never leave you(R)

二ヶ月ぶりの帰国。
清四郎は嬉々として出迎えた妻を直ぐ様押し倒し、思いのままに貪り始めた。

荒々しく脱いだスーツや下着が、ベッドの下へと乱雑に放り投げられる。
そのどれもが、一般人ならば目を剥くほどの値段だ。
だが、彼にとってはただの服でしかない。
この世のありとあらゆる贅沢に一番近い男は、今何よりも妻の身体を欲していた。

柄物シャツとハーフパンツ。
寛いだ格好の悠理を忽ち裸にすると、そのあまりにも美しい艶肌に、清四郎はゴクリと喉を鳴らした。

━━━━飢えを隠さぬ強欲な瞳。

悠理もまた、そんな夫を待ち望んでいたのか、自ら身体を開き、濡れた唇をねっとりと誘うように舐めあげる。
いつにも増して淫らな欲望に囚われている自分。
激しさを増す動悸が、まるでドラムロールのように興奮を高めた。

深夜0時。
剣菱邸における彼らの寝室。
花の香りが染み込んだリネンに包まれながら、清四郎の舌が慎ましやかな果実を集中的に弄る。
ゆっくりと食み、反応を確かめるようなぞれば、ようやくプクリと張り詰めた卑猥な突起が、彼の口の中で飴玉のように転がされてゆく。

「はぁ………ン」

軽く歯を立て、心ゆくまでその感触を味わっていると、必然的に洩れ出す甘い吐息。

久々のまぐわいは心を急かすのか。
焦らすことすら出来ず、 ザラリとした舌で執拗に舐めしゃぶる。
乱暴でも良かった。
妻は今、間違いなく歓喜の喘ぎを洩らしている。
清四郎はあらゆる舌技を使い、悠理を昂らせることに従事した。

「んっ………あっ、あっ、ゃんん…………っ!も、早く……欲しいんだってばぁ!あぁ……っ!」

涙する悠理はもどかしい身体をシーツに打ち付け、くねらせる。
まるでドロッと滴る、苺ジャムのような甘い声。

刺激を与える度に懇願する妻の官能的な声が、その都度、押し入りたいと願う清四郎を寸でのところで耐えさせた。

━━━━これが聞きたかったんだ。

ヨーロッパ各地を巡る出張。
新婚一年目の夫婦にとって、二ヶ月という期間は相当長く感じるものだ。
それでも、剣菱の顔として渡り歩く清四郎はその出張を断れなかった。

有り難いことに、悠理は母親の命で嫁としての教育を受けさせられている。
最低限のマナーと簡単な英会話。
彼女も25歳。
夫を持つ身として、それなりの教養と振る舞いを身に付けなくてはこの先不幸でしかない。

しかしこの出張で、清四郎は己の弱さと対面する。
厳しい修行に耐えてきたはずの精神は、存外脆かった。
朝、手を伸ばしても空を切る切なさに、何度も打ちのめされ続けた二ヶ月間。

悠理が側に居ないだけで、日々はこんなにも空虚なのか。

ぽっかりと空いた胸の穴。
冷えたシーツは心までをも凍らせそうで、清四郎はつくづく後悔した。

攫ってでもいい。
力づくで連れてくるべきだった、と。

交際してからというもの、こんな長い期間、二人は離れたことがなかった。
大学卒業後、資格取得の為、アメリカへと渡った清四郎だったが、それには悠理も同行していた。
無論、彼女は遊んでいただけ。
反面、清四郎は恐るべき早さで知識を吸収し、勉強の傍ら、起業家とのコミュニティを設立した。
若い頭脳を活かした次世代への取り組みに心血を注いだのだ。
それが剣菱の未来に役立つと信じて。

おかげで予定よりも少し延びた帰国。
二人は仲間達の祝福に背中を押され、無事夫婦へと辿り着いた。

清四郎は剣菱に入社。
海外事業部に籍を置きながらも、万作や豊作のアドバイザーとして役立っている。
夫婦関係ももちろん良好で、百合子は孫の誕生を今か今かと待ち望んでいる状態だ。

仲が良すぎるのも理由の一つかもしれないが、今のところ妊娠の兆しは見当たらない。

━━━━是非ともハネムーンベイビーを!

