清四郎の腕の中で、悠理の呼吸がわずかに乱れた。
彼が先ほど落とした口付けが、額から眉間、そして柔らかく頬をなぞるように滑り落ちていったからだ。
「……清四郎」
彼の名前を呼ぶ声は、自分でも驚くほど甘く、微かに震えていた。
清四郎の瞳が、獲物を狙う獣のように深く、熱を帯びて悠理を射抜く。
彼はわざとゆっくりと、彼女の耳元へ顔を寄せた。
「悠理……もう、逃げ場はないですよ?」
その低い声と、耳に触れる吐息の熱さに、悠理の体から力が抜けていく。
清四郎の大きな手が、彼女の髪を優しくかき上げ、露わになったうなじに触れた。
熱い指先が肌をなぞるたびに、背筋を電流のような痺れが駆け抜ける。
悠理は清四郎のシャツをぎゅっと掴み、彼を強く見上げた。
潤んだ瞳でじっと見つめられると、清四郎の理性の糸が、目に見えるほどの速さで引き絞られていくのがわかった。
「………いいよ。逃げるつもりなんてないから。」
「その言葉、二度とは取り消せないと分かって言ってるんですか?」
清四郎は苦笑しながら、彼女の唇を指先でなぞった。その視線はどこまでも情熱的で、それでいて、彼女を壊さないようにと願うような慈愛に満ちていた。
優しさと獰猛さ。
自分の中の衝動を解き放たないよう、清四郎は必死だった。
「あたいは……もう……おまえのもんだろ?」
その言葉を待っていたかのように、清四郎は彼女の腰を引き寄せ、唇を重ねた。
それは先ほどまでの慈しむようなものとは違う、もっと深く、相手の全てを確かめ合うような、抗えないほどの熱を孕んだ口付けだった。

部屋の明かりは落とされ、月光だけが二人の輪郭を柔らかく照らしている。互いの鼓動が一つに溶け合い、もはやどちらの心音かわからなくなるほどの距離。
清四郎はゆっくりと悠理をベッドへと倒し込み、彼女のふわりとした髪を愛おしそうに撫でた。
「僕のものだ……悠理。」
耳元で囁かれたその言葉は、どんな甘い蜜よりも深く、悠理の理性を麻痺させていく。
期待と不安が交差する中、ゆっくりと目を閉じれば、月の冷たい光がようやく彼女の肌を撫で始めた。
二人の境界線が、今、確実に消えようとしている。
