soixante-neuf(R)

まだ少女の様なしなやかな脚。
蝋を思わせる白い肌の先端、小さな足の爪があまりにも可憐で、思わず口に含みたくなる。
挑発的でいて、それでも甘えるような瞳を見せる彼女に、僕の胸がじくりと疼く。
ピンク色の少女趣味な下着。
普段、決して選ぶことのないその薄い布を、悠理は敢えて身に着け、僕を容赦なく誘った。

たかだか一枚の布。
脱がせてしまえばいつもの裸。
しかし男の性欲を煽るに、それは十分な働きを見せた。

シルクの手触りと華奢なレース。
彼女には相応しくないように見えて、何よりも相応しい気がする。
滑らかな白い皮膚を覆う金の産毛。
差し込む光を受け、輝いている。

僕は瑞々しい水蜜桃の頬をかぷりとかじり、くすぐったそうに笑う桜色した唇を指でそっとなぞった。

━━━━━可愛い

何千回と心で呟いてきた言葉。
その一言だけを告げ、甘い果実を啜る。

━━━━悠理、ゆうり。

まだ僕を嘲笑うか?
おまえに溺れた哀れな男を。
おまえなしでは生きる指針も見つけられぬ、愚かな男を。

だけど・・・・・たとえどれほど笑われても、僕はおまえを離さない。
恋い焦がれる狂喜は、巧みに隠された本質を剥き出しにし、一直線におまえへと向かうだろう。
気付いた時にはもう遅いのだ。
男の狂気にその身を震わせ、後悔すればいい。
挑発的な行為が、どれほどの危険を孕んでいたのか━━━たっぷりと思い知ればいい。

たった一枚の薄い布━━━

それはまるでレーシングフラグのように、僕の瞳に赤く焼き付いた。



気付けば、悠理の唇を奪い、細い手首をマットレスに押し付けていた。
光輝く金糸のような髪に指を差し入れ、逃げることが出来ないよう、小さな頭を掌で固定する。

煽った責任をきちんと取って貰わねば━━━

深い口付けは、抵抗する力を奪い、思考力を低下させる。

「悠理……足を開いて?」

素直に開かれた魅惑的な隙間へすかさず手を差し入れると、シルクの頼りないショーツの中へと更に忍ばせた。
柔らかな感触を確かめるよう掌を這わせ、秘唇を探る。
微かに身動いだ彼女の、刺激に弱い部分を暴き始めると、とうとう溜め息のような喘ぎ声を洩らした。

「は………ぁ……せぇしろぉ……」

可愛い声。
本当はその愛らしい唇から、僕以外の名は聞きたくない。
籠の中で絶え間なく啼かせ、僕の帰りだけを待つ従順な小鳥に変化させるのも、一つの手なのかもしれないな。
ふとすれば、そんな狂気に囚われてしまう。

「悠理、愛してる。」

「ん……わかってるよ?」

「おまえは分かっていない。きっと……僕の想いの深さを計れていない。」

「なら、せぇしろは分かってる?あたいの気持ち、ぜーんぶ分かってる?」

「悠理?」

まじまじと見つめ、そんな挑戦的な発言の意味を探ろうとする。
しかし彼女はニヤリと口端を上げるや否や、僕の身体をゴロリと仰向けに転がした。

━━━形勢逆転。

「あっ!」という間もなく、軽やかな動きで馬乗りになった悠理は、すぐにベルトを外し、下ろしたファスナーの中から硬い芯を持つソレを取り出すと、愛しそうに掌に収める。
上下に擦られるだけで最高状態に勃ち上がってしまうのは、悲しいかな・・・・男の性だ。

「は………ゆうり………もっと……」

じんわりと腰を襲い始める高熱。
拙い愛撫に焦らされながらもそれはどんどんと上昇する。

━━━まさか、わざと?

