本編

物音一つしない、静かな外。
雪に覆われる大地は、全ての音を吸収してしまうのだろうか。
今はただ、お互いの荒い息だけが部屋の中をさざ波のように行き交う。

「ん……は……ぁ………せぇしろ…………」

何度『熱い』と訴えただろう。
清四郎は『僕も同じだ』と答え、その都度、激しい口付けで悠理を翻弄した。

貪るような唇。
あまりの息苦しさに酸素を求めようと口を大きめに開けば、より深い繋がりを求める清四郎は舌を割り込ませ、呼吸を奪ってゆく。
同じ熱を持つ舌が縦横無尽に動き回り、悠理の舌の根までをも舐めしゃぶる。

まともな思考など働くわけがない。
もう何十分もこんなことを続けている。
彼が与える唾液を飲み干しながら────

口内を味わい尽くした舌が引き抜かれ、清四郎の眼光が悠理を責めた。
すっかり腰は抜け、逃げるという選択肢を失っている。

「おまえとなら───何時間でもキス出来そうだ。」

清四郎の指が優しく顎を捉え、濡れた悠理の唇に愛しげに触れた。

「酸欠で…………死ぬわい。」

「そんな死に方も悪くないですな。」

冗談とも本気とも解らないが、確かにそんな幸せな死に方は悪くない。
お互いの顔をこんなにも間近で見つめ合いながら、あの世に逝けるなんて幸せだ───

「もちろん………まだ死にませんよ。おまえを味わい尽くすまでは絶対に死なない。」

大地の裂け目があるこの地で、たとえ今、新たな裂け目が生まれたとしても、悠理を離すことは出来ないだろう。
高ぶった己を存分に解放するまで、彼女をベッドから一歩も出さないつもりだ。

愛とは、時に我が侭な衝動で男を支配する。
清四郎ほどの理性を持つ男でも、それには抗えない。
悠理に飢え、悠理を欲し、悠理を啼かせたいと思う。
自分に縛り付ける為なら、どんな手段を用いても後悔などしないだろう。
度を超えた独占欲は冷静さを奪い、常識からも遠ざけるのだと、初めて解った。

彼女に盛った一つの薬───
あれは昔、試しに作った催淫剤を改良し、女性の気分を高める為だけに特化したものだ。
性欲とは無縁の悠理がどんな反応をするか………もしかしたら何の反応も示さないかもしれないが、それでもそんな手段に出てしまった自分が恐ろしい。
彼女への固執がどんどん膨らみそうで………怖い。

「悠理………好きだ………」

そんな言葉で何を慰めればいいのだろう。
免罪符にもならぬ、そんな言葉で───

「清四郎……………」

すっかり汗ばんだ体は男の支配下に置かれている。
乱暴に貫きたいのではない。
快楽を覚え込ませ、自分から離れられないようにしたいのだ。

清四郎は火照った頬から首筋をせめ始めた。
ビクンビクン
素直に震える肩に愛おしさを感じながら。

ブラジャーを外し、柔らかく小さな乳房を解放すると、それはもう芸術的なまでに可憐な膨らみだった、

「やっ………!小さいから見るな!」

「………今更そんなこと心配してたんですか?」

冷静さを取り繕いながら、清四郎は喉を鳴らす。
どうすればこれほどまで美しい形に保てるのか?
この愛らしく頼りなげな存在に、初めて触れる男が自分であって良いのか?との疑問が走る。

もちろん他の誰にも譲れない。
悠理の髪の毛一つ、触れられたくない。

これは自分でもぞっとするほどの独占欲で、恋愛よりも悍ましい何かかもしれなかった。

「あたいだって…………せめてBカップくらいあったら………」

「AだろうがBだろうが…………これほど僕を興奮させる胸は何処にもありませんよ。」

言い終わると同時にしゃぶりついたのは、悠理の不安を取り除くためではなく、本能に逆らえなかったから。
がむしゃらに、獰猛に、柔らかな肉を貪り食う。

「ひゃあああ!」

口の中で転がされる蕾が清四郎の歯でカリリと噛まれると、悠理は反射的に仰け反った。

刺激が強すぎる。
経験したことのない、甘い刺激が。

「僕のものだ……………」

咥えながらうっとりと囁く清四郎の目は、いつもの男とは思えないほど滾っていた。

目まぐるしく与えられる熱。
頭の芯が茹だったように痺れる。

先ほどまで交わしていた口付けを乳房にも施され、悠理は激しい快楽に身を焦がし始めた。
恥ずかしさなんかはどこぞへ飛び立ってしまっている。
薬の所為ではなく、清四郎の愛撫によって。

