Wolf under the moon(太陽の下で:最終話の夜)

深夜のチェックインにしては、割と良い部屋を手にすることが出来た。
彼女を安っぽいラブホテルなんかで抱く気にはなれない。
この辺りに乱立するシティホテルの中で、ここは特に気に入っていた。
決して過去の女と来たわけでは無い。
大学時代の学会で、何度か利用した事があるだけだ。
「わ・・せんせ・・・!」

羽交い締めするかのような抱擁に、彼女はたじろいだ。

ーーー今日は「先生」ではなく「清四郎」と呼んで欲しい。

そんな我儘にも一生懸命応えてくれた。
名前を呼ばれる度、小さな泡を飛ばしたように心が浮き立つ。
立場を感じさせない雰囲気までもが、二人の間を甘く漂い始めていた。

彼女はすっかり僕に身を預け、まるで借りてきた猫の様に大人しい。
馴染んだ肌がしっとりと気持ちよく、その香りにしばし酔う。

ーーーしかし、彼の視線は頂けない。
値踏みされることには慣れているが、まるで悠理を自分の所有物かのように扱う様は、恋人として腹立たしい。

「彼は・・・君の何ですか?」

尋ねることを踏みとどまれなかった自分はやはり幼稚だ。

「彼?・・・ああ、魅録のこと?ダチだけど・・。」

「本当にそれだけ?」

「うん。仲の良いダチだよ?」

「僕は嫉妬されていたように感じるんですが気の所為ですかね?」

「気のせいだってば。あいつはああ見えて過保護だから。」

「なら良いんですが・・・。」

彼女の言うとおり「ダチ」だとしたら、随分と危険な香りのする男だ。
だが、彼はまさしくあの集団を束ねるリーダーであり、その風格は充分に兼ね備わっていた。
そんなことを考えながら悠理の服を剥いでいると、慌てた様子でこちらを振り向く。

「え・・・しゃ、シャワー・・は?」

「ここで抱きたい。今すぐに・・・」

戸惑う瞳が愛らしい。
ショートパンツをタイツと共に下ろし、靴ごと抜き去る。
汗ばんだ肌が、吸い付くような感覚を僕の手に与えてくれる。

「こ、こんなとこで?あっちにベッドあるじゃん・・・」

「良いんです。ここで君を犯したい。」

白い下着の間からすかさず指を突っ込み、多少乱暴にかき混ぜる。
こんな愛撫にも応えるよう、たっぷりと時間をかけ彼女の身体を開発してきたのだ。

「あ・・っ・・そんな、いきなり・・!」

二本の指が粘着音を立て始める。
ほら・・もう、腰が揺らめき出した。
自分が教え込んだとはいえ、まったく淫らな身体だ。

僕はいつも以上に興奮していた。
それを彼女も感じ取っているのだろう。
大人しく、言うことに従う。
壁に手を付かせ腰を持ち上げると、既に濡れて光った秘所が甘い香りを放っていた。
喉が鳴る。
しゃぶりつきたい気もしたが、今は直ぐにでも挿入してその胎内を味わいたかった。
期待に震える身体はあまりにも融通が利かない。
窮屈なジーンズからがちがちに勃ち上がった欲望を取り出した時、その先端に透明な先走りを見留めた。
思わず自嘲してしまう。
高校生じゃあるまいに・・と。
しかし、そんな稚拙さに構って居られないほど興奮していた。

「挿れますよ・・。」

それだけを告げ、しっとりと温かい肉を突き進んでいく。
『ああ・・・心地よい。』
もうこの胎(はら)にすっかり魅了されてしまっている自分は、どこをどう探れば彼女が嬌声をあげるか知っている。

「んぅ・・・ふ・・・んっ!」

場所が場所だけに悠理は喘ぎ声を抑える。
勿体ないと感じたが、それはそれで興奮する為、そのままにしておいた。
激しく突き刺す度、彼女は涙を零しながら必死で歯を食いしばる。
僕たちは今、局部と局部だけで繋がっている。
こんなにも近い距離で愛し合える歓びは何物にも代え難い。
尻を掴みながら押し回していると、限界はすぐにやって来た。
膨れあがった肉茎がたっぷり蜜を滴らせた場所に収まる姿は、例えようも無いほど淫らで全身を愉悦が襲う。

「ああ・・っ・・・せんせ・・・せいしろぉ・・・・!」

甘くか細い嬌声と、僕の名を呼ぶ声が耳に心地良く、快感に身悶える悠理は食べ尽くしたいほど可愛かった。

「ああ・・・悠理・・・出すぞ・・!」

最奥を穿ちながら自分の欲望を伝えると、悠理の腰が激しく震え出す。
それは全てを受け入れる合図。
愛しさに胸を焦がしながら、僕は思う存分その中へと吐き出した。

役に立たない下着を剥ぎ取り、彼女を素っ裸にすると、すぐにベッドルームへと向かう。
一度放出したことで少しは治まりを見せるかと思ったが、何故だろう。
ちっともその様子が見られない。

「悠理。口を開けて舌を出して・・・。」

向かい合わせとなり、キスを始める。
恐る恐る、しかし言うことを聞く彼女はその可愛いピンク色の舌を見せつけた。
僕は頭を両手で封じ、噛みつくようなキスをする。
執拗に舌を吸い上げ、歯列の全てを舐め尽くす。

「ん・・っふ・・・あ・・・・ん・・・・」

重なる舌がピチャピチャと音を立て始める。
彼女も随分と興奮しているのだろう。
積極的に絡めてきた。
喉の奥へと僕の唾液を流し込む。
それをコクリコクリと飲み込む健気な姿は、いつ見てもぞくっとする。
ジュル・・と余った唾液を啜るように吸うと、悠理はもっと欲しいと懇願するように僕の舌を求めてきた。
こんな風に煽られると、どれほど長い時間をかけてもキスを続けたくなる。
永遠に終わりが来ない、そんなもどかしい快感に身を委ねるのも悪くはない。

