彼女の背中に僕はいる

 

台湾料理が食べたい

 

金曜の午後、悠理の発案で、いつもの仲間は剣菱マークのプライベートジェットに乗り込んだ。

おじさん、おばさん、珍しく五代まで。

巨万の富を持つ名家【林(リン)家】の当主と会食予定があるからと聞いている。

 

僕達はただ悠理の果てしない胃袋に付き合わされるだけ。

とはいえ、あいつが向かう場所にトラブルは付き物である。

案の定、わけのわからぬチンピラに絡まれ、到着早々大立ち回りを演じてしまった。

切っ掛けが何であろうと、売られた喧嘩はすべて買い取るシステムである。

 

単純なオツムで、「かかってきやがれ!」と叫んだが最後、周りを巻き込むことなんて微塵も考えてやしない。

必然的に、僕も新しい靴を汚す羽目となったわけだ。

それにしても、悠理の足技は日々磨きがかかっている。和尚のもとで鍛えているだけあるな、と感心せざるを得ない。

彼女も23歳。

そろそろ落ち着いてほしいと願う母親の気持ちは全く通じていないだろう。

ま、僕が側に居るからして、その点は安心して欲しいのだが。

悠理のお陰で退屈とは程遠い人生を歩ませてもらっている。

はた迷惑なことも多々あれど、それでもこの刺激ある生活を手離したくはない。

自分でもマゾか?と思うほど、剣菱悠理との関わりに固執しているのだ。

「おいっ!!清四郎!ぼーっとしてんじゃねぇ!」

パンツが見えようがおかまいなし。

一級品である彼女の飛び蹴りを特等席で見学できるのはある意味、僕の特権だ。

「やれやれ……一人で片付けると息巻いていたくせに。」

ぼやきながらもワクワクする。

普段は抑え込んでいる闘争本能がじわりと芽吹く瞬間。

彼女の背中を守る男は、ただ一人。

菊正宗清四郎だけだ。

 

これまでも

これからも

この楽しい冒険が終着駅を迎えるまで………