He burned with jealousy.(R)

「な~んでデザートも食わずに帰るんだよ!あの店のスフレ、すんげぇ旨いって有名なんだぞ。」

左ハンドルの車内にて。
革のシートを少しだけ倒し、両腕で脚を抱えながらブツブツと不満を洩らす悠理。
そんな恋人をチラと一瞥しただけで、言い訳などするつもりもない清四郎は、夜の街道を真っ直ぐ走らせている。
二人は婚約して三ヶ月の恋人同士だ。
大学部に進学してすぐに交際を始め、一ヶ月経つ頃には親の強力な勧めもあり正式な婚約を交わした。
前回とは違い、菊正宗家のプッシュが強かった為でもある。
なんと半年後には、学生の身でありながらも結婚が決まっていた。

付き合うこととなったきっかけは、一つの些細な事件だった。
入学直後の新歓コンパ。
羽目を外し、盛大に酔っ払った大学生たちが、ちょっとした‘いさかい’で殴り合いの喧嘩を始めた。
それに巻き込まれる形となった悠理は、喧嘩上等とばかりに暴れ出す。
一見男に見えてしまう彼女に立ち向かう男達は、酒の勢いもあってか思いきり拳をふるっていた。
しかし悠理もまた、多少酔いが回っていたのだろう。
床に転がったビール瓶に足を取られ、派手に転んでしまったのだ。
それを見て意気揚々と馬乗りになった男は、悠理の襟元を掴むと、勢いのまま頬を殴りつける。
喧嘩慣れしている悠理とて、男の拳をまともに喰らっては堪らない。
呆気なく気絶したところへ、遅れて登場した清四郎は目を剥いた。

友人以上の感情を自覚し始めていた男は、目の前の惨劇に目が眩むような怒りを覚える。
そうして・・・気付けば騒ぎを起こした全員が、床に突っ伏した状態となっていた。
普段、理性的なはずの男の逆鱗。
それに触れてしまった学生達はもちろん病院へと直行する羽目になる。
全てが終わったあと、頬を腫らした悠理を抱える清四郎の後ろ姿にはやりきれない感情が溢れていた。
と、騒ぎに駆けつけた魅録は、後にそう語った。

その後━━━
清四郎は何かにつけて悠理の側を離れなくなり、三週間が過ぎる頃、彼からの告白で二人は交際を始める。

悠理がOKした理由は、『この男を怒らせるのはヤバイ』という、ある意味自己保身でもあったが、付き合い始めてからの清四郎はとても優しく、特にイヤミを言うことも無くなったので、まあいっかな?と軽い気分で交際を楽しんでいた。

問題は、驚くほどの独占欲と他の男に対する牽制だ。
仲間である魅録と美童は例外として、悠理に少しでも近付こうとする男への、非礼なまでに冷たい視線。
声をかけるだけでもその命を賭ける必要性があるほど、清四郎の嫉妬心は激しかった。
それと同時に、悠理への束縛の強さも比例する。

「いいじゃない、初恋なんだから。暫くは清四郎の好きにさせてあげなさいよ。」

可憐の他人事のようなアドバイスに、悠理は渋々頷いたが、元々自由を好む女である。
結局は何度も言い争い、その都度、清四郎は妥協せざるを得なかった。

「なんで、あたいを雁字搦めにしたがるんだ?」

「自分でも加減が解らないんですよ。初めての恋なもんで・・・。」

そう言われてしまえば、悠理も一方的に責めることは出来ない。
初めての経験に振り回されているのはお互い様なのだから。




車は大きな公園の側を走り始める。
この辺りは閑静な住宅街ということもあって、夜は全くといっていいほど人気がない。
清四郎は公園の駐車場に車を滑り入れると、そのままブレーキを引いた。

「ん?どったの?」

辺りをキョロキョロ見回しても、自販機があるだけ。
ここに停まった理由が分からない。
振り向けば、メーターの光が清四郎の表情を浮かび上がらせている。
既に見知った欲望の影をちらつかせ、悠理を真っ直ぐに見つめていた。

「あ・・・・」

逃げられるはずもない。
シートベルトはあっという間に外され、大きな影となり覆い被さってくる清四郎。
手慣れた仕草。
それが男の過去を感じさせるようで、悠理はいつも苦々しい気持ちになる。

「や、やだ・・・・こんなとこで・・!」

しかし清四郎は止まらない。
元々止めるつもりもない。
諸悪の根源であるドレスを引き裂くように脱がせると、荒々しい口付けを浴びせ始めた。

「んっ・・・ぁ・・・・・・ふっ・・」

力で敵うはずがないのだ。
乱暴に重ねられた唇と身体は想像以上に熱く、悠理の反論など簡単にねじ伏せられてしまう。
たっぷり口腔内を舐め尽くされ、与えられた唾液が口端から溢れ始めた頃、清四郎はようやく少しだけ身を起こした。
もちろん解放するつもりは、さらさらない。

