爽やかな朝の光差し込む、剣菱家の一室。
そこには結婚一年目の若夫婦がすやすやと眠っている。
元は令嬢一人の贅沢な部屋。
ヨーロピアンテイストだったそこを、結婚を機に大改造し、機能的かつスタイリッシュな内装へと生まれ変わらせたのは、もちろん婿となった清四郎の功績である。
無駄なヒラヒラも限りなく減った。
もちろんベッドだけは天蓋付きで、それは清四郎も気に入っている為、何も言わない。
六時半。
彼は自然と目を開く。
独身時代は五時起きが当然で、早朝からの鍛練が日課であった。
しかし新婚の今、その習慣は崩れつつある。
胸に抱き寄せた新妻の寝息に心地良さを感じながら、「あぁ、そうだ。今日は休みだったな」とほくそ笑む。
健康的な男のシンボルを、一糸纏わぬ(纏わせぬ)妻の尻の割れ目に擦り付け、お世辞にも爽やかとは言えない朝の目覚めを促し始める。
━━━夕べは帰宅が遅くて手加減しましたからね。こいつも物足りないでしょう。
三回戦に及んだそれを、彼は手加減したと言い張る。
普段の夫婦生活が偲ばれる発言だ。
「……ん………っ」
いくら寝汚い悠理とて、凶器の様な硬さのソレで何度も擦られては目が覚めるのだろう。
熱くて硬い、清四郎のシンボル。
逃げることなど到底不可能。
執拗に追い求める夫から、逃げ果せた試しは過去一度としてなかった。
「おはよう、悠理。」
「………………おはよ。てか朝から元気だな。」
「今日は仕事もありませんからね。二人きりの時間をたっぷりと楽しみましょう。」
耳を優しく食まれながら告げられる宣誓。
悠理は小さな溜め息を吐きながらも、彼の欲望を結局は受け入れた。
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剣菱家の朝食は家族揃って、が基本。
万作、百合子は遅れてきた若夫婦を優しく迎える。
「おはようございます。お待たせしました。」
「おはよう、清四郎ちゃん、悠理。」
「なんだべ?悠理。朝からそげな顔して。」
疲労困憊の彼女は「腹減ったんだよ」と倒れ込むようにテーブルに突っ伏した。
ぐうぅと鳴り響く腹の音。
目の前に並べられていく普段より品数の多い朝食は、休日でゆっくり出来る清四郎の為、シェフが気を利かせたものだ。
ひじきの煮物。
椎茸と竹の子の含め煮。
焼き魚は、のどぐろ、金目鯛、時しらず……と、どれも産地直送の新鮮な素材ばかりである。
家で放し飼いしている烏骨鶏の卵で作られた出汁巻きは、万作も手放しで喜ぶ一品だ。
「清四郎ちゃん、最近、仕事はどう?」
百合子が香り立つ珈琲を手にし、尋ねた。
「そうですね。車関係はアメリカより新興国の方が良い伸び率を示しています。特にタイ、マレーシアあたりはすごいですね。」
ガツガツと飯を掻き込む悠理は、澄まし顔で仕事の話を始めた夫を呆れたように見つめる。
『母ちゃんたちは知らないもんなぁ。真面目面したこいつがほんとはめちゃくちゃスケベ人間だってこと。』
もちろん知られたくもないが、悠理は静かに溜息を吐く。
体力自慢の彼女を朝からヘトヘトにさせてしまうほど、彼の精力は日に日に増幅している。
結婚してからというもの、何か妙なスイッチでも入ったのか、毎晩のように激しい行為を求められていた。
悠理も決して嫌いではないため、文句も言わず付き合ってはいるが、こうも毎晩続くと疲労はどんどんと蓄積される。
(はぁーあ。あたいも本気で修行すっかな~)
唯一誇れる体力も、最近の清四郎には敵わない気がしている。
ストイックそうに見える彼は実のところとても欲深く、余りある好奇心を満たすため、どれほど淫らな体位でも躊躇うことなく試す。
そこにきて負けず嫌いの悠理。
彼女もまた、まるで挑戦状を受け取るが如く、果敢に対峙するのだが………。
しかしここにきてようやく、微かな疑問を感じ始めていた。
(一般的な新婚夫婦って、こいつが言う通り、これが当たり前なのか?)
