鉄製のノブはあっさりと回った。
鍵が開けられたままの部室。
中央に置かれた大きなテーブルには、二人分の鞄が隣り合わせに残っている。
魅録は族仲間との約束、美童と可憐はそれぞれの相手とデート。
そして野梨子は………僕たちを二人きりにするためか、ここ最近一人で帰宅している。
そんな分かりやすい気遣いにすら、遠慮なく甘えてしまうのも、この恋に盲目となっているが故。
解ってはいるのだ。
自分の稚拙さを━━━━
「……せぇしろ、こんなとこ……ダメだってば。仮眠室いこ?」
窓から射し込む淡い光は、羞恥に頬を染める彼女を余すことなく晒す。
「鍵もかかっていますし、誰も来ませんよ。」
「そんな問題じゃ……ぁ」
そわそわと窓の外を見つめる不安げな瞳。
誰かに覗き見されないか心配しているのだろうが、そんな勇気ある生徒は、ついぞ見かけたことがない。
「心配なら、おまえはそのままで……」
そう言って彼女の前に両膝を折る。
少しの乱れもない、規律正しいプリーツを持ち上げ、夏でも着用を義務づけられているタイツを爪で引っ掻けないよう慎重に下ろす。
露になった両脚の間から、ふわり、悠理の甘い香りがした。
僕はそれに心揺さぶられ、激しく欲情する。
初めて抱いた時に見た白い下着は、彼女の幼さと純潔を示していた。
固く閉じられた殻を破り、ひんやりとした肌に鮮やかな赤を記し、僕だけのものとしたあの日。
あれから二ヶ月。
下着の色は………淡いピンクへと変化している。
「悠理……少しだけ足を開いて?」
秘する場所などもう有りはしない。
身体の隅々までこの手でまさぐり、この口で味わい、そして全てこの鼻で嗅ぎ取った。
羽毛のような繁みが心地良く先端を撫でる。
欲深き舌を捩じ込み、彼女から溢れる甘い体液を啜る。
なんと芳しい━━━
もう何度味わったかも知れないそれを、僕は夢中になって体内に取り込んだ。
乾いた大地でようやく見つけた水脈に歓喜するかの如く、甘い蜜を啜り続ける。
「んっ、やっ……………っぁあ……」
塞がれた口から洩れる声は、艶めいている。
女らしさの欠片もなかった悠理の痴態は想定外の威力を発揮した。
そこには未だ見たことが無い『女』がまだ多く存在するようで、その全部を暴きたい僕は毎日必要以上に彼女を攻めてしまう。
泣かせて、啼かせて、哭かせて━━━
‘もっとおまえの全てを見せてくれ’……と懇願する。
「せ、せぇしろ……やっぱ、ここやだ。」
「━━━仕方ありませんね。」
グズグズ言い出した悠理に逆らうとろくなことがない。
多少残念に思いながらも、僕は彼女を抱きかかえ、仮眠室へと向かった。
入るなり鍵をかけ、彼女の不安を取り除く。
そこは六畳ほどの狭き空間。
誰が付け替えたのか、藍色の遮光カーテンは小さな窓からの光をしっかりと遮断している。
かといって真っ暗闇ではない。
部室とを仕切る扉の窓は磨りガラスの為、そこから柔らかい光が差し込み、狭い部屋をほんのりと照らしている。
シングルサイズのベッドはフランス製。
真新しいシーツがピシッと敷かれ、可憐が用意した花柄のブランケットがふわり、掛けられていた。
ロマンティックな彼女らしいチョイス。
そこに悠理を放り投げ、自らの制服を慌ただしく脱ぐ。
早く繋がりたいという気持ちが、ボタンを外す指にすら表れ、思わず自分を嘲笑いたくなった。
そんな僕を見て彼女もそろり、辺りを窺いながらスカートのボタンを外し始める。
「大丈夫。邪魔は入りませんよ。」