「な・・・なんで・・・いきなり・・・・」

微睡む意識下で悠理はそう尋ねる。

「おまえのその姿を、挨拶に来たシェフが舐めるように見ていたでしょう?」

「え?」

「この美しい肩と背中を、あの男はまるで料理の素材を吟味するように見ていたんですよ!」

「んなもん・・・知るかよぉ・・・・」

「こんな格好をしてくるのは反則です。いつものおまえらしい装いはどうしたんだ?」

折角の一流レストラン。
悠理がいつもの格好で出かけようとした時、メイド達に「TPOは大事ですわ。菊正宗様を驚かせてあげましょう!」と促され、無理矢理着せ替えられたのだ。
それは剣菱のファッション部門が手がける新素材のドレス。
柔らかな質感と、高級感溢れる光沢が売りだった。
清四郎の言う通り、確かに露出は多い。
肩紐は細く編まれたビーズストラップで、襟刳りも大きく開いていた。
背中の中央まで露となったデザインは淡いイエローグリーン。
滑らかに輝く美しい肌が惜しげも無く披露されている。

清四郎はそんな悠理を見た瞬間、このデートを速攻でキャンセルしたくなった。
そしてすぐにでもホテルに連れ込んで、悠理の隠された部分をじっくりと曝きたい気分になったのだ。
だが、彼女が楽しみにしていたレストラン。
機嫌を損なうことは、やはりしたくない。

案の定、周りの客がチラチラと視線を投げかける。
当然、苛立ちが募っていく。
食事の味など、もはや二の次となっていた。

「せぇしろ?口に合わないなら食ってやろうか?」

『こちらの気も知らないで・・・全く。』

しかし、悠理が食べている姿はいつ見ても気持ちが良い。
大きな口でパクパクと、次々に胃袋へと消えていく珠玉の料理たち。

「これ、旨いぞ!ほら、食えってば!」

『僕が食べたいのはおまえだけだ。』

なんて言えば、きっと真っ赤になって怒り出すんだろうな。

悠理のワインは既に二本目。
清四郎は車の為、ノンアルコールビールで我慢だ。

酔わせて、焦らして、啼かせて、強請らせる。
酒でもないその飲み物ですっかり酔うことが出来るのも、相手が悠理だから。

清四郎は充分堪能していた。
美しい恋人を肴として・・・。
もちろんその腕の良いシェフが現れるまでのことであったが。



「ん・・・・ああ・・・・・だめだって・・・こんなとこで・・・」

「大丈夫、誰も来ない。」

「で、でも・・・・あっ・・・・つ、摘まむなよ!」

「悠理・・・・・おまえこそが僕のメイン料理だ。」

清四郎は二本の指で胸先を弄ぶ。
一度も見たことがないセクシーな下着もまた、メイドが選んで着けさせたものだ。

「やらしい格好をして・・・・。どんな風に感じてたんです?」

「な、何が?」

「色んな男の視線に晒されていたじゃないですか?気付いていたんでしょう?」

「んなの・・・しらな・・い!」

薄暗い車内でも判別出来るほど、悠理は頬を赤くした。

「嘘を吐け。本当は濡らしていたんだろう?今から確かめてやる。」

「そんなの・・全部おまえの所為じゃんか!」

悠理にとって、真向かいに座る清四郎の視線は相当に強烈なもので、料理に夢中になった振りをしなければ、ファブリックの椅子に大きなシミを作っていたことだろう。

「本当に僕だけの所為?ああ・・・やっぱり、こんなにも漏らして・・・はしたない女だ。許せませんね。」

ショーツの上からそっと撫でられただけでも、悠理の身は快感に震える。
清四郎は両脚を抱え上げ、その柔らかな身体を折り畳むと、自らはシートの下に膝をついた。
いくらツーシーターの外車で前が広いとはいえ、身長の高い清四郎はやはり窮屈そうに見える。

「せいしろ・・・やっぱ、家帰ろ?こんなとこじゃ・・・」

ホテルに行きたくても無残に破られたドレスがそれを不可能にさせる。

「なら、外に出ましょうか。」

「え?」

助手席の扉があっという間に開かれた。
こもっていた二人の熱が外へと排出され、代わりに涼しい風が入り込んでくる。
清四郎は悠理を抱き上げると外に出て、まだ温かい車のボンネットへと乗せた。
空からは大きな白い月が見下ろしている。
真っ黒な車体に悠理の艶めかしい身体が眩しいほど浮かび上がる。
邪魔な布は一切剥ぎ取られ、生まれたままのヴィーナスがそこに居た。

