sea breeze(R)

「ど、どけよ!」

「無理です!」

━━━何が無理なんだよぉ!??


ベニヤの壁に押しつけられた悠理は、その大きな目を限界にまで開いた。
両手で挟み込む様に手を付く清四郎の鼻息が、恐ろしく荒い。
これは異常事態だと直ぐに解ったは良いが、ここから逃げ出すにも悠理の下半身は水着すら着けていない状況で、さすがに無理がある。「清四郎!ほ、ほら、急いでるんだろ?」

「ええ、もちろん急いでますよ!早くおまえを手に入れなくては駄目だとね。」

━━━何言ってんだ、こいつ!!?
今の今までいつものポーカーフェイスだったくせに、一体何が起こったんだ?

悠理は自分の身体がチェリーボーイ(笑)にどれだけの影響を与えたか、いまだ解っていない。
清四郎はいつも冷静で、どれだけ色っぽい女の裸を見ても平然としていた。
可憐だけでなく美童のモデル仲間や、その他の美女に気のある素振りをされても、困ったような微笑み一つで適当にあしらっていたのだ。

それなのに・・・・
今の清四郎はまるで・・・・そうまるで、長い間餌にありつけなかった獣のように息が荒く、目が血走っている。
滅多に狼狽える事のない、落ち着き払った男は、もう、ここには存在しない。

悠理は辺りを見渡した。
6畳ほどの小さな小屋。
入り口はたった一つで、壁の上に通気口があるだけの簡素な造り。
逃げられる気がしない。

「せ、せいしろちゃん、ちょっと落ち着こうか。」

「無理ですね。」

カチャカチャとバックルを外しながら、清四郎はそう断言した。

「な、何するつもりだよ!!」

「さっきも言ったでしょう?おまえを手に入れるんです。もう我慢など出来ない!」

ストンと下ろされたスラックスから、凶器の様に聳え立つ男の分身。
悠理は初めて見る下着越しのその大きさに、息をのんで、そのまま気絶したくなった。

「・・・・・む、無理・・・・」

「いや、大丈夫です。」

━━━嘘吐け、この野郎!!!!

ようやく壁から手を離し、小さく縮こまった悠理から距離を置いた清四郎は、荷物の中から二枚のバスタオルを取り出す。
それを重ね合わせるように床に敷くと、いまだ緊張を解こうとしない悠理を優しく促した。

「ここに、横になって下さい。」

「・・・・・・・。」

「悠理。」

「ま、マジで、こんなとこで・・・・すんの?」

「僕だって・・・本当はホテルでゆっくりとしたかったですよ。」

「なら、そうしようよ!」

「でも・・・・・・・・我慢出来ないんです・・・その、初めてだから。」

「は?」

自分の手でそっと性器を抑え込む清四郎を見て、悠理はもう一度同じ言葉を投げかけた。
すると・・・・

「・・・悠理が、初めてです。」

「はは・・・何の冗談・・・・・?」

「・・・・・・・。」

「うそ━━━」

今度は悠理の時が止まった。

清四郎が童貞・・・・・
衝撃の事実を知り、この上無く緊迫した状況に置かれた悠理は、自分の下半身が裸であることも忘れ、恐る恐る清四郎に近付いた。

「・・・ほんとに?」

「・・・・・・・はい。」

さすがに少しだけバツの悪い表情を浮かべる。

「なんで?」

「なんで・・・・と言いましても、する機会が無かったというか・・・。」

「でも、おまえ、モテるんだろ?」

「ええ・・・・それなりには。」

悠理はペタンとバスタオルの上に座り、呆然と視線を彷徨わせた。

「童貞の僕では・・・駄目ですか?」

「駄目もクソも・・・・あたいだって、処女だしな。」

「悠理が処女じゃなかったら気が狂います。」

「むしろ、こっちの気が狂いそうなんだけど?」

「・・・・・・。」

二人は一頻(ひとしき)り見つめ合った後、同時に笑い声をあげた。

「・・・・・・・・・・・いいよ?」

悠理がその覚悟を告げたのは、更に数瞬後。

彼女は、珍しく困った様子の清四郎を見て、可愛さを感じてしまったのだ。
これも母性本能と言うのだろうか。
ポンポンとバスタオル越しの床を叩き、清四郎を座らせる。

「あ、あたい、何したらいい?」

「・・・・・横になってください。それだけで・・・・」

清四郎は逡巡した後、再び荷物の中から何かを取り出す。

「それ・・・・何?」

「え~・・・・・避妊具ですね。」

「・・・・・おまえ、用意良すぎだろ。」

「いつでもその覚悟がありましたから。」

━━━むしろこっちの覚悟を気にしろよ!

