連載物(短編)

アラフォー可憐のお悩み相談室~大人になった六人~

第一話

大学部を卒業し、早くも十五年が経つ。 仲良し六人組は40を目前に、それぞれ忙しい毎日を送っていた。 卒業後直ぐ、叔母の勧めで見合いをした野梨子は、しかし結婚二年目で破局。 その後、何の運命か、私立探偵になった魅録と再婚し、現在は二...
狂おしき慕情

野梨子編(魅録視点)

その日、野梨子は憂い顔で窓の外を眺めていた。 今にも雨が落ちてきそうな空模様。 声をかけるべきかどうか迷ったが、部屋に漂う湿気に両肩が重く感じた為、俺は思いきって明るい声を出してみた。 「じめじめと鬱陶しいよな!これじゃバイクにも...
狂おしき慕情

野梨子編

パキッ 弾けるような音と共に、瑞々しい蓮の茎が折れる。 「野梨子さん、一体どうなさったの?心ここにあらず、ね。」 「━━━━ごめんなさい。」 華道は五歳から嗜んでいる。 母に連れられ、池之坊の高い敷居を跨いだ。 今は...
狂おしき慕情

その後の二人

信州での事件は、十日も経たぬ内に記憶から薄れていった。 あの後、別荘へと戻り、事件の概要を語り聞かせた四人。 可憐と美童は「行かなくて良かった!」と口を揃え喜んだ。 悠理は雨に濡れた所為ですっかり風邪を引き込み、せっかくの...
狂おしき慕情

伊織編

「伊織は良い男だねぇ。」 そんな評価を下されたのは、齢15の頃。 言った相手は、家に出入りしていた花屋の後家で、一回り以上も離れていた。 男好きする白い身体を使い、艶かしく誘ってくる。 年頃といえば年頃。 断る理由など思いつか...
狂おしき慕情

本編

しとしとしと 空から零れる涙は悠理を濡らす。 細い肩に掛けられた薄い浴衣がじっとりとその重さを増してゆき、痛いほどの冷たさに肌が震えた。 遠くより聴こえてくるは女の声。 男に取りすがる絶望の悲鳴。 ━━━━貴方は………...
the snowy night(始まりはここから)

the snowy night

注意:清四郎と別の女との絡みが中心となる話です。 悠理と交際する前の設定なのですが、苦手な方は読まないでください。 雪がしんしんと降り積もる。 そう。 あの年のニューヨークも、こんな風に静かな速度で雪景色へと変わって...
抜け出そうとする女(完結)

番外編2

「津乃峰さん。」 「はい?」 振り返るとそこには、今年の春マネージャーとして迎えられたばかり───“上野 将吾”(うえの しょうご)の姿があった。 30歳。 まさしくこれからが男盛りだろう。 自信に満ちた表情と野心を秘...
抜け出そうとする女(完結)

番外編1

「わ………雪…………」 「え!ほんとに?ヤバい、電車止まっちゃうかなぁ?」 「うーん………どちらにせよ、早めに帰った方が良さそうですね。」 あの日から二年と少し。 季節はクリスマスを迎えていた。 高校を卒業した私は...
抜け出そうとする女(完結)

本編

私の母は長い間、清掃員をしていた。 かれこれ十数年。 まだ若いにも関わらず、彼女はそんな地味な仕事を選んだ。 人目に付かないようなひっそりとした仕事を。 二十歳の時、行きずりの男と一夜の恋に落ち、結果私を身ごもった為、人の親にな...