「おまえにはドレスなんて必要ありませんね。」

「・・・・スケベ。」

悠理は覚悟した。
どうせ気が済むまで解放して貰えないのだ。
それなら身を任せ、出来るだけ早く終わらせよう、と。
確かにここは外で、いつ誰が来るかもわからない。
しかし悠理は妙な興奮に包まれていた。
清四郎さえいれば・・・たとえどこだろうと安心出来る。
そんな長年の経験が身に染みついているからだ。

「悠理、自分で脚を開きなさい。僕に見せつけるように・・・・」

「!!」

「ほら、早く。」

素直に従う悠理に、清四郎はほくそ笑む。

「ああ・・・いいな。よく見える。」

濡れた場所に息を吹きかけ、そっと優しくキスをする。

「どうして欲しい?」

「え?」

「どんな風に感じさせて欲しい?」

「・・・・もっと、キスして?」

「どこに?」

「そ、そこ・・・・」

「キスだけでいいのか?」

恥ずかしそうに首を振った悠理は、それでも自らのはしたない欲求を口にした。

「な、舐めて欲しい・・・いっぱい・・・」

「ふ・・・・言えるじゃないですか。」

そう笑った清四郎は内股に指を這わせながら身を屈めると、甘く薫り立つその部分へとしゃぶりついた。

直ぐ様、淫らな音が響き渡る。
悠理の身体は見事なまでに反応し、ボンネットの上で跳ねた。
そんな彼女の腰をがっしりと抱え、清四郎は啜る音を立て続ける。
小さな花芽は期待にぷっくりと膨らみ、自己主張を始めていた。

「可愛いですよ・・・こんなにも素直な身体は見たことがない。」

「誰・・・と、比べてんだよ・・・バカ!」

「ああ・・・・悠理、僕はおまえに溺れてるんだ。解るでしょう?」

敏感に尖る先端を舌先で捏ね回し、更なる狂喜へと導く清四郎。

「ひぁ・・・・!あ・・・・・・っ、だめ・・・・・」

ひたすらに甘い官能がとろけだす身体を、悠理自身、もうどうすることも出来ない。

「あっ・・・ん、ああ・・・も、イッちゃう・・・せいしろ・・・」

「もう・・・・もうイクのか?」

「ん・・・ん・・・・・・ああ・・・・あ・・・・・・だめ・・・やぁ・・・・!」

月明かりに晒されながら呆気なく達した悠理を、清四郎は満足そうに見下ろす。

イッたばかりの女は何故こんなにも美しいのだろうか。

そこでようやく自分の昂ぶりに手を当てる。
スラックスの中で恐ろしく膨れあがったソレは、早く悠理が欲しいと懇願していた。
彼女を抱く時はいつも凶暴な雄が首を擡げ、滅茶苦茶に喰らい尽したいと本能が吠え始める。
それに抗い続けることは相当な精神力を使うが、傷つけたいわけではないのだから我慢を受け入れるしかない。
ずっと、そう思っていた。

しかし・・・今夜の自分はその歯止めが効かない気がする。

月の所為か?
はたまた嫉妬の所為か?

どちらにせよ、無事に家へと帰すことは出来そうも無かった。

絶頂に震える身体を抱き起こし、清四郎はボンネットから悠理を下ろした。
そしてくるりと反転させ、上半身を再び無機質な鉄の塊に押し付ける。

「あ・・・・や・・・せいしろ・・・・・・」

「・・・・・・入れますよ?」

チャックを下ろし、凶器と化したソレを取り出すと、清四郎は何の躊躇いもなく悠理に突き立てた。

「ああ・・・・ぁ!!!」

いくら濡れているとはいえ、衝撃は身体の中を走り抜ける。
いつもならもう少し探るように挿入されるはずなのに・・・・。
乱暴な切っ先が悠理の胎内を擦り上げると、全身の毛が足下からざわざわと逆立っていく。
それでも悠理は、清四郎の全てを受け入れていた。

