Non stop(R)

出掛けた先は、海に面したコテージ型の宿泊施設。
道中のドライブで散々飲み食いした挙げ句、辿り着いた場所でも焼き肉を5人前ほど平らげ、至極ご満悦な様子の悠理。
そんな彼女を、清四郎は涎を飲み下しながら見つめていた。

片思い歴一年。
想いを受け入れられてから三ヶ月と三日。
彼はこの期間、女性と夜を過ごしてはいない。

無論、欲望に負けるようなヤワな鍛え方をしていない。
寺で行われる特別訓練に積極的に参加し、こみ上げる煩悩を一刀両断、断ち切っていた。

だが、心の奥底では悠理が欲しくて堪らなかった。

────この日をどれほど待ちわびたことか。

蓄積し続けた欲望は、もはや自分の手に負えないのかもしれない。
それを解放することは清四郎に一抹の不安を与えていた。

一体どこまで優しく出来るのだろう。
まるで飢えた獣が獲物を喰らい尽くすが如く、野蛮な行為へと成り下がってはしまいか?
悠理を怯えさせる結果になりはしないか?

彼女を誘う時、清四郎は平静さを装ってはいたものの、本当は手が小刻みに震えていた。
彼らしくもない正攻法。断られる事への不安と絶望が覆い被さってくる。

唇を噛み締め待つこと20秒。
悠理が「別にいいけど。」と呟いた時、あまりの歓喜から思わず叫び出しそうになった。
かといってポーカーフェイスは崩さない。
いつもより低い声を使い、耳元で囁くと、悠理はポッと頬を染めた。

「早く相性を確かめたいな。きっと僕たちは誰よりも上手くいくと思いますよ。」

焦がれた女がやっと手にはいるのだ。
その興奮は推して計るべし。

「はぁ~、食ったー!」

高揚する清四郎には気付かず、部屋に入るなり大の字でベッドに転がる。

「やっぱ肉は良いよな!」

その姿はいつもの彼女。
子どものようなはしゃぎぶりだ。
ギリギリまで昂ぶっていた欲情が、ほんの少しだけ落ち着く。

「ジャグジーがあるみたいですよ。」

「あ、ほんとだ。」

海が見えるテラスには光を溜め込んだ円形型のジャグジー。
全室スイート仕様の為か、デッキテーブルには冷やされたシャンパンが用意されていた。

「わーい!酒があるじょ!」

起き上がり、一目散に飛びつこうとする悠理は、しかし背後から力強い腕で引き戻される。

「うわっ………!」

「もう………我慢出来ません!」

ガシッ
腰骨が痛むほど抱きつかれ目を剥くが、その力は緩まない。

「焦らさないでくれ。」

喉の奥から絞り出る、切なさと苦しみが入り交じった咆哮。
忘れていた現実が突きつけられ、悠理はたじろいだ。

「焦らしてなんか………」

「もう、三ヶ月も待ちました。心づもりが出来たからここに来たんでしょう?」

「そ、そだけど………」

表情こそ見えないが、清四郎の切実な想いが皮膚から伝わってくる。

らしくもなく、呼吸が荒い。
清四郎もきっと、ドキドキしてるんだ。

そう感じた悠理は抱えていた恐れを、少しだけ緩和させた。

「と、とにかく……風呂には入りたい。」

「一緒に?」

「い?一緒はやだ!!」

「残念。」

そっと解放された後、悠理は慌ててベッドから飛び降り、清四郎との距離を開く。
心臓は早鐘をうっている。
顔はリンゴよりも真っ赤だ。

「じ、じゃ!」

そう言って脱兎の如くバスルームを目指すも、足がもつれて思うように走れない。

───ただ、抱きしめられただけなのに!

