青い月明かりが、深い夜の庭園を照らしていた。
静寂に包まれた屋敷の縁側に座り、池を泳ぐ鯉を見つめる彼の隣には、おろしたての浴衣に身を包んだ悠理がいた。
昼間は活発でおてんばな彼女が、今はその鳴りを潜めている。
彼女の美しい横顔を、月光が優しく縁取り、
清四郎はその美しさに胸の奥が熱くなるのを感じた。
「綺麗だな……」
悠理の視線が、池から空に浮かぶ満月へと移る。素直な称賛を聞き、清四郎は、彼女のその無垢な瞳を見つめながら、静かに頷いた。
「そうですね……。おまえには勝らないが。」
その言葉を聞き、悠理は驚いたように、清四郎を振り返った。
彼が、こんなにも率直に自分のことを褒めてくれるなんて、思っても見なかった。
いつもはクソガキ扱いする彼の優しい本音。
清四郎は、彼女の肩をそっと引き寄せ、その柔らかい髪に顔を埋めた。
彼女の首筋からは、先ほど二人で使った石鹸の高貴な香りが漂う。
「清四郎………」
悠理の声はかすかに震えていた。
彼女もまた彼と同じように、この夜の、この瞬間の、二人の親密な空気に、心が動かされていた。
清四郎は彼女の顎をそっと持ち上げ、その唇に、熱い口付けを落とす。
何度も角度を変え、注ぎ込まれる愛。
彼女の唇は月の光を反射し、濡れたように光っていた。
その口付けは情熱的でありながら、どこか切なさを秘めていた。
彼が、彼女をどれほど愛しているか、どれほど大切に思っているか、その全てがこの口付けに込められているようだった。
悠理も、彼のその情熱に応えるように、細い腕を彼の首に回した。
「なんか……あたいたちらしくないよな。」
「そうですか?僕はただ……おまえが欲しくてたまらない。昔も……今も……」
そう切なげに洩らした清四郎の目に、吸い寄せられる悠理は、彼の思惑を察し、静かに瞼を閉じた。
そうして行われる月下の契り。

いつまでも、いつまでも、
彼らの想いを照らしながら、夜は静かに更けていった。