「悠理・・・・・動くぞ?」

快感の潜むポイントに先端が当たる。
この男は自分よりも自分の身体をよく知っていて、どうしたら悠理が乱れ始めるのか・・・容易に探りあてるのだ。

「はっ・・・・・ひぁ、・・・・・・あん!」

挙動する身体を逃さないまま、意識してその襞を擦り嬲られる。
清四郎の淫らな腰つきは、悠理を再び悦楽の扉へと追いやっていった。

「もっと、声を出して・・・僕に聞かせなさい。」

「だ、駄目!・・・人が来たら・・・どうすんだ・・・よ!」

「誰も来ませんよ。こんな夜に・・・」

激しさが増す抽送。
悠理の乳首が、硬い金属の刺激でピンと尖る。
清四郎は腰を掴んでいた手を上半身へと伸ばし、敏感な先っぽをゆっくりと捏ね始めた。

「ああ・・・あ・・・・・や、だ・・・せいし・・・ろ・・・!」

「全く・・・・やらしい身体だ。」

「ちが・・う・・・!」

「何も違いませんよ。ほら・・・どうです?自分で見てみなさい。どれだけ勃ち上がってるか・・・。」

首を振りながら悠理は拒否する。
しかし、いたぶる指の力が急に強くなり、悠理は強制的に下を向かされた。
痛々しいほど大きくなった胸先。
清四郎がぎゅっと押し出すように潰している。

「こ、こんなことされたら・・・・・誰だって・・・」

だが指を離されても悠理の乳首は尖ったまま、微かに震えている。

「悠理・・・おまえは僕じゃなくても乱れるんですか?」

「んなの・・・解んないよぉ・・・・おまえ以外としたことないもん!」

「まさか・・・するつもりじゃないでしょうね?あんなにもあからさまなドレスを着込んで・・・男を誘惑して・・・」

清四郎はいまだにそんな言葉を口にする。
悠理は上半身を無理矢理捩ると、涙目で睨み上げた。

「馬鹿!おまえに褒めて貰いたかっただけだろ?知ってるくせに!」

「僕に?」

「そうだよ!いっつも言うじゃんか!『こんな場所で変な格好をして』って・・・・」

それは幾度となく行われて来た’からかい’。
確かに清四郎はそうすることで悠理を弄んでいた。
あまりにも可愛くて、本当は似合っていると思っていたのに、素直に口に出せない。
昔から、彼女のファッションを心から醜いと思ったことは一度だってないのだ。

潤んで揺らめく瞳。
清四郎はそこへと口付けし、ゆっくり身体を反転させた。

「そうか・・・僕の為に・・・・」

「うん・・・・」

「だけど・・・そんな気遣いは必要ありませんよ。僕を犯罪者にしたくなかったら、いつもの格好でお願いします。」

再びボンネットの上で脚を大きく開かれ、激しく穿たれる。
飛び散る愛液でぬめりを帯びた鉄。
ぬるい温度を感じながら声無き声を上げ、悠理は絶頂を迎えた。
しかし、清四郎は離そうとしない。
長い脚を肩に乗せかえると、より深く貫き始めた。

「ああ・・ゆうり・・・・・・おまえは僕だけのものだ・・・・・」

「ん・・んっ・・・・せいしろ・・・!」

逞しい肉棒は、悠理の奥襞を押し分け、さらに遠慮なく侵入する。
再びひくりと蠢く胎内。
もう、この快感から逃れることは、絶対に不可能なのだ。
麻薬のような男の抽送に、悠理はとうとう声を殺すことを諦めた。

「ああ、すごっ・・い・・・気持ちいい・・・ん・・・熱いよぉ!ああ・・・!いい!」

堰を切ったように溢れ出す素直な嬌声。
男はようやく痺れるような限界を感じ始める。
ぬちゃぬちゃと淫靡な音を奏でる結合部分が、白く泡立ってきた。
無意識の締め付けに、清四郎は中へと放出する準備を整える。
プルプルと上下に揺れる胸を鷲掴みながら、さらに荒々しいリズムを刻んでいくと、悠理が猫のよう細く啼き、呆気なく達した。

「くそっ!・・・・我慢出来ない!」

悔しそうな声と共に最奥にぶつけた切っ先。
長い長い放出に浸りながら、清四郎は悠理に覆い被さった。
細かい痙攣が、肌から直接伝わってくる。
訪れた深い快感に、悠理は意識を手放してしまったのだ。
ひくつく胎内はその名残だろう。

ようやく抜き出した性器を、足元に落ちたドレスで拭き取り、自らのジャケットで恋人を包みこむ。
すっぽりと包まれた細い身体がより一層愛おしく感じ、清四郎は青白い月に晒された顔を飽きることなく見つめていた。

後日・・・・

清四郎の嫉妬心がむしろ酷くなったかのように感じる悠理は、それでも彼を受け入れる。
たった一言、魔法の言葉。
それを耳元で囁けば、少しだけ緩和すると解ったからだ。

「一生、清四郎だけだよ。」

これを聞いた清四郎の顔は悠理だけの宝物。
もちろん出かける時は、上着を羽織ることを忘れない。