口の中で蕩ける体の一部が、もっともっとと強請っていて、自分でも驚くほど貪欲に求めているのが解った。

「あぁ………気持ちいい………」

それは清四郎も期待していなかった本音の呟き。
感度は良くとも羞恥が勝ると思っていたし、何の覚悟もない悠理がここまで心を解放してくれるなんて、まさしく想定外だった。

「………いいんですか?もっと………もっとやらしい事をしますよ?」

返事など、どう答えていいのかわからない。
ただ清四郎が与える行為は気持ちよくて、胸がムズムズして、感じたことのない陶酔感に浸れるから───
悠理に拒否する理由など見あたらなかった。

「…………ん。いいよ。」

溜息を吐くように告げれば、清四郎の中で確実にスイッチが入る音がした。

もう手加減などしない。
する余裕も失われた。
後は欲望赴くまま、悠理を喰らい尽くせばいいだけ。

「取り返しは………受け付けませんよ?」

貝のように重なる二人の横で、カーテン越しの太陽がゆっくりと………落ちてゆく。

薄暗がりの中、悠理の哀しげな声が密やかに響く。
───と同時にやらしく濡れた音も。

「せ……しろ…………あぁ………」

男の濡れた舌がありとあらゆる場所から快感を発掘する。
脇腹を通り、細い腰の中心を責め、いよいよ秘められた場所に到達した時、悠理は自分でも信じられないような甲高い喘ぎ声を上げた。

「ひゃぁぁあああ!」

初めての嬌声。
初めての感覚。

広げられた場所が清四郎の目に晒されていると判り、動揺と羞恥と混乱の入り交じった頭を左右に振りながら、それでも彼の舌に感じさせられている事実は揺らぎようもない。

「………んなの……やだぁ…………」

「味わいたいんですよ。僕にだけ許された権利なんですから。」

清四郎は嬉しいのだ。
思っていたよりも素直な体に、
快感に溺れ行く愛しい恋人に、
次々と悦びが生まれる。

「綺麗だ。………瑞々しくて、ちっとも汚れていない。」

男はわざとらしいほどゆっくり舐めしゃぶり、これまたあざといほど丁寧に、皮に包まれたままのクリトリスを舌先でなぞった。

「ん……ふぅぅ!!!」

ビクンビクン
打ち上がった魚のように跳ねる腰をしっかり押さえ込み、優しい愛撫を続ける。

ああ、早く剥き出しにしてりたい。
思う存分吸い付き、気が狂うような快感を与えてやりたい。
僕の性技に溺れさせ、僕しか見えない女にしてやりたい。

薬の効果もあるのか、悠理は乱れに乱れた。
こんなにも激しい痴態を晒すのか、と清四郎自身、目を疑ったほどに。

細く美しい足や華奢な腰をくねらせ、必死に手を伸ばしてくる可哀想な恋人。
清四郎はその手をしっかり掴みながら、どろどろに溶けた粘膜を啜り続けた。

それは甘くて病みつきになる花の蜜。
無我夢中で飲み干す姿はいつもの彼からはほど遠い。
襞の隙間に開いた小さな穴へ、尖った舌を差し込み、中を思う存分味わう。
文字通り『夢中』だった。

痛みなど味合わせたくない。
無理にコトを為すつもりもない。
悠理が快楽に溺れ、身も心も清四郎に許してくれたなら、それだけでよいのだ。

「く………うぅ……ん…………」

堪えきれない嗚咽が耳を掠める。
びっしょりかいた汗がシーツを濡らしていく。
清四郎もまた、自身の高ぶりが濡れ始めていることに気付き、息を大きく吐き出した。

目の前にある皮に包まれたままの肉の粒が、震えながらも芯を持ち始め、何かを待ち望んでいる。
息を吹きかけ、舌先でそっと優しく包皮を剥けば、まるでピンク色をした真珠のような姿が現れ、その艶めきに彼の欲望は急上昇させられた。