百合子がそう叫んでいたのは、半年も前のこと。
赤ちゃんについては、自然に任せると決めた二人。
今は、より刺激的な楽しみ方を見つけることこそが夫婦の課題だった。
基本、恥ずかしがり屋で天邪鬼。
しかしベッドの上では、比較的大胆に振る舞ってくれる悠理。
そんな彼女でも、電話越しの痴態は流石に抵抗があったのだろう。
時差を飛び越えた電話は日に二回。
清四郎が幾度となく強請ったものの、恥ずかしさが勝るのか、一度も応えてはくれなかった。

━━━せめて、あの時の声だけでも。

どれほどやらしく誘ってみても頑なに拒否され続け、欲望は募るばかり。
結局は美しき妻の肢体を脳内に再現し、下半身へと手を伸ばす毎日。
一人寝の寂しさに自慰の虚しさが加われば、夜はとても長く感じた。



「悠理………もっと聞かせてください。二ヶ月分には到底足りませんよ。」

「………あぁ……んんっ!」

待ち望んだ声に興奮が爆発する。
唇で激しく啜り上げながら、彼女の下半身を溶かしてゆく二本の指。
肉襞はすっかり充血し、小さな入り口からは止め処なく蜜が溢れだしている。
グチュグチュとわざとらしい音を立て、縦に揃えた指で襞の側面を小刻みに擦る。
あまりにも強い刺激に、悠理は甲高い声で啼き叫んだ。

「あぁっ!!!」

「これだけじゃ物足りないでしょう?どこを擦ってほしい?」

「ちがっ………せぇしろの………で、奥に………」

「僕の?指じゃなくて?」

激しく頭を打ち振る姿にそそられ、清四郎は更に勢い良く掻き回す。

「やぁっ!!なんでぇ!!」

「随分と焦らされましたからね。少しくらい意地悪したいんですよ。」

再び、チュゥと音を立て吸い付かれた胸の突起。
悠理は呼吸を荒くしながら喘いだ。
熱い粘膜の中で舐め転がされ、唾液ごと強く吸い上げられる強烈な快感。
秘所は瞬く間に痺れ始め、より激しく彼の昂りを望んでしまう。

「あん!!も、お願いだからぁ!せぇしろ……」

「おや………腰が揺れ始めましたね。悠理も僕が欲しかった?」

「あ、当たり前だろ!何回も何回も……やらしい電話してきたくせに………!あたいだって無茶苦茶我慢してたんだぞ?」

「そのくせ協力的ではありませんでしたが?僕はおまえの声でイキたくて仕方なかったんですけど。」

意地悪な笑顔と直接的な言葉に、悠理の子宮がキュンキュンと疼く。

「だって……んなことしちゃったら……あたい、我慢出来なくて、飛んで行っちゃいそうだったもん。」

「え?」

「電話の前で待ってるだけなんて、絶対無理だよ……。欲しくて欲しくて……家庭教師ぶっ飛ばしてでもおまえんとこ行きたくなっちゃう。」

それはきっと本音なのだろう。
悠理は紅潮した頬を見せつけ、そっぽを向いた。
あまりにも可愛らしい姿に、清四郎の限界もここまで。
猛り狂った欲棒を勢い良く悠理に突き立てる。

ヌチャリ……
澱みなく吸い込んでいく柔肉。

「あああっっ!!!」

「おまえは……本当に………………可愛い過ぎますよ…………」

粘膜同士の触れ合いに清四郎は我慢出来なかった。
そう多くの律動をしないまま、マグマのようにせり上がって来た白濁を思う存分吐き出す。
だがその後も、肉茎は衰えることなく悠理の胎内を擦り始めた。

