欲望の夏(R)

 

「……っ!………んなとこでダメだって…………バレちゃうだろ?」
「大丈夫………あいつらは海の家に行ってしまいましたよ。」

 

生い茂るパイナップルの木は、二人の陰を覆うに充分な大きさだ。
白い砂浜とエメラルドグリーンの海。
突き抜けるような空からは、眩しいほどの太陽が照りつけ、肌をチリチリと焼く。

仲間から距離を置いて歩いていた二人を、誰も咎めやしない。
熱々の恋人達に何を言っても無駄だと解っているからだ。

からかう暇もないほど、互いの世界に入り込んでいる清四郎と悠理。
多少傍迷惑だが、それもこれも二人が初恋同志であるが故。

今は好きにさせておこう。

四人の見解は当然一致していた。



そんな気遣いを知ってか知らずか、清四郎は調子に乗っていた。
ひんやりとした木陰に悠理を連れ込んだ挙げ句、欲望のままに盛り上がる。

悠理にとって清四郎は初めての男で───何が正しくて間違っているかなど、数学のテストよりも遙かに難しい問題だった。
もちろん彼女に解ける問題はこの世に少ない。
おかげで今は清四郎の独断場。
眠っていた女の部分を目覚めさせる為、彼は日々求め続けている。
それもこれも探求心のなせる技──か?

「だ、誰か来たらどうすんだ?ここ、一応リゾート地だぞ?」

「………それは、こうしたら………ほら………怪しくないでしょう?」

パイナップルの幹に手を付いた悠理の、その焼けた背中に重なり合う清四郎。

しかし誰がどう見ても───言い訳できないほど怪しい。

キスを求めつつ、自らの白いズボンの前を開き、と同時に悠理のショートパンツを引き下ろす早業。
清四郎は性急な動きで、己の屹立を扱き立てた。

「悠理………少し脚を開いて………」

「ま、マジですんの?」

愚問である。
無言で肯定する男に悠理は戦慄した。

ショートパンツの下には水着が隠されていて、長く細い指は驚くほど器用にクロッチ部分をずらし始める。

「おや?」

しかし触れたその瞬間、清四郎は嬉しそうな声をあげた。
雄芯を熱く包み込む場所が既にとろりと濡れていたからだ。

「おまえも………なかなかどうして、スケベじゃないですか。」

「………っ!言うな!」

「僕がきっちり、仕込んで来た甲斐がありましたよ。」

前戯など不要───とばかりに猛りきった肉棒を挿入し、ゆっくりと奥へ沈み込ませる。
舌なめずりしながらも悠理の赤い耳を食むその姿は、いつもの彼とは似ても似つかない。
涎を垂らした獣そのものだ。

「う……っん………あっ………」

押し殺そうとすればするほど、甘ったるい声は洩れ出てしまう。
悠理は木の幹に爪を立て、自らの甲を強く咬んだ。

「こら………傷つくでしょうに。」

「だって……んあっ……はっ………」

次第に速まる律動。
清四郎のいやらしい動きに揺さぶられる自分は、ちゃんと木陰に収まっているだろうか。
悠理は辺りを気にしつつも、どんどんと快楽に溺れてゆく。

「…………っふ………悠理、どこに欲しい?」

何を意図しているかは流石に解る。
振り返れば、ギラついた雄の香りを漂わせる恋人。
木陰とはいえ、そのあからさまな表情は明らかに見て取れる。

「な、中はダメだぞ!」

今後の事を考えれば、それはあまりにも耐え難い状況だ。
いつもなら聞き入れてもらえない言葉も、この時ばかりは「仕方ありませんね。」と承諾され、悠理はホッと胸を撫で下ろした。

しかしそれは間違っていたと直ぐに解る。
猛然とラストスパートをかけ始めた清四郎は悠理の口を掌で押さえ、更なる奥を激しく抉り始めた。

「んっぐ……!んんんんっ!」

瞼に散る火花。
抗えぬ快感に身を揺さぶられ、悠理は清四郎が何をしようとしているかを察した。

「………っうり………!」

呻くような最後の声。
再奥にまで届く熱いマグマは、脈打つ肉竿に押し込まれたまま。
バラバラに砕け散るような戦慄とともに、下半身は崩れ落ち、悠理は膝を砂地に落とした。

「おっと………座っちゃダメですよ。砂まみれになる。」

────精液まみれは良いのかよ?

荒い呼吸で睨み上げたとて、堪える男でないことは百も承知。
僅かばかりの抵抗を、近くにあった貝殻を投げることで示す。

「嘘つき………どうすんだよ………こんな…………」

「ふむ………では一足早く、海に飛び込みますか?」

反省の欠片すら見せない男は、自分の身支度だけは完璧に整え、残酷なほどエロティックに笑った。
普通の女ならば太刀打ちできない。
普通の女ならば…………

「腹減ってんのにぃ………。海の家で海鮮焼き食う予定だったんだぞ。」

しかし悠理はがなり立てる腹の音を優先させる。
そんな恋人の直情的な幼さこそが清四郎の心を惹きつけて止まないのだ。
もちろん多少意地悪をしたくなるのは男の性。

「ならどうぞ、そのままで。」

抱え上げられた体に力はまだ戻らない。
清四郎は悠理にまとわりついた砂を叩き落とすと、ショートパンツを元通り履かせ、何事もなかったような顔で頬にキスを落とした。

「随分と奥深くに出しましたからね…………暫くは問題ありませんよ。」

耳に届く悪魔のような囁き。
腰が抜け落ちるような甘い声。

「~~~くっそぉ!あたいの分はおまえの奢りだかんな!」

「はいはい。」

そんな幸せ?な馬鹿っプルを待ち続ける四人は、おおよその事を察していたが誰も何も言わない。

「魅録、次はそこのおっきな海老を焼いてちょうだい!」

「あいよ。」

「あ。僕、夜光貝がいいな。」

「お野菜もきちんと摂りませんと………」

「もちろんよ!人参の欠片すら、あいつらに残してやるもんですか!」

何はともあれ、Good Vacation!