洗脳されている彼女に正しいアドバイスする者は、もちろん皆無だ。
いつもはお節介な可憐ですら、清四郎の恐怖政治に口を噤んでいる。
(みんな、すげぇよ。それとも新婚だと気持ちが盛り上がっちゃうもんなのかな?)
清四郎が新婚初夜に告げた言葉。
それは━━━━
「蜜月期である一年間は、毎晩のようにセックスするのが当たり前です。そうして夫婦の強固な絆を築きあげ、長い人生を共に歩むんですよ。」
わかったような、わからないような説明に、お馬鹿過ぎる悠理はコクリと頷いた。
もちろん十中八九嘘である。
しかし存外素直な彼女は、大好きな清四郎と人生を全うしたいが為、特に疑問に思わず、言われるがままに身体を開く。
彼の思惑はただひとつ。
自分との行為に溺れさせ、一年後に出来上がるであろう、淫らで従順な妻の完成形を手に入れたいだけ。
涼しい顔の下で欲望渦巻く夫の本性を、彼女はまだ半分も知らない。
一通り仕事の話を終えた清四郎は、妻の頬に付いたご飯を摘まみ、ぱくりと自分の口へ放り込む。
「あらあら。仲の良いこと。」
「母ちゃん、おらにもしてくれ!」
「馬鹿おっしゃいな。」
ピシャリと断われ落ち込む万作に、側に立つ五代は苦笑いで見逃した。
・
・
・
「清四郎!今日はどっか飯いこーぜ!最近流行りのピザ屋があるんだけどさ!」
食べたばかりだと言うのに、また食事の話。
呆れ顔の清四郎だったが、ここでそれを告げては何かと夜に差し障る。
直ぐ様にっこり笑うと、「いいですね。お付き合いしますよ。」と妻のご機嫌をとった。
結婚後も、悠理は特に変わらない。
互いの気持ちに気付いてまだ一年弱。
コトを急いだのは、彼女を逃がしたくないという強い思いからだった。
以前とは違い、婿入りを申し出たのは清四郎。
━━━ 一生、この家で悠理を守り続けて行きます。
その覚悟を喜ばぬ万作たちではない。
諸手を挙げ、彼の真摯な心意気を受けとる。
「孫の顔はもう暫く先でもいいですか?必ずお見せしますから。」
そう付け加えた若い彼の思惑を、百合子は確実に読み取った。
ともあれ二人は大学卒業後、仲間たちの祝福と共に盛大な式を挙げ、夫婦としての第一歩を踏み出す。
清四郎は当然のように剣菱本社へ。
悠理は百合子の手ずから‘レディ教育’を叩き込まれていた。
最近では、簡単な英会話も出来るようになっている。
海外からの来賓が多い剣菱家では、言うに及ばず必須項目だ。
▽
▼
▽
「悠理。このあと僕の買い物にも付き合ってください。」
具だくさんのホールピザを難なく平らげた悠理は「いいじょ?」と頷く。
「何買うんだ?」
「車です。」
「車?」
剣菱家は送迎車で移動、が基本だ。
そのために腕利きのドライバー・名輪が存在する。
「清四郎ってドライブ好きだっけ?」
「これから必要になるんですよ。」
にっこり微笑む夫に隠し事があることくらい、彼女とてさすがに気付く。
悠理は興味津々で机に乗り出した。
「何?」
「聞きたいんですか?」
「うん。」
体裁を整えるよう咳払いした清四郎は、改めて口を開く。
「実はひとつ別荘を買う予定なんです。毎週末とまではいきませんが月一くらいで通えたら、と思いまして。」
「へぇー!どこどこ?」
「軽井沢ですよ。菊正宗の親戚が手放した、風情ある平屋建てです。安くで譲り受けることにしました。」
「ゆ、幽霊屋敷じゃないだろーな!?」
「まさか。過去に殺人、自殺、自然死すらありませんよ。」
それを聞きホッとする悠理だったが、夫が何故かニヤニヤしているのを見て、訝しむ。
「何笑ってんの?」
「僕が何を考えているか………分かりますか?」
「え?」
妻の口元に付いたトマトソースを然り気無く指で拭った清四郎は、ニヤリと意味ありげに笑う。
そして周りの喧騒に紛れるほどの小さな声で、彼女の耳元に答えを囁いた。
「この別荘を僕たち二人だけの愛の巣にしたいんです。」
それを聞いた途端、ポンと音を立て弾け、まるでトマトのように赤く染まった妻を、この上無く可愛らしいと彼は思う。
「ベッドは最高級の物にしましょうね。」
「ば、ばか!周りに聞かれるだろ!」