この先の不安と覆い被さるような緊張に、血圧はグングン上がりっぱなし。
一瞬で目が覚めるほどの冷水を浴びても、そう簡単に下がることはなかった。



「…………やっぱ、断りゃよかったかな。」

髪から滴る水滴が、足元に敷かれた白いバスマットに染み込んでゆく。
壁に両手をつき、頭を下げたまま自問を繰り返しても、誰も正しい答えなど教えてはくれない。

────勇気が足りない。たったそれだけのことだ。

荷物から取り出した下着は、挑戦的なほどロマンスに溢れている。
その『やる気』しか感じさせないデザインは、若い店員の一押しだった。

「腹、括んなきゃ、な。」

フリルがあしらわれた薄いショーツに足を通した後、無きが如き胸を可能な限り寄せ上げて、ブラジャーの効果を最大限に引き出す。

「B………くらいには見えるか?」

それは希望的観測でしかなかったが、悠理はいつもよりほんの少しふっくらとした双丘に、背中をドンと押された気がした。

「よし!行くぞ!」

パジャマ代わりのTシャツを被り、いざ!
しかしベッドルームへ戻った途端、何故か上半身を露わにさせている清四郎を見て、そんな意気込みが萎む。

「な、な、なんで、脱いでるんだ!!」

「僕もシャワーを浴びるつもりですから。」

「こんなとこで脱ぐな!」

「何を焦ってるんです?裸じゃありませんよ。」

見慣れているはずの逞しい肉体に焦りを隠せない。
これからする行為の生々しさを見せつけられた気がして、神経がビクビクと震えてしまう。

「は、早く行けよ!」

半ば追い出す形で清四郎をバスルームに促した悠理。
彼の足音が消えるや否や寝室から飛び出し、冷やされたシャンパンのコルクを乱暴に抜いた。
テラスに流れる潮風はひんやりと心地良い。

─────シラフなんかでやってられっか!

ゴクゴクと音を立て、喉を潤す。
一杯、二杯、三杯。
あっという間に空になった瓶を、泡立つジャグジーへと沈め、側にあるデッキチェアに腰かける。

誰か教えてくれ!本当にセックスなんてしなきゃなんないのか?
子供を作るわけじゃなし。
別にしなくても仲良くやっていけるんじゃないのか。

だからといって───あたいも興味だけはあるんだよな。
痛いのはヤだけど、いつか気持ち良くなるみたいだし。
清四郎は相性が良さげだって言ってたけど………そんなのどうやって分かるんだろ?

広がり続ける漠然とした不安。
それでも清四郎に求められる事は嬉しくて、胸がキュンキュンする。

「………あいつのあんな声、初めてだ。」

先ほどの切ない声を思い出せば、自ずと呼吸が荒くなり、下腹部に熱がこもる。
火照る頬は決してシャンパンの所為だけではない。
上がり続ける血圧で脳の血管がぶち切れそうだった。

ジリジリと昇る得体の知れない感覚。
それが欲望だと気付かないまま、悠理は夕暮れ時の藍空を眺めた。

「此処にいたんですね。」

バスローブを羽織る清四郎に安堵の色が浮かぶ。

「ごめん。シャンパン一気に飲んじゃった。」

「良いんですよ。何ならお代わりを頼みますか?」

ジャグジーに溺れる空の瓶を拾い上げると、その銘柄に目を細める。
ヴィンテージもののシャンパンは、市場でもなかなか手に入らない逸品だ。

「悪くない酒です。」

「ん。旨かった。おまえも飲みたいなら………頼めばいいよ。」

気まずく目を逸らせば、清四郎が一歩ずつ近付いてくる。

「僕は………もっと良い酒に酔いたい。」

「…………え?」

抱き上げられた、と気付いたのは暫く後のこと。
軽々とベッドまで運ばれ、シーツの柔らかさを肌に感じた時だった。

「さっきは、逃げられたかと思って…………心臓が一瞬止まりましたよ。」

心底ホッとした表情を見せる清四郎に悠理はくすぐったい思いを抱く。
子供っぽい孤独は母性本能が擽られるのだ。
だからつい優しい言葉が出てしまう。

「バカだな…………逃げないよ…………」

逃げたって………どうせ追ってくるくせに。
たとえ其処が地の果てであろうと、清四郎は必ず見つけ出すだろう。
心の叫びが届いているかのように。

「…………悠理、愛してます。」

「うん…………」

額にキスが下りてくる。
濡れた前髪と共に。
するとあれほど胸を騒がせていた波が徐々に落ち着きを取り戻し、微睡みの彼方に放り投げられたような感覚に陥った。

当初、清四郎は優しかった。
時折、ドキッとするほどの色気で見つめられるも、恐る恐る肌に触れる指や唇は羽のように軽く、それはあくまでソフトな感触だった。
だが、持ち上げられたシャツの中身を見た途端、彼の目がギラリと光る。