こちらを見つめ、にやにやと笑う小悪魔はどこか得意気に呟いた。

「あたいだって、おまえを全部食べちゃいたいくらい愛してるよ?」

そう言って僕の上で身体を回転させる。
悠理の美しい形をした脚が首元を跨ぎ、さっきまで触れていたシルクの布が目の前に晒される。
それは彼女にしてはあまりにも大胆、かつ扇情的な行為。
ピンク色のフラグはゆらゆらと左右に揺れ、愚かな男を誘惑する。

しっかりと握られた急所。
チュッと音を立て口付けられると、火が点いたかのような鋭い痺れが全身を走り抜ける。

「あ、あぁ、悠理!」

「うわ・・・すんごくおっきい。それにコレ、意外と美味しそうな色してるね。」

口淫はまだ早いかと長く躊躇っていたが、彼女の大胆な台詞はそんな考えを一瞬で払拭した。

「して、くれるんですか?」

「ふふ……ホントはもっと早くにシテ欲しかったんだろ?」

図星を指され、ぐうの音も出ない。
僕は気まずい感情を振り切るため、腰を僅かに持ち上げると、悠理の頬をソレで擦る。
卵肌のそこに、透明な粘り気が筋を描いた。

「ええ。すごく、ね。本当はおまえのその可愛い口に無理矢理にでも突っ込んで、たっぷり舐めさせて、喉の奥に絡むような濃い精液をぶちまけたかった。」

そんな男の本音には、さすがの悠理も複雑な表情で頬を染める。
心を曝け出すことは多少の後悔も生み出すが、どこか清々しくもある。
そう認識した僕はシルクのショーツを太ももまで下ろし、彼女の細い腰を強引な力で引き寄せた。

「わっ!」

「こんな格好、どこで覚えたんです?おまえはこういう知識に関して、人よりも疎いはずですが?」

「だ、だって、可憐が……」

俯き、ぎこちなく振り返りながらもボソボソと呟く。

「可憐が?」

「‘ちゃんとお互い気持ち良く出来なきゃセックスじゃ無い’って言うんだもん。それにこの間、美童が持ってるちょっとエッチな雑誌も見たんだ。こういう体勢だったら、男も興奮するって書いてあったし……良いかなって。」

「なるほど・・・だからこんな下着まで用意した、と。」

「あの、さ・・・・・もしかして、似合ってなかった?」

「まさか!おまえだって僕の昂ぶりが判るでしょう?ほら目の前にあるソレですよ。」

そんな言葉に安堵したのか、悠理は再び嬉しそうに触れ始めた。
羞恥よりも好奇心。
日頃の性格が垣間見える。

「ね、もう舐めていい?」

「望むところです。」

大胆なようで少女。
無垢なようで妖婦。

二つの相反する性質を、彼女は見事使い分け始めている。
そんな事実を知り、僕は嬉しくて仕方なかった。

悠理の愛らしい部分へキスをして、淫らな音を立てながら啜る。
時折ビクビクと小刻みに痙攣しながらも、勃起した性器から手を、そして口を離すことは最後まで無かった。

滴り落ちる唾液が、どんどんと増してゆく。
悠理を愛撫しながらも、その濡れた感触に胸が沸く。

チュポ………ジュポ………

驚くほど上手なフェラチオに、とうとう目の前がくらくらし始めた。

薄紅色の秘唇からどんどんと溢れる蜜は、一体何を期待してるのか。
それを一滴残らず吸い取りながら、興奮は更に高まってゆく。

━━━天井知らずの快感。

このまま果てずに、悠理の口淫を堪能していたい。
そして………自分自身も、彼女が示してくれているこの興奮の証をずっと味わい続けたい。

欲望がリアルな形を成して、目の前に横たわる。
しかし限界はどうしてもやって来るのだ。
すっかりコツを掴んだのか、手と口、そして舌で僕をとことん可愛がってくれた悠理。
腰からマグマのような熱がせり上がり、ビクンと揺れたソレが大きなうねりを表す。