「誰も気にしていませんよ。」
焦る悠理の手を握り、スキップするほど軽い足取りで店を出る清四郎。
目指す先は高級ドイツ車のディーラーだったが、悠理が隣接するマセラティのスペシャルモデルに釘付けとなった為、急遽、予算変更を余儀なくされた。
━━━━全く………金のかかる女です。
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・
清四郎が言った通り、そこは趣のある日本建築で、周りは竹林に囲まれていて、どこよりも静かに感じた。
もちろん悠理にとっては退屈な場所なのだが、先程から清四郎が何故か上機嫌な上、行く道々でのおやつを制限せず買ってくれた為、文句は言えない。
「へぇ、良い感じじゃん。あ、庭も広い。」
「石庭は少し手入れしましたが、部屋はほとんどそのままですよ。とても状態が良かったので助かりました。」
石畳の玄関を抜けた後広がる、平屋特有の高い天井、大きく区切られた40畳ほどのそこがメインのリビングダイニングだった。
中庭からの穏やかな陽射しがまんべんなく注ぎ込み、桧の床を白く輝かせている。
アイランド型のキッチンは前の持ち主のこだわりなのか、すべてがドイツ製。
艶のある黒い鏡面のパントリーが壁一面を覆い、オーブンや食洗機、冷蔵庫などを隠すようにデザインされている。
「食材は管理人さんが日々届けてくれるようです。あ、それとお酒もね。」
「酒!?もしかして地酒?」
「そうでしょう。この辺りは水も綺麗だし、美味しいお酒が飲めますよ。」
小躍りする妻を見ながら、清四郎は荷物をほどいてゆく。
四日間の休みが奇跡的に取れたのは、義兄、豊作氏の心遣いだった。
「せぇしろちゃん!あたい中庭でBBQしたい!」
指差す先にはこれまたヨーロッパ製の立派BBQコンロが備え付けられている。
聞くところによると子供が大きくなって、あまり家族で集まることがなくなったそうだ。
数回しか使用していないそれは、新品同様の輝きを放っていた。
「なら管理人さんたちも呼んで楽しみますか。」
「そうこなくっちゃ!」
食べる専門の悠理が指を鳴らし、夫の背中に抱きつけば、清四郎は軽々と背負ったまま、ベッドルームへと足を運んだ。
「ここが寝室。バスとトイレも扉の向こうに併設されてます。」
「あれか?新しいベッド。」
「さすがにベッドは使い回したくありませんからね。」
木目が美しい楢の木のフローリング。
そこは真新しいキングサイズのベッドと壁一面のクローゼットがあるだけの、一見シンプルな部屋だが、奥に続くバスルームは御影石で作られた豪華な半露天風呂で、夜になれば見渡す竹林が幻想的に光輝くよう工夫されていた。
「うわっ、ふっかふか。良いベッドじゃん!」
「早速使い心地を試してみますか?」
「え、あ、いや…………もちっと後で!」
「はいはい。」
━━━まったく、可愛い奴です。
慌てて飛び出していく妻を、邪な夫は嬉しそうに追いかけた。
▽
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▽
BBQは盛況に終わり、後片付けを済ませた二人はリビングのソファでごろりと寛いでいた。
L字型のそれはグレーのファブリック素材。
二人してカラフルな丸いクッションを枕代わりに寝そべる。
こんな風にリラックスした夫を見ることが出来るのも、纏まった休日だけ。
仕事から解放された彼が纏う空気感は、悠理にとって好ましいものだった。
「なぁ、もちっとお酒飲もっか?」
「おや、飲み足りなかったんですか?」
「食べんのに夢中になってたからさ。ビール二本分くらいしか飲んでないよ。」
「ふむ。」
清四郎はソファから立ち上がると、そのままキッチンへと向かう。
管理人が届けてくれた山芋と天然山葵で手早く摘まみを用意し、冷えた地酒と共にリビングへ戻ると、悠理は待ってました!と手を叩いた。
夫の然り気無い気遣いと手際の良さには常々感心させられている彼女だが、今夜は特別優しい気がする。
ちょっとした下心くらいなら目を瞑るのが良策か、と悠理は一人納得した。