しかし彼女はそれだけでは我慢出来ないだろうが・・・。

「は・・ふっ・・・ん・・・」

「悠理、僕の上に乗って。」

胡座を掻いた僕は、まだ乾ききっていないペニスを悠理の手に握らせた。
すっかりと馴染んだ肉茎を彼女はゆっくりと、リズミカルに擦り上げる。

「ああ・・・いいですよ・・・好きな様に入れてください。」

待ち望んでいたのだろう。
悠理は直ぐさま、膝の上に乗ってきた。
ずぶずぶと沈んでいく様子を恥ずかしそうに見ている。
積極的な行為と、その慎ましやかな表情とのギャップに嗜虐心が湧く。
まだまだ幼い胸先を少し強めにしこってやると、「きゃん!」と子犬のように啼いた。

「も、もう・・!」

「おや、随分と気持ち良さげな声でしたけど?」

「ばか・・・」

胸を軽く押そうとするその白い手首を掴み、僕の肩に絡めさせると再びキスを求めてくる。

「ん・・せん・・・・・せいしろぉ・・!」

「そう・・・もっと僕の名を呼んで?たくさんイカせてあげるから・・。」

言い終わるや否や、下から突き上げ責め立てる。
軽い身体がふわりと宙に浮き、次に重力で貫かれる。

「ひっ・・・あ・・・・ぁ・・ああ・・・」

「ああ・・・すごい。どろどろだ・・・・」

彼女の胎内が優しく締め付ける。
彼女の愛液が溶けるように包み込む。
いつもいつも、
彼女はこの幼い身体で僕を愛してくれている。
それが恐ろしく甘美で、切ないほど嬉しい。

「愛してる・・・僕だけのものだ・・・」

もう絶対に手放せないんだ。
どれほど彼女が美しくなろうが、
どれほど彼女に恋い焦がれる男が増えようが、僕はもう・・・身を引こうなんて思わない。
眩暈がするほどの独占欲を抱きながら、狂気を溢れさせる。

「悠理・・・!僕のことだけを見ていてくれ。」

「せ、せんせぇ・・・」

ガラスのように美しい瞳を舐め上げ、睫毛にキスをする。
喰らい尽したい思いと、慈しみたい思いが交差しながらも、結局は彼女の中を乱暴に探る身勝手な自分。

「ひ・・ぁあ・・・あ・・おかしくなっちゃうよ・・!も・・だめぇ・・・・」

「まだ・・まだ、離しませんよ。」

無茶苦茶に突き上げながら、奥歯を食いしばる。
限界を感じてもなお、腰の動きを止めることは出来なかった。

「好き・・・せんせ・・・せいしろ・・・好きぃ!」

「ああ・・僕も好きだ・・悠理、悠理!」

ぎゅうっと最奥で強く絞られ、これ以上無いほど膨張した分身が出口を求めて口を開く。
それでも更に奥深くを目指そうと、ぐりぐりと擦りつければ、ぞくぞくするほどの射精感がこみ上げて来た。

「ゆうりっ・・・・!」

「あ・・・あ、ひ・・・いく・・・っ・・あ・・・あぁ・・・・!」

涎が光る半開きの口にむしゃぶりつき、悲鳴のような喘ぎ声を飲み込む。
その瞬間、彼女のひくつく胎内へと熱い思いを注ぎ込んだ。



絶頂に伴う内側の激しい蠢動に身を任せていると、不思議なことに萎えるどころか、再び勃ち上がってくる。
しかし、放心状態で胸にもたれかかる悠理の負担を考えると・・・一旦休ませてやらなくてはならない。

「悠理・・・大丈夫ですか?」

「あ・・・うん。すごかった・・・。」

掠れた声が弱々しい。
こめかみから首筋まで伝う汗を舐め取り、僕は繋がったままゆっくりと彼女を押し倒した。

「せんせ・・・硬いままだよ?」

「ちょっと箍が外れてますね・・・自分でも怖いくらいだ。」

そっと腰を引くと、脱力して開かれたままの脚の間から、とろりとした白い泡立ちが彼女の蜜と交じりながら零れ出た。
二度目とは思えない量に自嘲する。

「あ・・・っ!」

そこに再び指を突き入れ、優しく掻き出す。
自分のモノに触れることは本来不快であるはずなのに、彼女のものと交じったそれは何故か違う物質に感じた。

「まだ・・・足りない?」

「ええ・・・少し休んだらまた・・・」

「ねえ・・・もしかして先生、魅録に嫉妬してんの?」

「・・・・・彼はなかなかイイ男でしたからね。」

悠理はキョトンと目を瞬かせ、数瞬後、晴れやかに笑った。

「あはは!せんせぇの方が、イイ男だって!」

そう言って彼女は起き上がると、再び僕のモノに触れてくる。

「でも・・・ヤキモチは正直嬉しいじょ?もっと妬いて?」

「そんなことを言ったら、君が後悔するだけですよ?」

「・・・・いいよ。先生のコト・・・もっと教えて欲しいから。」

甘える声と媚びる目に、すっかり驚かされてしまう。
そしてそれに逆らえない自分にも・・・・。

「君は本当に可愛い生徒ですね。これからたっぷりと教えてあげましょう。」

ーーー君が僕を煽ったのだ。

そんな言い訳を胸に、僕は狼になる覚悟を決める。
全てを知られてなお、悠理の晴れやかな笑顔を切望しながら・・・・。

空に浮かぶ満月は、僕を狂気へと誘う。
そして小兎だった彼女もまた、魅惑的な女へと変身するのだ。