orner

読み切り作品

苦い春

それは彼らが仲良くなる少し前のこと── 中学3年生……本来、受験勉強に邁進している時期なのだが、聖プレジデント学園に通う生徒にそんな焦りは見当たらない。ほとんど学生が幼稚舎からのエスカレーターに乗り込み、おそらくは大学部までその箱から...
恋はままならず

恋はままならず〜焦り〜

発芽→惑い 眼の前に広がる不快な光景。 初めはなんの冗談だ、と魅録を窺っていたが、どうやら嘘や新手のジョークではないらしい。 “達也”と呼ばれる男はよほどのお気に入りなのか、魅録は終始、満面の笑みで彼らを茶化していた。 この...
恋はままならず

恋はままならず〜惑い〜

(発芽から続く) カチカチカチ…… 枕元のクラシカルな時計がやたら五月蝿く聞こえるのも、思考が、とある一方向を向き、神経が研ぎ澄まされているから。 いつもならグルメや旅行、夜遊びのことでシッチャカメッチャカな悠理だが、...
読み切り作品

青い夏の日(後編)

前編 → 中編 悠理は寝室のベランダに立ち、夜空を見上げている。 星の美しさはここからでも充分確認できるが、展望台の方がより鮮明に見えることだろう。 今頃、二人はどんな会話をしているのか。気にならないと言えばウソに...
遠い島の小さな初恋物語

遠い島の小さな初恋物語(3)

(1) (2) “安静に”と言われたとて、大人しく聞き入れるような女ではない。 せっかくのバカンス。 大好きな海は直ぐ目の前に広がっているのだ。 翌朝、芝田お手製のモーニングをたっぷり腹におさめた...
Lost memory

Lost Memory〜その後の二人〜

(R作品です) 雨………か。 窓の外はグレー 一色。 ヨーロッパとは違い、アメリカの大都会は雨が降ると、どことなく寂しい雰囲気がするな……と悠理は思った。 あの事件から三年もの月日が経つ。’たった三年’と言えないこと...
読み切り作品

横恋慕(1)

「悠理ちゃん!やっぱり来たんだ。」 「あったりまえだろ!DJシオンがわざわざ帰国してんだから!」 馴染みのライブハウスにはいつもより大勢の客が詰め掛けていた。 それもその...
恋はままならず

恋はままならず〜発芽〜

なんだかなぁ……今日は気持ちが乗らないっつーか、たぶん楽しめない気がするんだよなぁ。 スマートフォンに羅列された文字は、普段なら絶対心浮き立つ誘い文句なのだが、何故か今日に限って気が進まない。 魅録の仲間がオープンさせた「焼...
読み切り作品

BAD LOSER

運動会は悠理にとって最大のイベントである。 勉学では劣るものの、運動だけは誰にも負けない自負があるため、その活躍を見せつける最高の場として毎年楽しみにしているのだ。 今回は中学最後の運動会ということもあり、さらに気合が入っていた...
読み切り作品

僕と彼女と夜の街(2)

僕と彼女と夜の街(1) 紫の紫陽花が朝露に光る。 爽やかな青紅葉もまた、小さな葉を陽に透かせば、初夏の香りが風と共に漂ってくる、そんな錯覚をおぼえた。 そろそろ暑くなるだろう。 空の青さがいっそう色を濃く...