「あ……あん……………気持ち……いい!」

目が眩むほどの快感に悠理は涎を流す。
さんざん甘い声を上げながらも頭を小さく振るが、完全にスイッチは入っている。

待ち望んでいた。
この時を。

快楽の涙が滴り落ちる滑らかな頬。
清四郎はそれを唇で吸い上げ、優しく囁く。

「朝まで……眠らせませんよ。おまえの胎内(なか)からどっぷりと溢れ出すまで、注ぎ込んでやりますからね。」

舌先でねっとりと頬を舐められ、悠理はあまりの期待から気を遠くした。
その悦びはどんなものにも代え難い。
しかし恍惚としている暇も無く、子宮口に届くほどの逞しい杭がグイグイと攻め立ててくる。

「ああ…んなことされたら………おかしくなりそ…………」

「ここは……僕にしか届かない場所です……誰一人として触れることが………許されない場所だ。」

「当たり前…………だろ…………はぁ……ん!」

奥へ奥へと誘うよう絡みつく極上の快感。
清四郎は静かに二度目の吐精をした。
そして今度は悠理の脚を両肩に掛け、再び猛々しい抽送を開始する。

「あああ!……ひっ……ん!」

力強い雄の動きで悠理を翻弄していく清四郎。
今の彼女は優しさよりも、この荒々しさを欲していると解るから。

きゅうっと締め付ける肉壁が、絶頂の予感を示している。

「ん…………せぇしろぉ……………………だめぇ!」

「悠理……イくのか?」

喘ぎ続ける事で可愛い声は掠れていた。
それでも悠理は「イく……イッちゃう……」と素直に知らせてくる。

「今度は……一緒に…………」

涙で真っ赤になった目が頷く。
反らされた柔らかな喉を清四郎の舌が強く舐め上げると、快感の火種が恐ろしい勢いで爆発した。

「いいっ……ああっ!もっ、もう……いっちゃぁ……ああ……っ!」

瞼に火花が舞い散る。
その一瞬後、清四郎もまた階段を駆け上がるように白い欲望を叩きつけた。


「……壊れちゃう……も……頭、馬鹿んなっちゃうよぉ……」

清四郎の責めは終わらない。
夜中三時。
一旦、シャワーを浴びた二人は、再び激しく交わっていた。
ベッドではなく、広々とした脱衣所で。

洗面台に腰掛けさせられた悠理。
洗ったばかりの秘所を、腰を曲げた清四郎の舌が舐め啜っている状況。
小さかった花の芽はその存在を主張し、真っ赤に充血させている。
悠理は涙目で顔を横に振りながらも逃げようとはせず、夫の行為をただただ受け入れていた。
足の爪先までもが快感に痺れている。

ピチャ……ズズ……

「ああ……美味しい。二ヶ月分、たっぷり飲ませて貰いますよ。」

湯船で、ある程度掻き出したとはいえ、よくもそんな場所を啜れるものだ。
悠理は朧気にそう思った。

それでもこの快楽を手放したくはない。
蜜洞がヒクヒクと反応する中、清四郎の濡れた髪を掻き毟る。

「は……ぁ……」

甘い溜息ばかりが零れる。
何度も何度も高みへと押し上げられ、その都度もう無理だと思うのに、たった数分で清四郎を求め、誘うように見つめてしまう。

「………やらしい顔だ。」

意地悪な表情。
笑い混じりのその声に、ぞくぞくとした痺れが這い降りていく。

もっと………もっと詰って良いから、気持ちよくして?