「悠理、そろそろイクぞ?」

「んふっ。」

返事代わりの舌使いに、とうとう飛沫は飛び出した。
それは恐ろしいほどの快感。
腰が無造作に痙攣を繰り返し、悠理の口へと突き入れてしまう。

「あ………ぁ、悠理!!」

今、彼女の柔らかい舌には、生暖かい白濁が絡み付いていることだろう。
僕の目前にある濡れそぼった秘穴からは、同じくトロリとした水分が溢れ出て来た。
それをもちろん、余すことなく舌で受けとる。

「ふぇ………」

ようやく息を整えた僕を、彼女は恐る恐る振り返り、泣きそうな顔を晒した。

「出しなさい、手に。飲み込めないでしょう?」

弱った表情でコクンと頷いて見せたが、何を思ったのか、なかなか手に吐き出さない。

「悠理?」

涙目の覚悟を、僕はその時気付かなかったのだ。
再び背を向け、天を仰ぎ見た悠理は、ごっくんと音を立ててソレを飲み下す。
美しい背中をしならせ、天使の羽根をくっきり浮かばせながら・・・。

その瞬間、僕の脳内でハレーションが起きた。

━━━悠理!!

彼女の細い身体からピンク色の布を全て剥ぎ取ると、シーツに転がし、押し倒す。

男の欲望を飲み下したその口に。
細い髪が絡み付く汗ばんだ首筋に。
そして、健気な大きさの愛らしい胸に。
僕の舌は奉仕し続けた。

「悠理!ああ、もう食べてしまいたい!」

「やだっ!食べたら無くなっちゃう・・・・あたい・・・・もっと気持ち良くなりたいもん!」

「そうですね。まだまだおまえと………」

続かぬ言葉の代わりに、執着の証でもある愛咬の痕を、至る所に残していく。

そして再び濃いピンク色に染まる肌。
なんと艶かしい光景だろうか・・・。

この上無く膨らんだ欲望を、ようやく彼女に突き入れた時、迸った声は間違いなく絶頂のソレであった。




グチュグチュ・・・・

淫らな音だけが広い部屋に響く。
二人して荒い息を吐きながら、それでも止められない行為に、ずぶずぶと意識が囚われていく。

あまりにも気持ちよくて・・・・・
悠理が何度達したかなど、もう数えてはいられなくなった。

泪が染み込んだ枕が、
愛液により大輪の花を描いたシーツが・・・
僕たちの行為の激しさを物語っていた。

悠理を抱きかかえ、更なる密着を試みる。
その柔軟な身体。
そして、何よりも快感を追い求める貪欲さ。
未知の世界へ一歩踏み出せるのも、彼女が持つこの貪欲さがあるからだ。

ぬちゅっと白い糸を引いたそこを、互いに見つめ、笑い合う。
そして再度深く繋り、ゆったりと腰を揺らし始める。

「は・・・・ぁ・・・・・せぇしろぉ・・・すごい・・・・」

「ああ・・・・・頭がおかしくなりそうだ。」

激しい波ではなく、深層を抉るような心地良さが二人を包み込んでいく。
幾度放ったか解らぬ体液が、そして彼女自身から溢れ出た水分が、とろりとした粘液に変化し、いまだ衰えぬ屹立を絡め取っていた。

「終わりたくないな・・・・ずっと、こうしていたい。」

「・・・・あたいも・・・・。」

濡れた唇が濃い赤色に変化しても、互いの粘膜を求める事を止められない。
悠理の尖った胸先が、僕の同じものに触れる。
無意識に擦り合わせながら、彼女は肌を粟立たせた。
男にとってはささやかな刺激も、二人で共有していると思えば快感も倍増する。

「あ・・・・・・だめ・・・・・・・また・・・イッちゃう・・・」

蠢く胎内で愚息が悦び、涎を流す。
淫らな腰の動きと、うねるような締め付け。
それに抗える男は居ない。
ドクドクと脈打つかのように欲望を吐き出しながら、僕は耳元で小さく囁いた。

「悠理・・・・・・おまえは最高の女だ。」

彼女の胎内がまたしてもキュッと締まりを見せ、淫靡な吐息を吐き出した。
二人の夜明けはまだまだ遠い。