悠理は胸の中で悪態を吐いた。
しかし、ピリリ・・・・と軽い音を立て、まん丸の薄っぺらいゴム製品が現れると、急激に緊張が走る。
パッケージなら何度か見たことはあるが、さすがに中身までは知らない。

━━━どうやって使うんだろう?

まじまじと見つめていると、清四郎は恥ずかしそうに「あっち向いててください。」と懇願した。
しかし悠理は興味津々。
視線を外せない。

「悠理・・・・・少しは恥ずかしがってくれ。」

「え・・・でも、面白いんだもん。おまえのソレ、すんごくでかいけど大丈夫?破れない?」

「サイズは確かめたことがあるので、問題ないと思いますよ。」

「ふーーん・・・」

丁寧に装着した後、先っぽに変な形が残る。

「余ってる?」

「・・・・・いえ、ここに精子が溜まるんです。」

「あ・・・・そなんだ。」

悠理の脳内からは、イライラと待ち続けている客の事などすっかり消え去っていた。
今は清四郎の生態と行動にこそ興味がある。
あまり可愛くはない形と色、そして根元に生えた黒い毛。
どれも自分とは違い、男女の差を見せ付ける。

「気持ち悪くないんですか?」

━━━気持ち悪い?そういうわけではなく・・・ただただ不思議に感じる。

重力に逆らい真っ直ぐに上を向く性器。
うっすらと浮き出た血管が時折ピクピク痙攣する様子を、惹きつけられるように見てしまう。

「気持ち悪くは無いよ。でも・・・それあたいの中に入れるんだろ?入るかなあ。」

「・・・・いきなり全部は無理かもしれませんが、出来るところまで頑張ってみましょう。」

━━━なら余計にホテルでやった方が良いんじゃないのか?

どう考えても時間がかかりそうな行為のため、悠理はもう一度提案してみようと口を開いた。
だが瞬く間に、清四郎の唇によってその機会は奪われてしまう。

「ん・・・・っ!」

いつもは軽いキスから始めるというのに、今回はいきなり激しく求められ、悠理は混乱した。
急いた感じで蠢く舌が悠理の唇をノックし、さっさと開くよう促す。
恐る恐る要求を聞けば、無遠慮な感じで侵入され、あっという間に怯えた舌を絡め取る。
清四郎の熱くて器用なそれが、悠理の思考をどんどんと奪い去っていった。

━━━ああ・・・くそ・・・・何も考えらんない・・・・・

それは既にキスの快感を知っているからこその結果。
清四郎はいつでも唇と舌だけで悠理を恍惚とさせてしまうのだ。
無論、その先にある世界に興味が無かったわけではない。
求められれば、それを受け入れる覚悟は弱気ながらも持ち合わせていた。

もちろん、こんな場所ではなく・・・・・もう少しマシなシチュエーションで━━━。

とろり・・・と目が潤んだ悠理を清四郎は嬉しそうに見つめ、湿らせた唇を離す。
背中に手を差し込んで着たばかりの水着の紐を解き、小さな布を取り去ると、先ほど触れた柔らかい膨らみがぷるんと揺れた。

「可愛い・・・こんな可愛い胸をしているなんて・・・・」

ほぅ・・・と感じ入ったような溜息と共に、男はそこに触れる。
今度は明確に性的な意味をもつ触れ方だった為、悠理はちょっとだけ身を堅くした。

「大丈夫・・・優しくしますよ。」

願望入り混じった妄想を一生懸命断ち切りながら、ゆっくりとプロセスを踏んでいく清四郎。
まずは額、そして頬から耳にかけてキスを滑らせ、そして首筋に強弱を付けてキスマークを残す。
美しく浮き出た鎖骨には丁寧に舌を這わせ、何度もそこを舐めしゃぶった。

「・・せいしろ・・・くすぐったいってば・・・・・・・」

クスクスと笑う様も愛らしくて堪らない。
執拗にそこばかり責めていた清四郎だったが、愚息が興奮に耐えかねるようビクビクと痙攣しだした為、ようやく次の胸へと唇を移動させた。