清四郎は用意したぐい呑みを二つ並べると、トクトクと音を立て、注ぐ。
瞬間、華やかな甘い香りが広がり、悠理は待ちきれないとばかりにそれを飲み干した。
「ぷは~っ!旨い!」
「女性好みの柔らかな酒ですな。」
「ん、物足りない?」
「そんなことありませんよ。」
言ってお代わりをするのだから、確かに気に入ってはいるのだろう。
鮮度の良い山芋と、擦り立て山葵の絶妙な刺激も相まって、気付けばどんどんと杯を重ねていた。
「うふふ………あたいも大人になったよなぁ。」
「食の好みが変わってきましたか?」
「うん。それにこんな渋い別荘も悪くないって思い始めてるし。」
「それは僕と一緒だからでしょう?」
「…………まぁな。」
「素直でよろしい。」
ほろ酔い加減の悠理はとても素直だ。
普段は照れてそっぽを向くような質問にもきちんと答えてくれる。
清四郎は満足そうに頷くと、酔いに染まった妻の頬を優しく撫でた。
「悠理。」
「ん?」
「僕と結婚して良かった?」
「あ………ぇ、えと………当たり前だろ?」
「後悔していませんか?」
「してない!な、なんだよ、急に…………」
酔いが覚めた目で睨み付けるが、清四郎の表情は穏やかで………………
「いつも忙しくしていて……悪い。本当は昔みたいに構ってやりたいんだが、なかなかそんな時間も取れなくて………。ここを買ったのも、お前のためだけに時間を作りたかったんだ。」
目から鱗の告白に、
━━━━エロいことしたかっただけじゃないのか?
とも言えず、どぎまぎと視線を泳がせる。
そう言えば今日はとことん優しかったな、と思い出し、悠理は夫が本音を語っていると信じた。
「別に……そんなにも寂しくないじょ?そりゃあ、長期出張とかは詰まんないけど、他の日はだいたい遅くなっても帰ってくるじゃん。朝も一緒だし、ご飯もちゃんと食べるし、…………だから……大丈夫。」
「悠理………」
清四郎の長い腕はすっぽりと悠理を覆った。
抱き慣れた感触。
嗅ぎ慣れた香り。
決して小さくも弱くもない妻が、自分の腕の中ではか弱く存在し、甘えた姿を見せてくれる。
それがどれほどの悦びを清四郎に与えているか、彼女は知らないだろう。
「好きだ………悠理。」
「せぇしろ…………」
「おまえの為なら、どんな事でもしたくなる。」
心からそう願う夫へ、悠理はキスを贈る。
「なら…………………抱いて?清四郎が望むように、抱いて?」
熱に冒された四つの瞳。
二人はソファに雪崩れ込むと、再び唇を重ね、激しいキスに溺れていった。
▽
▼
▽
四肢を絡め合い、言葉少なく肌を貪る。
男の唇と舌は、女の身体を舐め回す為だけに存在し、その指先はただひたすら快感を呼び起こす。
可愛い妻を愛撫する夫は、最後の布を剥ぎ取ると、大きく開かせた脚の間に顔を埋めた。
とろとろに溶け出した肉は熱く、舌先に感じる柔らかさが彼を受け入れようと準備し始めている事がわかる。
「いい香りだ。」
鼻先を擦り付け、何度も息を吸い込む。
そんな行為は恥ずかしいというのに、しかし悠理は否とは言えなかった。
丹念な愛撫は恍惚とした世界を見せてくれる。
彼の舌を感じる秘裂は、自分でも分かるほど大胆に開かれていた。
彼を受け入れる小さな穴からは、きっと溢れんばかりの蜜が零れ、その端正な唇を汚していることだろう。
「いつまで経ってもおまえのここは綺麗だな。」
可憐な花を彷彿とさせる慎ましやかな性器。
しかしひと度清四郎を迎え入れれば、貪欲に啜り立てる食中花へと変化する。
清四郎はぐい呑みに残っていた酒を口に含むと、悠理の腰を大きく持ち上げ、上から被さる様な形でクンニし始めた。
「ひゃっ…………!何?」
ひんやりとした液体は膣内にこそ入らないが、徐々に粘膜を熱くしてゆく。
ジュルッ………
塗しつけた酒を旨そうに啜る清四郎は、硬く尖らせた舌で快感の芽をいつもより強めに捏ね回した。
「ひ………ぃん!!」
悲鳴と共に鋭くしなる身体。
燃えるような熱さを感じ始めた秘所が、夫の舌で立て続けに甘く責められる。
━━━━━酒のせい?
