憂鬱なマーメイドシリーズ続:憂鬱なマーメイド 「やたっ!Bカップ!」 色とりどりの下着が並ぶ売り場の片隅で、 年配のベテラン店員は慣れた手つきで悠理の胸を計測し、にこやかに微笑んだ。 「半年前に比べて3センチアップされましたね。もうBカップの商品を選んで頂けますよ。」... 2019.11.17憂鬱なマーメイドシリーズ
憂鬱なマーメイドシリーズ憂鬱なマーメイド 突き抜ける青空。 爽やかな潮風。 何よりも大好きな季節。 ━━━━なのにあたいの心は晴れない。 いつもなら我先に飛び込む海を眺めながら、悠理はビーチパラソルの下で砂浜に‘の’の字を書いていた。 アイスブルーのパーカーを... 2019.11.17憂鬱なマーメイドシリーズ
この恋に気付いて野梨子編 日が短くなるのも秋が深まっている証拠。 野梨子は温かなミルクティを啜ると、窓の外をそっと見遣った。 紅葉もすっかり色を変え、遠くにある銀杏は眩しいほど輝いている。 美しい景色。 そしてその景色の中に、生まれたてのカップルが肩を並べて... 2019.11.17この恋に気付いて
この恋に気付いて悠理編 茜射す空の下。 秋は日一日と深まり、その朱色をより一層濃くしている。 この時期になると夕陽が沈むのも早く、東の空にはもう、うっすらと星が輝き始めていた。 ひんやりとした風が頬を撫でる校舎裏は、ポプラの葉が足元をカサカサと過ぎていく。 ... 2019.11.17この恋に気付いて
恋しがる女(番外編)五年後の恋心 「嬢ちゃま、お客人がお見えですぞ。」 「あたいに?」 その日、剣菱邸に現れた人物は、夏の日射しを跳ね返すような、真っ白なワンピースを身に着けていた。 清楚な白一色。 肩にも届かない、真っ黒なショートボブ。 半袖から延び... 2019.11.17恋しがる女(番外編)
恋しがる女(番外編)クラブMのママ視点 アキが去って一ヶ月。 その夜、店を訪れたのは剣菱豊作と見慣れぬ一人の客だった。 私は新しく入ったカオルを連れ、彼らの席に着く。 時間帯のせいか、客の入りはまだ浅い。 「やぁ、ママ。今日は羽振りの良い客を連れてきたよ。」 ... 2019.11.17恋しがる女(番外編)
恋しがる女(番外編)ハルカ視点 「ん?あれって、もしかしてアキさん?」 人通りこそそれほど多くもないが、男女が密着している光景はどうしても目立つ。 男は黒髪の長身。 よくよく見れば、この間の客ではないか。 「へぇ、なるほどねえ。」 1ブロック先でもは... 2019.11.17恋しがる女(番外編)
恋しがる女(本編/完結)アキ視点:決着 今のママには話していないが、私が騙された男は一人じゃない。 最初の男は、私がネオンの世界へと飛び込む切っ掛けを作った、根っからのジゴロ。 彼は私への愛を囁きながら他の女を選び、結局隠していた金を探し当て、消えた。 それはたかだか数... 2019.11.17恋しがる女(本編/完結)
恋しがる女(本編/完結)悠理&清四郎視点 兄ちゃんお気に入りの秘書、紅ちゃん【本名:紅 由美子(くれない ゆみこ)】から電話があったのは、夜七時を過ぎたあたりの事。 今、彼女は主に清四郎の仕事を手伝っているけど、あたいの事も頻繁に気遣ってくれる。 あいつの帰宅が遅くなる日な... 2019.11.17恋しがる女(本編/完結)
恋しがる女(本編/完結)清四郎視点1 ―――失敗した。 待ち合わせたカフェで彼女の顔を見た時、僕は激しい後悔に見舞われた。 二日前。 見覚えのない番号に出たのは、それが仕事用の携帯電話だったから。 耳に飛び込んできた軽やかな声と上品な口振りを聞いて、すぐにあ... 2019.11.17恋しがる女(本編/完結)