「ひッ!!」

空気にさらされた事で、悠理は小さな悲鳴をあげる。
が、間髪入れず、清四郎の唇がそれをなめらかに保護した。
充血した蕾が口の中で転がされ、悠理の視界は一瞬にしてまっ白になる。
立て続けに訪れる強烈な快感が、全ての羞恥を捨てろと訴えかけてくるのだ。

「アッ………ひゃァァァァ!!」

舌先の動きが変わる度、悠理は全身をばたつかせる。
ひっきりなしに吹き出す汗と響きわたる声。
こんなにも激しい苦痛と快感を同時に味わった経験は一度としてない。

悠理は清四郎の手を折れんばかりに強く握りしめた。
身体は恐ろしいまでに熱を孕み、吐き出そうと必死に悶える。
それでも清四郎の動きは止まらない。
敏感な尖りを重点的に攻め抜かれ、やがて悠理の意識は微睡んでいった。



「ん…………はぁ……っ……!!」

だが、遠退いていた意識はすぐに引き寄せられる。
長い指が悠理の中へと侵入し、美しく整った歯が弱々しい豆粒を甘噛みしたからだ。

「や、やっ、も………これ以上やだよぉ……!」

刺激的な快感から逃れられないと解っていても、悠理は逃げ道を求め、必死に手を伸ばした。

「しっかりと解さないと…………痛みに耐えられませんよ?」

なら止めて欲しい────とは言えず、むしろ痛みの方が楽ではなかろうか、との結論も見えてくる。

「も、どーでもいいから………早く………」

何とかして?

清四郎の欲望に揺れた瞳を覗き込めば、彼はちょっと複雑な微笑みで身を起こした。

「いいのか?」

「……………うん。」

鍛えられた体。
黒っぽい下着の中でそれは見事にそそり立っていて、悠理をこの上なく求め、濡れている。
こんなにも激しい高ぶりは清四郎自身、初めてのこと。
コントロールを失った愚直な肉竿が窮屈そうに突破口を探し求めていた。

「ゴム、着けます。」

「ゴム?」

チラッと見せられたのは保健体育で習ったことのある避妊具。
悠理は清四郎がそんな物を持っていたことに軽い衝撃を感じた。

「…………男って皆、持ってんの?それ………」

「さぁ?美童あたりはダース単位で持っていそうですが。」

「あぁ。“セーフティーセックス”………だから?」

「よくご存じで。」

更に窮屈なゴム製のそれに包まれ、清四郎は思わず溜息を吐いた。
どうせなら半ダースくらいは欲しいところ。
こんなにもかわいい悠理を前に、一回で終われる気がしない。

火照った肌が、汗に張り付いた前髪が、いつもの清四郎ではないと伝えてくる。
悠理は目の前にある胸板にそっと触れ、彼の鼓動を掌に感じた。

ドクドクドク………

かなり激しい。
恋人である男が見せる、素の高ぶり。
悠理をただ欲しがる、清四郎の素直な心。

「痛いときは………僕を噛め。」

そう言って清四郎は悠理の体を全身で抱きしめた。
濡れた下腹部を擦り合わせながら、またもや口付けを交わし、互いの舌を絡め合う。

「…………愛してる、ゆうり。」

彼にしては上出来の告白。
そして悠理は覚悟を決め、静かに目を閉じたのだ。

ズズッ………

ゆっくりと、本当にゆっくりと進入してくる雄芯が痛みを感じさせないまま、悠理の中を暴いてゆく。
ドロドロに濡れていても、ゴム越しに感じる肉の凶器は彼女に圧迫感を与え、どうにも逃げられないという思いを抱かせた。