赤い突起はまるで果実。
歯を立てて噛みきれば中から甘くて美味しい果汁が飛び出してきて、喉を潤すかもしれない。

妄想癖のある男はごくりと唾液を飲み込んだ。

チュプ・・・・

初めて口に含んだその感触をじっくりと記憶するように、何度も何度も唇を動かす。

「あ・・・・・ん・・・」

条件反射のような甘い喘ぎ。
清四郎が妄想していたものよりも随分と甘い。

━━━可愛い!素晴らしく可愛いじゃないですか!もっと聞きたい。僕の手でもっと喘がせたい。

何度も言うが、ここは簡素な脱衣小屋。
薄い板の向こうには大勢の海水浴客が列を成して待ち構えている。
無論、大きな声を出せば筒抜けだ。

そんな現実に歯噛みしながらも、清四郎の舌はとうとう小さな果実を舐め回し始めた。

「ひゃ・・・!」

知識を総動員させながら、刺激を与え続ける。
力加減を気にしつつ吸い上げ、硬くしこったそこを何度も舌先で押し潰す。
悠理の華奢な身体はプルプルと小刻みに震え、何かを求めるように手を伸ばしてくる。
それを掴んだ清四郎は更に強さを加え、小さな乳輪をぐるりとなぞった。

「や・・・やぁ・・・・」

悠理も意識しているのだろう。
ここがあまりにも頼りない小屋の中だと言うことを。
押し殺した悲鳴。
清四郎はその健気な努力に胸を熱くさせた。

「せ、せいしろ・・・・・・・」

バネを感じさせる見事な躰で起き上がると、悠理の美しい両脚を大きく開き、その中心へと顔を埋める。
それを見た悠理は空いた手でポカリと黒い頭を叩いた。

「あ、あほ!何してんだ!?」

「愛撫ですけど?」

「んなとこしなくていい!」

「いや、むしろここを重点的にしなくては・・・・辛い思いをしてしまいますよ?」

「・・・・・・・だ、だって・・・清四郎にそんなとこ見られるの・・・・やだもん。」

「僕は悠理の全てが見たいんです。だいたいおまえも僕のモノを見たでしょう?」

それを言われれば言葉に詰まってしまう。
でも飛び出たモノを見るのと、奥まったものを曝くのはちょっと違う気がする・・・と悠理は珍しく頭を働かせた。

「・・・・・・目、瞑ってくんない?」

「嫌です。」

そうキッパリと断言され、項垂れる。

「悠理・・・・」

清四郎は細い腰周りを撫でながら、優しい声で彼女の名を呼んだ。

「大丈夫・・・すごく綺麗だ。花のような香りもするし・・・ピンク色で・・・ああ・・もう蜜が垂れている。素敵ですね。」

━━━ひぃぃ・・・・!実況中継すんなぁ・・・・!

こういうデリカシーの無さが非難される所以だ。。
しかし鼻先三寸のところで話している為、吐息が秘所を掠め、どうしてもむずむずしてしまう。

「舐めますよ?」

言うよりも先に舌が触れ、悠理は気絶したいほどの羞恥を感じた。

━━━清四郎が・・・・あたいの・・あたいの・・・・ぎゃあぁ・・・・!!!

ポカポカと殴っていた手が徐々に力を失い、そしていつしかその心地良さに髪をくしゃくしゃと撫で回す。
ジュルジュルと卑猥な音が立ちこめ、非現実的な世界に放り出されたような感覚が彼女を襲った。

「ああ・・・美味しい・・・こんな味がするのか・・・」

初めて味わったそれを清四郎は余すこと無く啜っている。
柔らかい肉の感触の奥に、どれほどの快楽が待ち構えているのだろう。
彼の膨張した愚息はそんな期待にとうとう濡れ始める。

しかしまだ、もう少し悠理を感じさせなくては━━━

清四郎は再び舌を伸ばすと、小さな穴に差し入れ、自らの指で有るか無きか如きの突起に触れた。

「ああ・・・・あ・・・・・ひゃ・・ぁ・・・」

その刺激は相当なものらしい。
悠理は腰をバウンドさせ、それでも両手で口を塞ぐ。
もう自らの躰をコントロールすることは出来そうも無い。

━━━なるほど。この突起はやはり男の性器と同じなのか。となると繊細な感じ方をするということ・・・。大切に扱わなくては。

クレバスへの愛撫よりも相当強い反応を示され、気持ちが昂ぶった清四郎はさらに弄り始めた。
興奮度はもちろんマックスですぐにでも突き入れたい衝動はあるが、どうしても探究心が勝ってしまう。

