晴夜に浮かぶ蒼き月は、煌々たる光で二人の痴態を照らし出す。
静かな春の夜。
花散る音すら、耳へと届く。
「こんなにも濡らして………まったく、はしたないお嬢さんですね。」
「んっ……ふっ………」
封じられた口から洩れるは、官能の声のみ。
どれほど悔しくとも、潤いを湛えた密壺は、その長い指で暴かれ、侵略される。
神経質な性格を表す、細く骨ばった指。
しかし、一旦悠理の中に収まれば、この上ない優しさで掻き回し、甘い愉悦を引き出してくれる。
一度味わえば病み付きになること間違いなし。
未発達な体の奥深くから、女の悦びが溢れ出て、僅かな意地すらも破砕してしまうのだ。
「ほら、下着に染み出ていますよ。ここもピンピンに尖って、僕の指を待ち構えているようだ。」
「ひぅ………!」
ショーツ越しの愛撫が、焦れったさを増長させる。
清四郎の巧みな指遣いは、繊細で刺激的。
それは彼の豊富な経験を感じさせるが、わざわざ問うた事はない。
「悠理…………今日はどんな風に狂いたい?」
涼しげな声が残酷に響いた瞬間、悠理はその肩を微かに震わせ、期待に喉を唸らせた。
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男とこんな関係になって、すでに一月(ひとつき)以上経つ。
二人きりの勉強会で。
それは突然、悠理の目に飛び込んできた。
座卓を挟み向かい合う清四郎に厳しく指導される中、消しゴムを落とした悠理はつい、下を覗き込む。
見間違いかと思ったが、向かいに座る男の股間が、制服越しに分かるほど膨らんでいて、それを彼の手は静かな動きで擦っていた。
明らかな自慰行為。
知識の乏しい悠理とて、それが何を示しているかくらいは解る。
伊達に夜の街を闊歩していたわけではないのだ。
変質者の一人や二人、いや十人近くは撃退してきた。
慌てて身を起こした悠理に、清四郎はニヤッと口元を歪める。
それはとてつもなく、いやらしい微笑み。
罠にかかった獲物を見るような、満足げな微笑みだった。
そして・・・その夜━━━━
悠理は彼のモノとなり、男の本気に圧倒されながら幾度も啼いた。
自分でもどうして言いなりになったのかは判らない。
清四郎の欲情にあてられたから?
それとも興味本意で?
どちらにせよ彼女は彼に快楽を叩き込まれ、泥水に浸かるが如く、足下を絡め取られてしまっていた。
仲間にも内緒。
親にも内緒。
二人きりの遊戯。
ただただ、淫靡な夜の世界━━━
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ひどく濡れた音が漂う。
全ては、淫乱な自分が悪いのだ。
清四郎に触れられ、育ち続ける女の性。
たった二本の指に狂わされる理性が、悠理を苛む。
「こんなにも主張していますよ。我慢出来ないんでしょう?もっと捏ね回されて、蜜を垂れ流しながら、イキたいんじゃないんですか?」
根元から勃ち上がったソレを、美しい指が弄ぶ。
コリコリと‘こより’を作るように捏ねられれば、彼の言う通り、どっぷりと蜜が溢れた。
「ひぃっ……ぅんん!!」
「おや、染みが広がりましたね。となると、この下着は用済みだな。」
スルッと足から抜かれたそれを、男は悠理の目の前に差し出す。
わざと見せつけるように、濡れた部分は広げたまま。
「やっ!」
「ほら、すごいでしょう?おまえの乱れっぷりは日毎激しくなる。元々淫らな体質なんでしょうねぇ。」
「んなこと……言うなよぉ………」
「気持ち良ければ、誰でもいいのかな?僕以外でも…………」
意地悪な問いかけ。
睨みつける悠理は、主張する彼の欲望へと腰を押し付け、催促した。
「…………おまえ以外、無理。」
「本当に?」
「………当たり前だろ?あたいは………もう………」
「僕とのセックスから離れられない?」
明け透けな言い方だったが、悠理はコクリと頷いた。
彼と溺れる淫らな夜は、どんなスポーツよりも激しく刺激的で、
終わった後は、例えようもない満足感に揺蕩うことが出来る。
逞しい腕に抱かれたまま眠りへと落ちていく幸福感は、