「っ………はぁ……………せ、しろ……」

「痛むか?…………すまない。もう少しだ。」

にじり寄るような動きで更に奥へと侵入され、悠理は息を詰めた。
異様な形のそれが、先端の開いた傘の部分が、柔軟な肉襞をこじ開けながら無情にも進んでゆく。

「ん…………っ!はぁ………っ!」

ギュッと目を瞑ったその顔は痛々しいほど健気で、清四郎の胸は愛しさでいっぱいになった。

どんな反応を示すのか。
悠理に隠された女を暴くため薬を飲ませたものの、罪悪感がこみ上げぬはずもなく────だからこそ精一杯の優しさで初めての時を迎えさせてやりたかった。
悠理の痴態を存分に楽しんだ後でそのような言い訳は通用しないのかもしれないが、それでも最大限の心遣いを見せるつもりでいたのだ。

奥深くまで逞しい性器が埋め込まれ、ほんの少し余った根元の部分が彼女の柔らかな恥毛に包まれるのが解る。
身を硬くした悠理が清四郎の肩や腕を噛むことはついになかったが、まるで甘えるように口付けを求めてきた時、清四郎に残っていた最後の理性は完全に消滅してしまった。

乱暴すぎるほど激しく唇を舐め回し、悠理の口の中を徹底的に犯し始める。
唾液を注ぎ込み、また啜り取る行為。
わずかな思考までをも刮ぎ取るように舌が捩じ込まれ、激しさに息を奪われながらも情熱を伝える。

悠理も必死だった。
必死に追いつこうとした。
だがこんなにも求めてくる男にどう応えていいのかわからない。
ただうっとりと目を細め、濡れた唇を差し出すだけ。

清四郎の胸が打ち抜かれる。
美貌の持ち主と解ってはいたが、色気立つ顔は反則に近い。
とろんと落ちた目を見つめたまま、清四郎はゆっくり律動を始め、しかし静かに奥歯を食いしばった。
そうでもしないと本能のまま腰を動かしてしまうだろう。
悠理が痛みに泣き叫んでも止めることが出来ない。

初めはほんの僅かなストロークで、そして徐々にスピードを上げ、愛しい女の体を揺さぶる。
やがて啜り泣くような声を洩らし始めた悠理は、やたら「好き………好き……」と甘え、清四郎にしがみついてきた。
最高に盛り上がる瞬間。

「…………悠理っ!!」

想定していたよりもずっと早く、彼は達してしまう。
頭の芯が痺れ、さほど激しく動いてはいないのに、全身が汗だくになっていることに気付く。
緊張もあったのだろう。
荒ぶる息のまま悠理の胸に顔を埋め、深い満足感に浸る清四郎。
セックスとはこんなにも興奮するものなのか、と軽くショックを受けていた。

コントロール不能とは恐れ入る。
もしかすると、悠理の体こそが媚薬なのかもしれない。

まだ深く繋がったままの体は互いの熱を伝え、離れがたい気持ちを抱かせた。
とはいえこのままでは拙い。
少々気恥ずかしいものの、清四郎はゆっくりと抜いたソレからゴムを取り去り、新しいものを装着した。

「…………また、すんの?」

ぼーっと茹だった頭で悠理は尋ねる。

「………一度で終わるような男と思わないで頂きたい。」

プライドに触れられた清四郎はさっきよりも手早く彼女の中に身を沈め、腰を動かし始めた。

「んっ………あぁっ……ダメ、それ!」

ほとんどの女が感じる小さな粒を擦るようにピストンを繰り返す。
心地よい悲鳴を聞きながら、本来持つ能力を存分に示し、そして深い愉悦を味わう。

一度目を凌駕するほどの気持ち良さ。
悠理の声も、汗ばんだ肌も、締め付ける性器も──────彼の五感全てに訴えかけてくる。

「あ、あぁ、せ……しろぉ!!」

狂ったようなリズムで腰を打ち付けていると、彼女もまたそれに合わせるかのように蠢き始めた。
苦悶の表情ながら、その声はとてつもなく甘い。
清四郎の脳髄を焼き切るような興奮を与えてくる。

「くそ………だめだ………」

二度目の絶頂は一度目よりも遅かったものの、清四郎は我慢出来ずに放出した。
こんな短いスパンで搾り取られる経験は初めてだ。

悠理は既にぐったりとしている。
脱力し、投げ出された長い手足はまるで妖精のように美しい。
ツンと上向きの胸が誘うように震えていて、息が整うのを待たず、清四郎の唇はそれを捉えた。