━━━悠理の身体の全てが知りたい。

今度は羽毛に触れるかのようにそっと指を乗せ、僅かな振動を与えるべく小刻みに動かせば・・・悠理はとうとう涎を溢しながら泣き始めた。

「あ・・・っ・・・も、それ・・・・だめぇ・・・・・・・・」

「気持ちいい?」

「お、おかしい・・・あたいおかしくなる!んなの・・・しなくていいよぉ・・・」

「ああ・・・悠理・・・おかしくなっていいんです。もっと感じて、もっと僕に見せて下さい。」

━━━鬼ぃ・・・!

徐々に力が加わっていく指先にむせび泣き、次第に精神のコントロールすら失ってしまう。
足下からせり上がってくる猛烈な快感。
自分の意思とはかけ離れた衝動が彼女の身体を襲い始めた。

「せ、せいしろ・・・・や・・・や・・・・・こわいぃ・・・!」

怖がる悠理を頭上に感じても、清四郎の指は、舌は止まらない。

━━━このまま、所謂「絶頂」というものを味あわせてやりたい。

止め処なく溢れる蜜を音を立てて大胆に啜りながら、清四郎はさらに大きく指を動かした。

「あ・・・・ああ・・・・・・やぁああ!!!!」

必死で口を押さえていても、その嬌声は狭い小屋全体に響き渡る。
悠理は快感の迸りで全身を震わせ、そのまま意識を軽く飛ばしてしまった。




小屋の中は当然蒸し暑い。
小さ過ぎる通気口は風を呼び込まないからだ。
汗だくになりながら、それでも二人は絡み合う。

意識が戻った悠理を、清四郎は直ぐ様貫いた。
少しでも早く彼女と同じ快感を味わいたかったのだ。

「ゆうり・・・ああ・・・気持ちいい・・・すごい・・・・」

しとどに濡れたそこは痛みを軽減させ、逞しい分身を難なく受け入れた。
清四郎自身、驚くほどスムースに。
一度達した悠理の身体が適度に解れていた所為でもある。

蕩けるような胎内は柔らかさと弾力を兼ね備え、理性なんてものが全くもって役に立たないほど大きな快感を与えてくれた。
初めて知った女の中に、清四郎は呆気なく精を放出してしまう。
直ぐに新しい避妊具を付け替え、再び快楽の花園へと戻っていくが、やはりそう長くはもたない。

悠理は大胆さを増していく男の抽送に、じわじわと感じ始めていた。
先ほどとはまた違う気持ち良さが、お尻の奥の方から染み出していく。

━━━あたい・・・もしかして淫乱なのかな?’初めて’ってすんごく痛いって聞いてたけど・・・。それとも清四郎が上手なのか?

彼の言葉を信用するとしたら、未経験の清四郎はまさに「才能」のある男なのだろう。
昔、可憐から聞いたことがある「身体の相性の重要性」。
少なくとも自分は清四郎との行為がとても気持ちよく感じているのだから、これはラッキーなのかもしれない。
悠理はホッと胸を撫で下ろした。

三度目の挿入で、ようやく落ち着いて快感を追うことが出来るようになった清四郎。
最初は気付かぬ内に達していた。
二度目は涙目で見上げてくる悠理が可愛すぎて・・・我慢出来なかった。
しかし今度こそ、二人で同じ高みを目指してみたい。

再び情熱的なキスを与えた後、悠理の耳元でそっと囁いた。

「悠理・・・おまえが僕のモノでイくまで・・・・動きますよ?」

「・・・・・・・・う、うん。」

その言葉に一瞬でうねるような動きを見せた胎内は、まるで彼女の期待を表わしているかのようで・・・・
清四郎は嬉しくて仕方なかった。

ゆっくりと始まる律動。
今度は甘い吐息を奪いながら強弱を付け、快感のポイントを探っていく。
悠理の身体は清四郎の肉茎にすっかり馴染んできていた。
緩やかに回される腰の動き。
濡れた粘膜が擦られる度、全身に力が入り小刻みに震える。
その都度、ドロリと溢れさせる悠理の蜜壺は、性器の根元を白く泡立たせる。

