KISSを仕掛けて

 

嘘みたいだけど

ほんと冗談じゃないか?って思うけど

あたいの初めての男が清四郎だなんて……

憎たらしいくらい

いつも苛めていた男が

初めての恋人だなんて……

 

「好きだった」

「おまえしか、欲しくない」

そんな告白に、

びっくりよりも嬉しさが勝ったなんて、

自分でも信じられない。

仲間は全員知ってたらしいけど……

あたいは何年も知らなかった。

誰も教えてくれなかった。

気付きもしなかった。

だから、大学生になって初めての夏休み。

清四郎の告白を聞いて

「いったい……なんの罰ゲームだ?」って真顔で尋ねたさ。

そしたら、やれやれといった表情(かお)で、体ごと引き寄せられて……

「信じられないなら……信じさせてやる。」

自信があったのか、自棄っぱちなのか。

初めてのキスは嵐のように奪われた。

力では負けるさ。

完全に封じられた身体は、ヤツの腕の中でいやというほど溶けていく。

簡単に腰が抜けたあたいに、

「わかりましたか?」

勉強合宿と同じノリで尋ねられて、

「…………ハイ」

と答えてしまった。

───やっぱ馬鹿だな。

清四郎はそんな調子で、あたいの男になっちゃったわけだ。

それから何かと理由をつけては、二人きりになろうとする。

大学の勉強は難しい。

案の定単位を落としそうだから、家庭教師役は当然清四郎だった。母ちゃんに命名されてんだからしょーがない。

夏が終わり、秋になって……

清四郎ん家で、半ば強引に抱かれた。

「基本、我慢強いほうなんですがね………」

とニヤつきながら、あっという間に食べられた。

何年も片思いだったと告白されて、そんな我慢を強いられた報いを受けさせてやる…とストッパーを外した男。

いや、あたいの知ったこっちゃないし……

一度ヤッちゃうと、ダムが決壊したみたいに求められて、ヤツは飢えた野獣そのものだった。

普段のあいつじゃない。

そんな風に感じながらも、求められることに不思議と満足感がこみ上げる。

「悠理……ゆうり……」

「好きだ……」

切ない呼び声。

全身から伝わる愛情と切なさ。

んなもん、逃げれるわきゃないよな。

何年も片思いなんて……あたいにゃ絶対無理だ。

「なんで……云わなかったんだ?」

そう尋ねたら、少し考えた挙句、

「おまえに距離を置かれると思いましてね。それに……せっかく馴染んできた関係を変えるのが怖かった。」

まさかの意外な答えが返ってきた。

らしからぬ臆病さ。

「もし……あたいが拒否したらどーしたんだ?」

意地悪な質問を投げかけると、

またしばらく考えた挙句……

「恋愛はもう二度と無理だったでしょうな。おまえしか見てこなかったから……」

そんな可愛いことを云う。

意外なほど素直な清四郎が愛しくなっちゃって、ああ自分ももう……こいつがすっかり好きなんだなぁって感じた。

「悠理……何を考えてるんです?」

「ん?……あぁ。」

そうだ、ここは清四郎ん家だった。

毎週末、ヤツのベッドで無茶苦茶にされる。

「気が乗らないのか?」

よく言うよ。

乗ろうと乗らまいと、おまえはあたいを食べ尽くすだろう?

「んなことないよ……ただ………」

「ただ?」

「おまえのことが好きだなって思ってただけ。」

リップサービスじゃない告白に、

一瞬固まった男は、

目に本気を浮かべながら

あたいの気持ちを確かめようと

あたいの全てを飲み込もうと

───────絶望すら感じる、キスをした。