「や……ぁっ……ん!」

「こんなやらしい身体………反則ですよ。」

片手間に最後の避妊具を着け、再び温かな泥濘の中へ。
上半身への愛撫に熱を込めながら、今度は悠理の快感ポイントを探る。

「んぁっ………!や、そこ、ダメ………っしっこ出ちゃうから!」

勘違いしている悠理を訂正しないまま、清四郎は同じ部分に亀頭を擦り続けた。
じわじわと漏れ出す快感の潮を根元に感じ、こみ上げる喜びを噛みしめる。

「いいから………好きなように感じなさい。」

すると蜜の香りがより一層濃くなり、すっかり快楽を追い始めた恋人の蕩けるような表情があらわれた。
悠理がこんな顔を見せてくれるなんて想像もしていない。
清四郎の胸が感動にうち震え、その想いを伝えるべく、何度も口付けを落とすと、悠理もまた嬉しそうにそれに応えた。

まだ奥の方は辛いだろうからと、巧みな腰つきで膣道の手前を執拗にこねくり回す。
喘ぐ口から懇願する声が届き、より大きな興奮が立ち上る。

「………も、おかしくなるよぉ!」

おかしくなる悠理が見たいのに。
彼女はそんな男の欲望に全く気付いてないようだ。
瀬戸際にまで追い込まれた清四郎は激しく腰を擦り付け、頼りなげに揺れる乳首を思い切り吸い込んだ。
その瞬間、悠理の中から多くの飛沫が飛び散り、彼の引き締まった腹を濡らす。
シーツには大きな地図が描かれ、「…………出、ちゃった…」と、放心した悠理は、怯えたように清四郎を見つめた。
粗相をしたのではないと伝えても首を振り、ホロホロと涙をこぼす。

「初めてのエッチなのに………あたいってば最低だよぉ!」

むしろ初めてでこれほどまでに感じてもらえたのだから、清四郎としては万々歳なのだが─────

「違うと言ってるでしょう?………それにたとえ漏らしたとしても、そんなことでおまえを嫌いになりませんよ。」

彼女のよけいな心配を取り除くべく、再び腰を振り始める清四郎。

ただただ感じていればいい。
何もかも委ね、頭を空っぽにして、自分に溺れてくれ。

「ふぁっ……んっ!せ、ぇしろ……っ!」

必死で何かを伝えてこようとする恋人の濡れた眦を優しく吸いながら、清四郎はクライマックスを迎えるべく、律動に激しさを加えた。

飛び散る愛液。
締め付ける胎内。
互いの呼吸を乱したまま駆け上がってゆく最高の瞬間。

「………っ!!ゆうりっ…………」

清四郎は奥へと叩きつけるように飛沫を飛ばす。
ゴム製のそれは、三度目だというのに思いの外多くの白濁を包み込んだ。
本心ではそんな物を必要としない関係になりたいが、お互いまだ若く、冒険し足りない。

今しばらくは、『セーフティセックス』を守ろう。

清四郎は悠理の上に覆い被さったまま息を整え、名残惜しさからかルビー色した胸の頂きをいたぶるように舐めすくう。

「…………っ……あん!」

可愛い声で反応する悠理もまた、呼吸を戻そうとしている最中で、それを邪魔する清四郎を彼女は窘めるように叩いた。

「………悪い悪い。」

ちっとも悪びれないまま、身を起こす恋人。
ズルリと抜け出した分身が満足そうに脱力していて、側にあるティッシュを使い簡単に清められた。

「シャワー、しますか?」

「…………うん。………でも、立てない。」

「抱っこしてやりますよ。」

言うよりも早く抱えられ、一畳ほどのシャワーブースへと連れ行かれる。
結局そこでも、淫らな行為に耽ってしまったのだが、悠理に抵抗する気力はもはや一ミリも残っていなかった。

こうして当初の目的は達成され────

翌日より、北の大地を楽しそうに駆け回る恋人を満足げに眺める清四郎の姿が。
仲間たちの意味ありげな視線を軽やかに受け止めながら、例の薬の更なる改良を密かに決意している彼であった。

 

 

おしまい