四十八手の一つ━━━ 絞り芙蓉
好奇心旺盛な二人は、日々その柔軟な躰を使い、新たな体位を試している。
「は……ぁん………せぇしろ、も、胸ばっかダメぇ。」
「ダメ?嘘を吐いてはいけませんよ。本当はもっとして欲しいくせに。」
穏やかな言葉攻め。
コリコリとした感触の乳首を、親指と人差し指で摘まむように弄ぶ清四郎。
薄紅色だったはずのそれは、立て続けに与えられる刺激で赤く色付くも、彼はその手を止めようとはしない。
「やっ……苛めんなよぉ!」
「苛める?まさか。僕はおまえを可愛がっているだけです。ほらこんなにも美味しそうに勃ち上がって………食べて欲しい、そう訴えているんでしょう?」
悠理の体を傾げ、胸へと顔を近付けた清四郎は、その淫らな果実にねっとりと舌を絡め、摘み取った。
まだ成長途中である乳房の先端から、鋭い快感が走り抜け、悠理は華奢な背中を大きくしならせる。
口内に含まれた尖りが、生暖かい舌先で何度も捏ねられ、先端の窪みが優しくくじられる度、悲鳴と共に跳ねる身体。
チュプ………チュパ……
そんなわざとらしい音を立てながらの愛撫は、僅かな羞恥心をも奪い去っていく。
「ひん……っ、あっ、あぁ……気持ちいいよぉ!」
「美味しいですよ。最高のキャンディだ。」
言いながらも、彼のもう片方の掌は性感を高めるよう体のラインをゆっくりとなぞり、遂には期待に濡れる秘所へと忍び込んでいった。
「あっ……ん……両方なんて、やだ!」
「これが良いんですよ。快感が分散されるでしょう?焦れったさに悶え苦しむおまえが僕を堪らなく興奮させるんです。」
「意地悪、あ…………っん!」
吐息を奪うような激しいキスが送られ、悠理は言葉を飲み込む。
清四郎は震える舌を甘く貪りながら、とめどなく蜜を滴らせる花芯をやんわりと拓いていった。
そして、指がふやけるほどに浸っている事を確かめた後、か弱き花芽を繊細な指先で捏ね、ぷっくりと膨らみを見せたところで、それを軽く弾く。
「ひぃいい………んっ!!」
そんな乱暴な刺激は、むしろ苦痛でしかない。
悠理はのたうちながら絶頂を迎え、くたりと脱力した。
「まだまだですよ。」
興に乗ったのか、清四郎は嬉しそうに微笑む。
悠理は逃げようとする腰をしっかり押さえられたまま、ひたすら与えられる享楽に喘ぐのみ。
「せぇ………しろぉ、それヤダぁ!」
「ほら……もっと可愛く啼きなさい。」
涙を流す悠理は小刻みの痙攣を繰り返す。
更なるエクスタシーが彼女を襲い始めているのだろう。
清四郎はキュッと摘まみ上げたクリトリスを左右に優しく揺らし、逃れられない刺激を与えた。
「ああっあぁ……!!!」
瞬間、吹き上げる汗と広がるフェロモン。
甘い香りに誘われ、どくりと集まる下肢への血流。
我慢など出来ようはずもなかった。
「今すぐ、挿れてやりますからね。」
快感に喘ぐ悠理を前にすれば、取り繕った冷静さなど直ぐに剥がれ落ちる。
清四郎は天を指した屹立を軽く扱き上げると、濡れそぼった秘裂にやんわりと滑り込ませた。
━━━━早く、彼女の蕩けるような中を確かめたい。
ぬるぬると擦りながら、小さな穴をこじ開けるよう先端を押し込む。
温もりと柔らかさが同居するそこは、何度味わっても素晴らしく、油断すればあっという間に達してしまうほどの具合の良さだ。
「あ……ぁっ………か、かたい…………」
「悠理……もう少し、力を抜いて。」
背後から首筋に流れる汗を舐め、彼女の身体をほぐしてゆく。
と同時に膣への侵入は深くなり、彼の宝刀は見事美しき鞘に収まった。
「はぁ……気持ちいい。」
「せ、せぇしろ……中で………ビクビクしてるよ。」
「あぁ、このまま動かなくてもイケそうだな……。あまりにも良すぎて……」
「うそ!?」
「おや、ダメですか?」
そんな彼の意地悪に悠理は膨れ面を見せ、腕にかぶりつく。
「……………ヤダ。動いて?あたいもおまえので気持ちよくなりたいから。」
「いい子です。」
彼の律動は初っぱなから激しかった。
悠理の体重など物ともせず、強靭な腰を繰り出す。
「あっ………あっあっ!!」
跳び跳ねる身体をしっかりと固定され、奥深くを抉られる。
悠理はもはや清四郎の玩具であった。
「せ、せぇ………きもち……い…………」
息も絶え絶えにそう告げれば、男は喜びを体現するかのようにスピードを上げ、敏感な肉襞を余すとこなく擦りたててゆく。
「ひっ……も、もう、あ………いっちゃうよぉ!」
粘着質な音が耳に届く中、せり上がる息苦しさ。
それは絶頂への道標で、後はもう…………快楽の渦に身を任せるだけ。
「悠理………言って。どこにほしい?」
そんな悠理の痴態に清四郎も我慢など出来ない。
熱をもった耳朶をしゃぶりながら、艶のある声で尋ねる。
「あ……………ぁ……中、中に………欲しい!せぇしろの熱いの………ちょ……だい!」
「ええ………たくさん出してやりますよ!」
瞬間、子宮を目指し噴射される白き欲望。
侵食される胎内はそれでも悦びにうち震え、悠理は目眩く快感を手にする。
何度も叩きつけるような射精に、肚の奥底がじんわりと温まっていく。
悠理の大好きな愛しき感覚。
清四郎は彼女の肩甲骨に何度も口付けた後、挿入したままの体勢で立ち上がると、重力を感じさせない様子で緩やかに揺さぶり始めた。
「あ………うそ!………あぁっ!!!待って!」
あれほど欲を解き放ったというのに、彼の肉茎は少しも衰えてなどいない。
見事な張りを保ったまま、女を串刺しにしていた。
「待ちません。………いつものように気を失うまで感じさせてやりますからね。」
瞬間、ドロッとした愛液が欲棒を包み込む。
そしてそんな悠理の期待に応えようと、清四郎の動きが激しさを増していく。
泡立つ体液。
快感に飛び散る涙。
彼らは夜通し愛欲に溺れ、気付けば空は朝の清浄な白さに包まれていた。
悠理は残っている体位の数を思い浮かべたまま、とうとう気絶するように眠ってしまう。
いくら人並外れた体力の持ち主とはいえ、清四郎の執拗なセックスに太刀打ち出来るはずがないのだ。
ぴくりとも動かぬ悠理の横で、清四郎は手にした四十八手本に目を通す。
「ふむ。次は『立ち松葉』なんかもいいですな。」
付箋を貼り付け笑う、そんな彼の淫らな欲望は尽きることを知らない。