下着姿の悠理は真っ赤な顔で微かに頷くと、ブランケットの端を引き上げ幼き胸を隠し、日頃そこで大イビキを掻いて寝ている人物とは思えないほど愛らしく笑った。
「なんか、さすがに恥ずかしい。こんなとこでヤるって……」
「明日、皆の前で思い出して濡れてしまうから?」
「ば、ばかやろ!」
振り上げられた手首をすかさず掴み、あっさりと押し倒す。
彼女はいつもと変わらぬ抵抗を見せるが、僕の身体が覆い被さり、その重さを実感すると、まるで借りてきた猫の様に大人しくなった。
「もうおしまいですか?」
「ふん、どうせ勝てないもん。」
「そんなことはありませんよ。本気で抵抗されたら、僕だって怪我を負うかもしれない。」
「おまえが黙ったまま怪我するわけないだろ。どうせあたいなんか・・・・・一生清四郎には勝てないよ~だ。」
ぺろりと舌を出し、おどけて見せる悠理。
その表情に見慣れぬ諦めが見え隠れし、そんな‘らしくない’彼女の口をこれでもかと乱暴に塞ぐ。
押し付けるように唇を合わせ、無理矢理こじ入れた舌で柔らかい粘膜の全てを舐め取ると、腕の中の小さな悠理はふるふると震え出した。
「んっ………んふっ……」
鼻から洩れる吐息。
目尻から零れる涙。
徐々に溜まってゆく甘い唾液。
全てに激しい興奮を覚え、僕はさらにキスを深める。
肌と肌が触れ合う感触は極上。
滑らかな、まるでシルクのような質感の肌は、誰も想像だにしていないだろう。
水着姿など何度も見たことがあるというのに、こうして間近で目にすれば、あまりのきめ細やかさに驚いてしまう。
細い首には青い血管がうっすらと透けて見え、肌の白さを物語っている。
僕は唇でそこを舐め下ろし、浮き出た細い鎖骨にしゃぶりつくと、まずは一つ、キスマークを残した。
「んっ!」
小さく呻くほどの力。
白いキャンパスにヒトヒラの花が描かれる。
「僕の印ですよ。」
何度も言った台詞を口にして、彼女に教え込む。
━━━おまえはもう僕のもの。決して逃げられやしない。
どろりとした情欲に乗っ取られる快感。
それに抗おうとはしない自分を、遠くで見つめるもう一人の僕がいる。
唇と指で肌をなぞりながら、明らかに女へと変貌しつつある悠理を優しく昂らせてゆく。
胸は特に慎重に。そして優しく。
括れた腰は敢えて舌を使い、肌が粟立つまで舐め続ける。
「……っはぁ……気持ちイイ……せぇしろ………」
そんな素直な声を聞き出せれば上々。
更なる熱を送り込む。
形良いヘソを唾液で濡らしながら、ふわりと柔らかい恥毛をそっと掻き分ける。
するとプクリと飛び出した小さな宝石が、僕の愛撫を今か今かと待ち構えているようだ。
「相変わらず可愛い色と形をしていますね。」
「や………っ!んな感想いらない!」
「そう?僕に舐めてほしいと主張してますよ?」
ここでの快楽は存分に叩き込んだ。
何度も気絶させ、それでも手を止めず、赤く充血した花芽を啜り続ける。
矯声は悲鳴へ、そして懇願へと変わり、息も絶え絶えに僕を請うようになった。
怯えた表情で見つめる悠理はまるで子兎だ。
にやり、ほくそ笑む僕はわざとらしく舌をちらつかせながら、切ないほど敏感になったそこへ音をたててむしゃぶりつく。
「ああっーー!」
期待通りだったのか━━━━
悠理は腰を跳ね上げ、快感を示した。
僕の頭をかきむしりながら、声を乱し、喉を思いきり反らす。
コリコリとした小さな粒がこんなにも女を、悠理を翻弄するだなんて、人体とはまったくもって不思議なものだ。
舌が痺れるほど舐めつくした後、今度は唇で食んでゆく。
