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狐の婿取り

狐の婿取り~第五話~

帝に書簡を届けた後、朝廷への挨拶を済ませた清四郎は、長旅に疲れた身体を白木の床に横たえ月を眺めていた。 すすきの穂が細い風に揺れ、もの悲しさすら感じられる閑庭。 青く、まあるい月が空を照らしている。 そんな冴え冴えとした───晩秋...
狐の婿取り

狐の婿取り~第四話~

それから三日が経ち─── 二人はとうとう京の都へ足を踏み入れた。 旅の終わりに近付けば近付くほど歩みは遅くなり、宿に寄れば、食べる間を惜しんで互いを求め合う。 ────どうせ今だけの関係。雲の上の御仁に想いを寄せても無駄なこと...
狐の婿取り

狐の婿取り~第三話~

「さぁ!寄ってらっしゃい!うちの焼き栗は最高だよ!」 その日。 約半日歩いて到着した宿場町では、辺りから甘い香りが漂っていた。 まだ日も高く、賑わいを見せる街道。 並ぶ店の軒先では、芋や栗と共に、キジを焼く芳ばしい香りが食欲をそ...
狐の婿取り

狐の婿入り~第二話~

闇を舞う火花。 焚き火がゆっくり、消えかけようとしていた。 亥の刻を過ぎたあたりだろうか。 雨は小降りに落ち着いているが、夜の冷え込みはなかなかに厳しい。 唯一の暖に頼りながら、互いの身の上話に興じた二人は、徐々に薄暗くなる岩壁...
狐の婿取り

狐の婿入り~第一話~

とある山道を、帝の遣いを済ませた清四郎は足早に歩いていた。 ここは近道だが獣が多く住む。 日が暮れる前にどうしても通り過ぎたかった。 「雨が降りそうですな。もう少し急がなくては・・・」 抱えた書簡をもう一重、布でくるみ、もし...
scarlet of darkness

scarlet of darkness~本編~

夜な夜な、黒いマントを翻し現れる一人の紳士。 この国の王である’マンサーク’の娘‘ユーリ’は、茜色の空を眺めながら、ひたすら彼を待ちわびていた。 名も知らぬ男と出会ったのは、もう二週間も前のこと。 今日と同じような夕焼けの下、一陣...
白雪姫

白雪姫~本編~

それはとある国の無垢な少女のお話。 羽振りの良い父が連れてきた継母は、姿は美しいが根性はねじ曲がり、自分の美貌をひけらかすような慎みの無い性格の持ち主だった。 そんな女の禍々しい美しさに心奪われていた父が突如病に倒れ他界。 幼き頃...
priest & witch

priest & witch ~前編~

その国はとても豊かで、数多くの動物たちが生活する緑の森と美しい川、そして肥沃な大地に恵まれていた。 初老を迎えたばかりの国王は妻と娘、そして臣民への愛に満ちあふれ、とても慕われている。 これはそんな王国でのお話。 「じゃー...
Phantom~sequel~

Phantom~sequel~

sequel01 闇色の海の中、もがく手の指先までは見えない。 身体は鉛を付けられたように重く、不快とすら感じる生温い水を必死で掻き分ける。 息苦しさと足を捕られる恐怖。 僕は僅かな光を探り、水面を目指す。 絶望的な状...
Phantom(番外編)

番外編(輝良の過去)

※不愉快な内容が含まれています。 苦手な方はスルーを推奨します。 俺の母は見た目は女優と言っても過言ではないほど美人で、でも頭の中は悲しいほど空っぽな女だった。 未婚のまま二人も孕んだ末、不倫していた男と別れ、...