グチュグチュ・・・
湿った淫らな音だけが小屋の中に響く。

「ゆうり・・・・すごく良い・・・・・・・悠理は?」

小さく、それこそ小さく尋ねられ、悠理もまたコクコクと頷きながら「いい」と呟いた。
自然と清四郎の腰に絡みつく脚。
より深く求めるその行為は、快感の度合いを示している。

「・・・・・せいしろ、好き・・・・」

「僕も・・・大好きです。好きで好きで・・・・堪らない。」

今日の清四郎はすごく可愛い。
またもや甘い疼きが胸の中に広がっていくのを、悠理は強く感じ取った。
童貞だった意外性も、こうして額に汗しながら愛を告げてくることも、いつもの澄ました顔からは考えられないほど衝撃的な現実だ。

「・・・・・・・・・ああ・・・せいしろ・・・なんか・・・痺れてくる・・・あ・・・・」

「ゆうり・・・・イきそうか?気持ちいい?」

「ん・・・・んっあっ・・・・・や、んっ・・・・これ・・・おかしい・・・・」

じわじわとこみ上げる抗いようのない快感。
悠理は真っ直ぐにそこへと飛び込む覚悟を決める。

「・・・・せいしろ・・・ぎゅっと・・・してぇ・・・・!!」

そんな愛らしい願望を叶えながら、男は激しく腰を打ち付けた。
悠理の中をより深く浸食し、限界までその速さを高める。
そんな自らの行為によって、清四郎もまた絶頂を手繰り寄せてしまう。

「あ・・・・・僕も・・・・ダメだ・・・・悠理・・・・・・くっ・・・・」

「あ・・・いっしょ・・・一緒にぃ・・・・・・・・・」

「ゆうり・・・・・・!!!!!」

ギリギリのところで二人は同時に果てたのだろう。
収縮する胎内が搾り取るように蠢き、清四郎は最奥の場所で全ての欲を解放させた。




蒸した小屋の中・・・・
息を整えた悠理は気怠い身体を無理矢理起き上がらせ、のそのそと着替え始める。
そんな姿を瞬きもせず見つめる清四郎。
タオルにうっすらと桜色の痕跡が残ったが、彼女が痛みを訴えることはなかった為、ようやく安堵の溜息を吐いた。
しかし立ち上がった瞬間、悠理は崩れ落ちるように再び膝を折ってしまう。

「せ、せいしろ・・・・力入んない・・・どうしよ・・・・・」

「・・・・・・・・・・。」

身支度を手早く整え、いつも通りのスタイルに戻った清四郎は、散らばった水着やタオルをバッグの中に突っ込む。
そしてそれを軽々肩に掛けた後、座り込んだままの悠理を抱きかかえ、小屋の扉を長い足で蹴飛ばすように開けた。
一瞬にしてさわやかな潮風が頬をすり抜ける。
沈黙していた扉が開いたことで、並んでいる人々がざわめいた。
熱中症にでもなったのか?という憶測までもが飛び交う。

「悠理・・・ちょっと走りますよ。」

さすがにバツが悪いのだろう。
清四郎はまるで逃げるかのように、全速力で人々の列から離れていった。
悠理は笑いがこみ上げる。
何故ならば、男の頬が日焼けよりも遥かに赤くなっていたからだ。

駐車場に置いてあった車へ辿り着いた時、清四郎は大きく息を吐き、悠理の身体を気遣う。

「大丈夫ですか?痛くはなかった?」

「ん・・・・・・・・・・・だいじょぶ。気持ちよかったし・・・・」

互いの顔を見つめ、笑い合う二人。

「さあ・・・どうします?全く泳げていませんしねえ。」

「ん~・・・・プール付きのホテルにでも行く?この際、海じゃなくてもいいや!」

「悠理にしては素晴らしい提案です。」

そう晴れ晴れと言い切った清四郎は、エンジンをかけハンドルを強く握った。

悠理はこの時、想像もしていなかっただろう。
まさかここから先、三日間もの間、ホテルの部屋から一瞬たりとも解放されないことを・・・・。
恥ずかしくてプールに入れないほど赤い痕跡を残され、更に足腰が立たなくなることを━━━。

彼女が覚えたての男の本性を知るのは、まだまだこれからである。