クールぶってるくせに
愛してる、なんて普段言わないくせに
夜───
清四郎は別人へと変身する
ズズッ…………ジュル………
啜り立てる水音には、いつまで経っても慣れない。
まるで儀式のように行われる、情熱的な愛撫。
唇を
舌を
指を
柔らかな粘膜に突き立て、恥ずかしさを忘れるほど、舐られる。
乱暴なようで繊細な動きが、あられもない声を導き出し、背中がしなる。
掻き立てられる欲情に、為す術は見あたらない。
・
・
・
「せ……ぇしろ………も………無理だよぉ。」
とろかされた場所へのねっとりとした舌遣いは、悠理の肌を粟立てる。
引き出される官能に耐えることは、未熟な身体にとって苦痛でしかないのだが、清四郎は容赦なく責め立て、喘がせ続けた。
「ふ………此処は………貪欲に欲しがっていますよ?」
涼しい声と共に、ヒクヒクと戦慄く柔襞へふぅと息を吹きかける。
彼の唾液だけではない滴りが空気に触れ、冷えた感触を与えるも、身体の芯は熱を持ち、どろりと崩れ落ちていきそうだった。
「やっと………熟れて来ましたね。」
ヌプッ、と卑猥な音を立て、長い指が侵入を見せる。
ひんやりとしたそれは熱い粘膜に覆われ、細くしなやかな形が、悠理の中でダイレクトに伝わった。
決して乱暴ではないかき混ぜ方。
甘い責め苦が続く。
そんな様子を具(つぶさ)に観察する彼の瞳はいつもの理性を封じ込め、爛々と輝いていた。
愛と欲情と、少しの嗜虐心。
清四郎のセックスは、悠理の全てを壊していくように激しい。
「ほら………僕を入れたくなって来たでしょう?」
グチュリ
卑猥な音を立て、二本の指が中で交差する。
溢れる蜜はすっかり中を解し、尽きることのない快楽が引きずり出される。
彼の言葉通り、悠理は悦びを感じ、求め始めていた。
恥ずかしくて言葉に出せない代わり、喘ぐ事でそれを伝える。
「ンッ………っや……あぁん!!」
普段の悠理からは予想もつかないほど艶のある声に、清四郎の興奮がグンと高まる。
「…………堪りませんね。」
涙目で訴えかけてくる愛らしさに、全ての理性を投げ売ってでも襲いかかりたくなるのは、男の本能をビンビンに刺激されているからだ。
舐めて
しゃぶって
甘噛みして
最後の一欠片すら飲み込んで────
溶け合う感覚は一体どれほどの恍惚を与えてくれるのだろう。
そんな狂気的な思いを封じ込めながら、清四郎は手早く欲望を取り出した。
着ているシャツを脱ぎ、スラックスの前だけを広げた形で。
ピンと反り返った肉茎を軽く指で扱き、白く細い太股に擦らせながら、糸を引くほど濃厚なキスを交わす。
震える背中は、悠理の感度がぐんぐんと上昇している証。
期待に満ちた目がじっとりと熱を孕む。
「悠理………」
熱い吐息を耳元で吐く。
「ほら………言って。どうしてほしい?」
片方の手で勃ち上がったしこりを摘まみながら、清四郎は甘く尋ねた。
求める答えは一つだけ。
悠理の素直な心が知りたい。
「………………意地悪、知ってるくせに!」
「ええ、知ってますよ。でも、おまえの口から聞きたいんです。その可愛い声で教えて下さい。“何”を“何処”に“どうしてほしい”のかを………」
「!!」
潤んだ目からは涙が零れ落ち、真っ赤な頬は顔全体に広がった。
激しすぎる動悸はすでに下腹部へと移動し、清四郎を待ち構えている。
どちらにせよ、押しつけられた大きな体からは逃げられない。
口を開閉させ恥じらう悠理は、か細い声で彼の望む言葉を放った。
「せぇしろの…………お◎ん◎ん………入れて?」
「何処に?どうしてほしいんだ?」
「あ、あたいの………あそこ………でいっぱい………擦って?」
気が遠くなるほどの羞恥は、悠理の興奮を誘う。
我慢できない、とばかりに侵入してきた男の顔もまた、忘我の境地に彩られていた。
重なり合い、激しく揺れる。
密着する肌がぬめりを帯び、淫らな息遣いすらもシンクロしてゆく。
限界にまで高まっていた神経を弾けさせるように、まずは悠理がエクスタシーを感じた。
それに続き清四郎が────
しかし一度でおさまるような興奮ではない為、すぐさま復活を遂げた肉で掻き回し始める。
胸に転がる快感がこだまのように響き、重なり、波に浚われるような感覚の中、悠理は溺れ続けた。
痙攣する身体に男の熱き欲望が出入りする。
いつも感じるのはその圧倒的な大きさ。
清四郎に開かれる身体は、自分でも驚くほど欲深い。
「あっ………ぁあん!………溶けちゃうよぉ…………………!」
悦に浸る悠理を見て、清四郎の腰は激しさを増す。
「気持ち……いい!あ………おかしくなるぅ!!!」
なんと美しい顔を見せるのだ。
清四郎は舌を延ばし、悠理の顔を舐め尽くした。
涙すらも甘く感じるこの瞬間。
劣情に染まる恋人の肌はどこもかも甘美なほど甘い。
一段と深い場所を突き始め、清四郎にも限界が訪れる。
ねっとりと溶けたその中へ、思う存分放出を重ね、脈打つ砲身が落ち着くのを静かに待った。
息を切らす悠理の唇へと何度も口付けし、唾液を啜り上げる。
半ば放心した横顔から熱が引いていくのを感じるも、それを残念に思ってしまい、再びキスをする。
「悠理………可愛かった。愛してますよ。」
「………変態。」
「興奮したでしょう?おまえも…………」
「………ふん!」
恋人になって早半年。
彼に慣らされていく体は自分でもそら恐ろしいくらいだ。
「もぉ………“あんな”こと言わない!」
「おや、もっとやらしい言葉を聞きたいんですけどね。」
「ば、バカやろ!アダルトビデオじゃあるまいに、言えるか!!」
「ふむ…………それはそれで参考にすべきかな?」
鼓動をおかしくさせる彼の発言に、悠理は思わず眩暈を感じた。
────あたい、えらい男と付き合っちゃったかも!
今更そんな事を知っても───後の祭り。
この先、悠理の人生が、彼の手中から離れることは決してないのだから。