ドクドクと脈打つのは心臓ばかりではない。
子宮辺りが激しく動悸する。
何かを求めて…………。
その‘何か’は言わずもがな清四郎だ。
欲しくて欲しくて堪らない。
身悶える愛撫よりも、多少痛みを伴おうが、彼が欲しい。
みっちりと肉で埋めつくされ、身体ごと揺さぶられながら、深い快感を追い求めたい。
ありとあらゆる手管で感じさせようとする夫は愛しいが、今は直ぐにでも一つになりたかった。
「せぇしろ……も、入れて欲しいよぉ。」
涙目で懇願されては、清四郎とて我慢の振り子が弾け飛ぶ。
しかし名残惜しさに軽く歯を立てられた円らな実は、悠理を軽い絶頂へと誘った。
「はぁ…………ん!!」
「挿れますよ。」
待ちきれないとばかりに、悠理はコクコクと頷く。
散々舐られたそこは高い熱を持ち、もう清四郎の物でないとその疼きに耐えられそうもなかった。
「せぇしろ………」
何度も入り口を擦り付ける夫へ、呼び掛ける。
「うん?」
「今日は………ちょっと乱暴にして?」
「乱暴?」
「うん………出来れば奥でイキたい。」
「分かりました。」
悠理の望みは全て叶えてやりたい。
清四郎は猛々しく反り返る男根を遠慮することなく、ずぷりと奥深くまで突き刺した。
瞬間、悠理は歓喜に咽ぶ。
腰が勝手にずり下がり、更なる密着を試みる。
どう思われても良かった。
はしたなくても、淫乱でも、何でもいい。
清四郎の逞しい杭に貫かれ、あらゆる場所の襞を擦られ、ジンジンとした痺れに身を任せたかった。
「すごいな…………溶けそうなほど熱い。」
「せぇしろぉ!動いて!!も、はやくぅ!」
焦らされて悦ぶ余裕は一欠片もない。
悠理はせっつくように腰を揺らめかせ、彼を奮い立たせた。
「可愛いですよ、悠理。なんて愛しいんだ。」
「あ………ん、好き、せぇしろ、好きぃ!」
最初からトップスピードの律動が、悠理の箍を外す。
口からは清四郎への愛が溢れ、逞しい背中を抱き締めた腕は汗に濡れる。
清四郎は悠理の唇を奪い、わざと酸欠状態にさせた。
喉の奥近くまで舌を差し入れ、舐め回す。
唾液を注ぎ込むことで、全てを自分色に変えたいと願うのは男の本能だ。
「ん、ん、ん………っ!!!」
限界まで高められた身体は、例えようもない快感を奥底から呼び起こす。
これこそ、彼女が望んだもの。
身体が溶けていくようなエクスタシーはこうした限界状態から生まれるのだ。
「んんんんん!!!!」
肉茎の先端がゴツゴツと快楽のポイントに当たる。
悠理の視界はキラキラと輝き、やがて真っ白に塗り替えられていく。
清四郎は収縮する胎内に思う存分体液を放った。
それもまた悠理の望むものだと知っているからだ。
放心した妻から身を起こせば、ヒクヒクと手足を震えさせている。
清四郎は額の汗を拭い、ピンと立ち上がった胸先へしゃぶりついた。
「あぁ………んん!やぁっ!」
余韻に浸る悠理は目を見開く。
彼は決して萎えてはいない。
━━━━━まだまだこれからですよ。
そんな風に目で合図し、再び激しく腰を繰り出す清四郎。
ヌチャヌチャと卑猥な音を立て、吸い付く結合部分は、このままずっと離れなくてもいいとすら思ってしまう。
「あ………いい、…………すごく気持ちいい。狂っちゃう!」
強弱をつけたピストンが悠理の理性をどんどんと壊し始め、それを感じた清四郎は彼女の両腕をしっかりと押さえつけたまま、強靭な腰で膣内を抉る。
清四郎の持続力は半端ではない。
悠理はそれを知っているからこそ、何度でも絶頂を追い求めることが出来るのだ。