じわじわと襲い来る絶頂感に、彼女は涙を流しながら懇願し始めた。
「せぇしろぉ~、入れてぇ、も、お願いだからぁ!」
それをさらりと無視し、徐々に強く食み続ける。
時折軽く歯を立ててやれば、悠理は瞬く間にエクスタシーを引き寄せた。
「あああーーーーー!!だめぇーー!」
ビクビクと腰を痙攣させ、可愛く達した後も、流れ出る愛液を啜る。
甘酸っぱい蜜は喉を潤し、熱へと変化させてゆく。
限界まで硬くなった分身が、さっさと貫け!と催促する。
獰猛な感情。
それに支配される悦びが心の奥底から湧き上がる。
甘い恋愛に溺れたがる悠理は、まだ知らないのだ。
僕という男を………。
鋭い牙を持つ、荒ぶる獣を。
先走りをぬちゃりとまぶしつけながら、惚けた顔を見つめる。
涙が真っ赤な頬を濡らし、口端からは涎が溢れていた。
それを唇で吸い取った後、耳元で優しく囁く。
本性を隠した小さな声で………
「たっぷり感じさせてやりますからね。」
悠理の目が期待に見開かれる。
僕は余裕めいた表情を作りながら、欲望を突き入れた。
馴染んだ肉壁をこれでもかと掻き回し、最奥を目指す先端で前後左右に揺さぶりながら、もがく腰を更に引き寄せる。
「ひぃっ…………!あ、だめ!あぁ!!せーしろぉー!!」
━━━━ほら、もっと啼け。
もっともっと、強く欲しがれ。
おまえは僕だけのもの。
僕だけの小兎だ。
徐々に現れる獣欲が身体をコントロールし始め、痙攣する悠理をとことん貶める。
━━━━あぁ、悠理。
僕をこんな男だと認識させたのは全部おまえのせいです。
汗でしっとりと濡れた肌に、衝動のまま噛みつく。
手首から腕へ。
首へ、そして胸へ。
彼女が痛みに眉をひそめても、止めることが出来ない。
可愛くて、食べてしまいたいほどの欲求が溢れ出す。
そんな不可能な現実の代わりに、こうして彼女を汚してゆくのだ。
「っふ………悠理、そろそろいくぞ?」
「あ……ぁん………せぇしろ!せぇしろぉ!」
「ほら言え!どこに出して欲しい?」
「あたいの中、中に…出して!んむっ………!」
乱暴に唇を塞ぎ、舌を絡めながら、激しく腰を振る。
━━━まるで繁殖期の猿だな。
そう自嘲しながらも、痺れるような陶酔感が頭の奥に押し寄せてくると抗えない。
ヒクつく最奥で全ての欲望を解き放つ。
自分でもぞっとするほどの夥しい精液。
ピルを飲ませていなければ、直ぐにでも妊娠するだろう。
じんわりと痺れる腰を彼女に押し付けながら、ゆっくりと獣を鎮めてゆく。
朦朧とした悠理の前髪を掻き上げ、こんな男に付き合ってくれた感謝を込めて優しく接吻する。
隠れていた愛しさが込み上げる瞬間だ。
「大丈夫か?」
「ん。」
全ての汗を拭った後、並んで彼女の肩を抱く。
存外細い身体なのだ。
本当はもっと大切にしなくてはならないのに、僕はいつも欲望に負けてしまう。
「こんな風に抱かれて、嫌じゃないですか?」
「え?」
「………自分でもちょっと強引過ぎるなとは思ってるんです。でも歯止めが利かなくて、どうしても無茶苦茶に抱いてしまう。」
こんな懺悔など、今更何の意味も無いだろうに。
ただの自己満足でしかない。
「そ、そりゃ………怖くて、痛いときもあるけど、でも……………最後に必ず優しいキス、してくれるから……別にいいよ?」
ポッと頬を染める姿に罪悪感が擡げるが、この際、彼女の懐の深さに甘えるとしよう。
「優しいキスなら何度でも。」
赤く潤んだ穢れなき瞳で見つめてくる小兎。
草食獣の仮面を被った男は、再び感謝の接吻を彼女へと落とした。