「………っ!」

声無き声は一瞬だけ。
むしゃぶりつかれたのは其の直後だった。
デザイン重視の勝負下着はグイッと持ち上げられ、ホックは呆気なく外れる。

「あっ!!」

抵抗する暇もなかった。
清四郎は胸の頂を捉えると、がむしゃらに吸い付いてくる。
まるで人が変わったかのような激しさを纏わせ、音を立て始める。
熱い粘膜が、痺れるような刺激と共に与えられ、悠理の目は眩んだ。

「はっ………ゆう……りっ!」

ショーツはもっと呆気なかった。
彼の大きな手が野蛮な動きでそれを取り去ってしまう。

「あっ、やっ………」

今や、身体を隠す布は一つも見当たらない。
悲鳴は喉の奥に絡み、ただなすがままの自分が不思議で仕方なかった。

「綺麗です………綺麗だ………!」

情熱に掠れた声が心臓にまで届く。
激しく打ち鳴る鼓動。
濡れた前髪が悠理の柔肌を這いずり回り、その感触にすらぞわぞわとした快感を覚えてしまう。

おかしい!
あたい、おかしいよ!

頭を振りながら、悠理は飲み込まれないよう必死に耐えた。
しかし彼の手はとうとう未開通の花園へと辿り着いてしまう。

ピクリ

涙を溜めた瞳でそっと見下ろせば、紅く尖った蕾の向こうに清四郎が見える。
彼は大きく広げられた脚の間に存在し、それはとてもじゃないが現実とは思えない光景だった。

「……………やだ、見るなよぉ。」

懇願する声は悉く裏切られ、わざとらしいまでにゆっくりと指が擦り始める。
滑りを帯びた襞を確かめるようゆっくりと。

「濡れて、ますね。」

それがどういう意味か、悠理には解らなかった。
けれどきっと恥ずかしい指摘だと感じる。

「や、や、せぇしろ…………」

「美しいですよ。まるで………蜜を湛えた花のようだ。」

ツプ……
音を立てて忍び込んでゆく無骨な指先。
暴かれるのは心じゃなく体だ。

「や、なんか、怖い………」

異物感を訴えると、彼は少しだけ困ったように笑った。

「大丈夫………力を抜いて……」

入り込んだ指が探るような動きを見せる。
いつの間に溢れていたのだろう。
とろりとした蜜が掻き出され、くちゅくちゅという卑猥な音が悠理の耳へと届いた。

「あっ………やだぁ……」

顔が熱くなる。
今、自分が置かれている立場は酷く窮屈で、それなのに抗えない現実は悠理を激しく戸惑わせる。

「柔らかい………きっと大丈夫だ。もっとリラックスして。」

生々しい指の感覚。
清四郎の熱い吐息。
声は蕩けるように甘く、悠理は言うことを聞くため、少しだけ強張りを解いた。

「そう……ちゃんと気持ちよくしてあげますから。」

中で蠢く長い指が、とあるポイントを攻め始める。
まるで全てを知っているかのような動きに、異物感だけではない妖しい感覚が目覚め始め、悠理はビクビクと脚を震わせた。

「んっ!!」

「ここ、ですね。」

ピチュ……クチュ……

膣内を満たす愛液が更なる音を奏で始める。
それは未知なる快感。
悠理の未成熟な身体を軽々と凌駕する刺激だった。

「ひ……ぁ……ん!」

「もう、こんなにもトロトロだ。」

痙攣し続ける脚の間に、清四郎は躊躇うことなく顔を埋める。
繰り返される振動に加え、濡れそぼる秘唇に舌を密着させると、その衝撃は悠理をパニックに陥れた。

「あっあっ………や、やだ、やだぁ!!!」

全てを見られているだけじゃない。
味までをも確かめられているのだ。
啜り始めた淫靡な音が、悠理の常識をどんどんと覆していく。

これがセックス?
こんなことを皆、しているのか?

あまりの気持ち良さに死んでしまいそうだった。
止めて、と許しを乞いながらも制御できない体はがくがくと腰を震わせ、よがり声を上げさせる。

「ひぃ……ん!!」

何度も何度も入り口を舐められ、そしてとうとう小さな花芽にかぶりつかれる。

「ああぁ!!!!」

────隣室にまで届くのでは?
それほどまでの嬌声を聞いても、清四郎は止めようとしない。
悠理はただひたすら彼の黒髪を掻き毟り、逃げ惑うように腰を振る。

気がおかしくなる───!