「………いく、イクの!あ、も、助けて、あぁ……!」
二度目の悲鳴は涙声。
清四郎は満足そうに笑うと、直ぐ様三度目に向けて悠理の身体をひっくり返した。
腰の抜けた柔らかな肢体が、ソファに沈みこむ。
汗に濡れた背中を彼の指でなぞれば、ヒクヒクと官能的な反応を示す。
「本当におまえは可愛い。僕はとても幸せですよ。」
そう言って再び動き出した清四郎に、悠理も掠れた声で呟いた。
「あたいも……………幸せ………」
背後から穿たれたまま、悠理はソファに唾液の染みを作る。
形の良い尻を鷲掴みにする夫は、淫らな腰使いでそんな妻の思考を奪い、どんどんと悦楽の世界へ追い込んで行く。
「悠理………ほら、もっと僕を呼んで。」
「せぇしろ?」
「そう。僕を好きだと叫びながらイきなさい。」
長い手を前から差し入れ、ピンと勃ち上がった花芽を容赦なく摘まむ。
「や………ぁん!!」
「おやおや、こんなにも膨れて………待ちきれなかったんですね。」
コリコリと摘ままれ、恥ずかしい声を散々上げてしまう自分が、悠理はどうしようもなく焦れったかった。
「好きぃ……せぇしろ………大好きだから………また、イカせてぇ!!!」
「可愛い声だ………興奮しますよ。」
包皮を剥いたそこを執拗に引っ掻き、揉み込みながら、清四郎は律動に激しさを加えていく。
際限なく溢れ出す愛液が潤滑油となり、滑らかに動く彼のペニスはありとあらゆる快感の場所を擦った。
悠理の身体は彼に全てを知り尽くしてされている。
こうなればもう、たった一つの事しか考えられない。
「あ……ふ……ンッ!ああ…………っ!!」
清四郎の動きに合わせ、悠理もまた動く。
どれほど淫らだろうが、はしたない行為であろうが、彼女は一刻も早く三度目のエクスタシーを感じたかった。
「気持ち…………イイ!!せぇしろ!あああ!!!イクぅ………!」
大きな快感が二人の全身を同時に包み込む。
絶妙な収縮を見せる悠理の胎内に抗えるはずもなく、清四郎もまた、波に合わせるかのよう、腰を震わせた。
生暖かい感触がじんわりと広がり、悠理は無意識に彼を締め上げる。
「くっ……!」
吐精後の敏感なソレが与えられた甘い刺激にひくついてしまい、清四郎は思わず声を洩らした。
まだ抜きたくはない。
この優しい微睡みを感じていたい。
みっちりと蓋をされた状態で悠理の身体がソファに崩れゆく。
それを追い掛けるよう腕で距離を測りながら、清四郎はやんわりと覆い被さった。
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▼
▽
気付けば二人は眠りこけていた。
深く繋がったままで……。
悠理が目覚めた時はもう朝日が上る時間だったが、いつものように纏わり付く腕を押し退ける事もせず、ぼんやりとローテーブルの上に並べられた酒や摘まみの残骸を見つめる。
彼の常人離れしたアレはすっかり硬さを取り戻し、無意識なのだろう、背後から悠理を優しく揺らしていた。
「……ほんと、敵わないや……」
けれどそんな夫を心から愛している。
もしかしたら一生敵わないのかもしれないが、それももうどうでもよくなっていた。
「ふふ、ま、いっか。」
悠理が求めたのは’強い男’。
もちろん性欲に限らず、だ。
多少腹黒いところもあるが、彼以上に悠理を満たす男は居ない。
きっとこの先だって現れることはないだろう。
「さ、もうちょっと寝よ。」
求められる新妻にとって体力温存は必須項目。
悠理は薄明かりに染まる部屋を美しいと感じながら、そっと瞼を閉じた。