目は口ほどに物を言うのだろう。
清四郎はそれに応えるかのように近付き、そして官能的なキスを与えてくれる。
酸素を奪われながら唾液を注ぎ込まれ、粘膜の全てが舐め尽くされる心地好さ。
馴染んだ身体は清四郎でしか開く事は出来ない。

「あたいも……舐めたい……」

「有り難い申し出ですが……今日は結構。」

「なん……でぇ?」

とろん、と目尻を落とす妻は、あまりにも強烈な色気を放っている。
しかしその誘惑をなんとか振り切り、清四郎は宣言した。

「今夜は、僕がおまえのすべてを食べ尽くしたいんです。」

決して大袈裟ではないその台詞に滴る愛液はその量を増やし、悠理の限界が近付く。

「…………なら、もう、来て?お願い………」

誰よりも破壊力をもつ悠理の’オネガイ’。
清四郎は充分に濡れた舌でクリトリスをチュウッと吸い上げた。
そして細く長い足を両腕に抱え、まるで子供のように抱きかかえる。
鍛えられた筋肉が自然と隆起し、更なる熱を帯びた。

「いきますよ。」

「うん………あ………ぁ!!!」

狙いを定め一気に貫くと、しなやかな身体が過剰なほどに痙攣する。
身体だけではない。
雄のシンボルを柔らかく包み込む肉襞までもが、ざわざわと蠢くのだ。

そんな妻を折れんばかりに抱き締めながら、清四郎は彼女の呼吸が落ち着くのをじっと待つ。

「い、いきなり…………深過ぎるよ………気絶しそうだったじゃん。」

「むしろ、気絶させたいんですよ。」

冗談とも取れない言葉に悠理の頬は紅く染まる。
たとえ気絶したとしても、きっと清四郎は自分を貪り尽くすことだろう。
血の通った人形を揺さぶり続ける、そんな夫を想像し、悠理はゾクッと肌を粟立てた。

「僕のペニスで………何度でも気絶させてやりたい。快楽に狂うおまえが見たいんです。」

「っ!!」

真面目な顔で卑猥な単語をダイレクトに与えてくる夫。
あまりの羞恥に悠理は清四郎の首にかじりつく。

「おまえ………やらしいってば!」

「ふふ………確かに。悠理を前にするとどうやら本質が剥き出しになってしまうようだ。それほどおまえは魅力的な女なんですよ。」

「………魅力、的?」

「もう、片時も離れたくない。そう思えるほど、僕を狂わせている。」

清四郎は悠理の臀部に両の手を添え、強靭な腰で揺さぶり始めた。
下からの容赦ない突き上げに悠理は声無き悲鳴をあげる。
愛液が飛沫となり清四郎の脚を濡らす。
強力なバネのような動きは彼の欲望と比例し、あまりにも激しかった。

「ひっあ………あっ………あっああ!!」

胎内がぐちゃぐちゃに掻き乱され、悠理の口端からは涎が溢れる。
求められる快感に流されまいとしても体はあまりにも従順に啼き続け、悠理はとうとう自我を放棄せざるを得なかった。

「もっと………せぇしろ………もっとして!!あたいを………壊してぇ!!」

「あぁ………悠理、無茶苦茶にしてやる!」

互いを求めるボルテージは最大限にまで引き上げられ、二人はより密着しようと腰をくねらす。

「あ、ぁ……気持ち………いい!いいよぉ………せぇしろ、せぇしろ!おかしくなるぅ!!」

体をぶつけ合う度、涙を溢す悠理を、清四郎は眩しそうに見つめる。
たとえこの先どんな無理をしてでも、妻を離すことはないだろう。
喉がひりつくほどの飢えは、もう味わいたくない。

「愛してる…………ゆうりっ!」


そうして朝まで続けられた狂宴。
満たされた夫婦がようやく眠りに落ちたのは、メイドが朝食の案内を伝えに来た時だった。
もちろん泥の様に眠る二人を、優秀な彼女はそっとしておく。

一人、薫り高いモーニングティを啜る百合子が、「今度こそ孫が………」と期待したかどうかは謎である。