そう思った瞬間、苦痛ともいえる快楽が全身を攫い、意に反する形で弓形となった身体は清四郎の顔に強く押しつけられた。

ピシャ………

吹き出す潮が、数回に分けて彼を汚す。
しかし清四郎はそれを拭わず、ペロリと舌で舐め上げた。

息があがる。
どんなスポーツよりも遙かに。

悠理は半ば放心状態で、虚ろな視線を彷徨わせた。
清四郎の満足そうな表情が飛び込んでくる。

「まだまだ…………これからですよ。」

小刻みに痙攣する恋人を捕らえたまま、再び口淫を施し始める男。

「あ………ぁ………」

掠れた声に耳を貸そうともしない。
もはやなすがままの状態で、悠理は彼の舌技に溺れた。

夢ではない────
これは紛れもない現実。

それから一時間もの間、初な身体は弄ばれ、絶頂を叩き込まれた悠理はとうとう意識を手放してしまった。



口移しで水を与えられた時、悠理はそこがホテルであることを忘れ、弾けるように起き上がる。
辺りを見回し、そして清四郎を見た後、自分の置かれている立場をようやく思いだした。

汗だくだった身体はタオルで拭われており、乾いたバスローブが羽織らされていた。
清四郎の表情からは、先ほどまでの狂気が感じられない。
まるで憑き物が落ちたかのように穏やかだ。

「………せぇしろ。」

「声、掠れちゃいましたね。」

────誰の所為だ、誰の!!

しかし、悠理は憤りを晒け出す事は出来なかった。
清四郎は悪びれず、今度は最初から深いキスを求めてくる。

「さっきは…………可愛かったですよ………。もっと………もっと感じさせてやりたい。」

途切れ途切れに甘く告げられながら、バスローブをするりと落とされる。
息が上がるほどのキスの後、ふと身体を見下ろせば、そこには先ほどまで気付かなかった、無数の赤い痕跡が残っていた。

「わっ、なんだ!?これ!」

「僕のものになった証です。」

「証ぃ?病気みたいじゃんか!」

「誰に見せるわけでもないでしょう?」

紅い花弁を愛しげになぞったその手に再び押し倒され、呆気なく天井を見上げる羽目に。
枕元には虚しく置かれたフリフリの下着。

────ちぇ。折角選んでもらったのにさ。

そんな不満にも気付かない清四郎は、小さな膨らみに夢中の様子だ。
寄せては揉み解す、といった行為を繰り返している。

「ちっちゃくて………幻滅してない?」

「いいえ………おまえもちゃんと女らしい体つきだな、と感心してるんですよ。ここも…………とても敏感ですしね。」

「ひゃん!」

張りつめた先端を指で弾かれると、子犬のような声が飛び出す。
そんな自分の素直すぎる反応に戸惑う悠理は、真っ赤になりながら清四郎を睨んだ。

「…………スケベ野郎。」

「当然です。一体どれほど待ち焦がれたことか………。簡単に繋がるのが惜しいくらいですよ。」

引っ掻くように何度も弾かれ、その都度、悠理は背中を震わす。
清四郎はそんな姿を心から楽しんでいるのだ。
追い詰められた獲物の如く、ビクビクと怯える様を。

きゅっと摘ままれた先端に、わざと舌を見せながら唇を押し当てる。
そんなやらしい光景が悠理を辱めると知っていて、彼は何度もそれを行った。

「あっ……んっ…………」

そこだけではない、下半身を覆うような快感が波となって襲い始め、自ずと脚を擦り合わせてしまうのも、全て彼の計算の内なのだろう。
思考が蕩け始めた悠理は、ようやく清四郎が隠し持つ興奮の証に目を留めた。

それは見事なまでに反り返った、雄々しきシンボル。
まるで生き物のようにドクドクと脈打っている。

───ひぇぇ!!!