一度味わうと麻薬のように囚われてしまい、一人寝が淋しいと感じるほど彼の温もりが恋しくなるのだ。
「………やれやれ。『おまえが好きだから』とは、どうしても言ってくれませんね。」
「だって………わかんないんだもん。恋愛なんてしたことないし!」
「他の男とは、こんなこと出来ないんでしょう?その理由は?」
「んなの……気持ち悪いからに決まってんじゃん。」
「僕は、気持ち悪く、ない?」
「ん………むしろ、気持ちいい………」
泥濘を清四郎の指がなぞる。
小さく膨らんだ花の芽が、唐突に親指で押し潰され、悠理はビクンと腰を浮かせた。
「はぁ……ぅ…ん!」
その拍子に埋められる中指。
最初からずっぷりと沈み込み、滑る膣内を掻き回す。
「それは………僕に、すっかり、溺れている証拠ですよ。」
ピシャッ
数回に分けて吐き出される水飛沫。
濡れた畳を見つめながら、悠理は切なげに喘いだ。
「あっ………せぇしろ……焦らさないで?」
「もう一本、欲しいんですか?」
言うと同時に埋め込まれる人差し指。
その圧迫感に再び喘ぐ。
「いい締め付けだ。おまえは本当に素晴らしい反応をするな。」
中で指を擦られる感覚に、潜んでいた快楽が目を覚ます。
止めどなく蜜を流す花弁。
明らかに熱を持つ胎内。
言いようのないもどかしさが、悠理の腰を支配し始める。
「あっ、あっ………いや………」
「ほら、どうおねだりするんです?教えた通りに言いなさい。」
意地の悪い男がそれでも欲情に駆られ、上擦った声を出す。
いつもの余裕は見られない。
その声は悠理にとって、堪らない興奮剤でもあった。
「欲しい………もっと太くて硬いの、ちょうだい?」
「誰の、が抜けてますよ。」
「清四郎の・・・・」
「良いでしょう。天国を見せてやりますよ。」
清四郎はファスナーを下ろし、尊大なシンボルを見せつけた。
悶える悠理が欲しがる、たった一つの欲望。
「入れてぇ………」
白い足をしっかり手で支え、望み通り背後からあてがう。
待ちに待ったその瞬間。
煮え滾る花弁へと、この上なく反り返った愚直が勢いを付けて捩じ込まれた。
悠理の細い身体が一瞬で派手な痙攣を起こす。
「あああっ………っっ!」
胸板に凭れ、絶叫を上げる女に、清四郎は悦びを禁じ得ない。
『悠理をここまで啼かせる事が出来るのは、この世で僕一人だけだ』
昏い独占欲に浸りながら、間髪入れず、腰を激しく突き上げる。
鍛えられた身体は、悠理を絶頂へと導くためだけに使われ、張り詰めた筋肉が躍動を見せた。
「あ!!ああっっ!せぇしろ……すごいよぉ!」
「いい声だ……もっと喘ぎなさい。どうせ誰も居やしないんだから……」
狂喜の快楽に翻弄され続ける女は、ゾクゾクするほど美しい。
清四郎の手は浮かび上がる白い足を限界にまで広げ、激しい抜き差しをしながらも、膨らみきった花芽を軽快に摘まみ上げた。
「ああああ!!!おかしくなる!!そこ、ダメぇええええ!」
女は髪を振り乱し、何かに縋ろうと手を伸ばす。
絶頂を迎え、派手に飛び散る潮が清四郎の股間をしとどに濡らすも、彼はその動きを止めない。
「まだまだイケますよね?僕が達するまで……お付き合い願いますよ。」
悠理は慄おののくしかなかった。
清四郎は、人一倍長く保たせることが出来る男なのだ。
決してその手を緩めず、悠理が気を失うまで穿ち続ける。
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「……どうです?僕から離れられないでしょう?」
掠れきった声と涙に濡れた頬。
それでも揺さぶられ続ける儚い身体。
「さぁ、悠理。僕を好きだと言いなさい。」
「あ……」
「ほら……早く。」
止め処なく流れ落ちる淫らな水滴が、悠理の感情を解き放つ。
「……好き……好き……せぇしろが……ス……キ……」
たとえそれが不確かな言葉であろうとも、彼に誘われる世界から逃れるつもりはない。
いつも彼だけが未知への扉を開け放ってくれるのだから。
「いい子です。」
冴え冴えとした月光に照らされた男は、女の耳元で満足そうに頷いた。
静寂が支配する夜が、深々と更けていく。