで。」
「んなこた………わぁってる!!!」
返事を聞くや否や、性急に押し倒された悠理だったが、待ち望んでいたのは自分であり、むしろこの男の本音に触れたようで、鼓動がどくどくと早鐘を打ち………甘く刺激的な夜が数時間も続いたことは予想外であったが、満足したのは確かだ。
(あたいこそ……おまえのこと逃さないからな。)
幾重にも重なる安らかな時間の中で、目を閉じたままの清四郎がふっと微かに微笑んだかのように見え、悠理の胸は切なく締め付けられた。
こんなにも好きになるなんて……
体を重ねただけで想いに拍車がかかり、束縛したくなる。これから先の人生が清四郎とともにあることを心底望み、そのためならどんなことも耐える自信があった。
「ん…………もう、起きたのか?」
不意に寝起きの少し掠れた声が降ってきた。
いつの間にか黒い瞳が、悠理を優しく見下ろしている。慌てて視線を逸らそうとした悠理の顎を、清四郎の長く美しい指先が捉えた。
「なぜそっぽを向くんです?」
「だって………なんか、恥ずかしいんだもん……」
消え入るように呟く悠理の頭を、清四郎は愛おしそうに撫でた。
そしてゆっくり起き上がると、悠理の体を抱きしめ、熱いため息を零す。

「………現実なんですね。もう……おまえは僕だけのものだ……逃がしませんよ。」
同じ想いを抱いていたことに、悠理はくすぐったそうに笑った。人生で一番幸せな瞬間とさえ感じる。
「あたいだって……」
互いの視線が重なり、自然と近くなる唇。
そこにあるのは確かな絆だけ。
二人で歩んでいく静かな決意を胸に、悠理は清四郎のキスをそっと受け止めた。