声無き声で怯える悠理を、清四郎が気付かぬはずもない。
不敵な笑みを零すと、わざとらしくその杭を押し当て、腰を揺らめかせた。

「や、やだ…………」

硬くて、熱い、禍々しさすら感じる存在を、まるで誇示するような動き。
熱が急上昇し、逃げ惑うも、そう易々と離してくれる男ではない。

「………気持ち、いいですね。」

感嘆の溜息が零れる。
恍惚とした瞳が恥じらう悠理を捉え、よりいっそう楽しむかのように、清四郎はそれを繰り返した。

濡れた先端が白い腿を汚すも、 興奮の雫を抑えることは出来ない。

「そろそろ準備は出来たかな?」

「…………え?」

「僕を受け入れる準備がね。」

つ………と這う指は太股の内側をなぞる。

「解りますか?ほら……こんなにも濡れている。」

気付かぬ内に新たな蜜を零していたらしい。
見せられた長い指は確かに透明な粘液を纏っていた。

「あ………」

───とうとう、か。

悠理は覚悟を決め、唾を飲み込んだ。
先ほど目にした清四郎のモノは、想像よりも遙かに大きくて、長かった。
もしかすると相当痛むのかもしれない。
出血を伴って───

「………い、痛すぎたら、止めてね?せぇしろちゃん。」

「………考えておきますよ。」

それは暗に止めるつもりはないという意味。
清四郎は、不安げな顔を見せる悠理の脚を大きく持ち上げると、その中心へ静かに先端をあてがった。

「ひ………」

熱い高ぶりは直ぐに伝わってくる。
清四郎の体温と同じ灼熱の───

「息を吐いて………そう、いきますよ。」

グググと押し広げられる感覚は初めてのもので、どうしても緊張が走る身体を、清四郎は片手で押さえ込んだ。

「狭い…………な。」

ズルズルと侵略していくその姿を、まともに見られるはずもない。
悠理はギュッと目を瞑り、痛みに耐えるよう唇を結んだ。

「っくぅ…………っう…………」

焼けつくような熱が狭い筒に広がっていく。
どうしても洩れ出てしまう声と涙。

「悠理、悠理……………………僕を見て。」

焦がれるような声で囁かれ、悠理は恐る恐る目を開いてみた。
落ちた前髪からは美しい瞳が覗いている。
いつもの余裕がない清四郎の…………。

「せ………しろ?」

「愛してる…………おまえをすごく愛しています。」

こんなコトをしているのに、
こんな間抜けな格好をしているのに。
清四郎の言葉はあまりにも真摯で、胸の奥までしっかりと届いた。

涙が次々に溢れる。
痛みの所為ではなく、感動故の涙。

清四郎の全てを受け入れた悠理は、彼の肩にしがみつき、柔らかな抽送に耐え続けた。
すると貫かれる圧迫感よりも、痺れるような甘い感覚が全身を包み込んでくる。
頭の芯がぼんやりと霞み、宙に浮くような浮遊感が広がっていく。

「あ……せぇしろ…………あぁ……」

抽送がスムーズになったことを確認した清四郎は、少しだけ強めに剛直を押し込んでみた。
ヌチュリと音を立て出入りする太き杭。
泡立つ蜜が互いをより密着させてくれる。

「馴染んできましたね……。やはり僕たちは相性が良いようだ。」

「あっ!!!」

しっかりと繋がる互いの下肢からは、恥ずかしい水音が絶え間なく聞こえてくる。
悠理は力なく首を振り続けるが、清四郎の動きはさらに野蛮なものへと変化していった。

「ひぃ……んん……ん!」

「もう……少しです。……ああ、ゆうり…………、中が絡みついてきて、気持ち良いですよ……」

我武者羅に腰を繰り出す清四郎の声など、悠理の耳には届いていない。

初めてだというのに。
痛みはすっかりと消え去り、代わりに生まれて来たは意識が飛んでいきそうなほど真っ白な快感。

「あ、うそ…………、や……やぁ!!!」

「ここ?悠理、ここですね?」

一転、小刻みに腰を揺らし始めた清四郎は、緩慢に回しながら弱点を探っていく。
熱くぬめった膣襞が無意識に絡みつき、清四郎を飲み込もうとしていた。

「はっ…………ぁ、も、おかしくなるよぉ…………」

汗でびっしょりの額へキスを落とし、再び激しい動きで揺さぶる。
可愛く啼き続ける悠理。
彼自身も限界を迎えていた。

「あ、あんっ……ひぅっ!!」

抱え上げていた脚がピンと硬直する。
その瞬間、収縮した膣内に思いの丈を注ぎ込む。
何度も腰を震わせ、白濁を浴びせつける。
ハクハクと口を開く悠理に舌を捻じ込みながら………………

こうして長年抱いてきた彼の邪とも言える想いは、ようやく実を結んだのだ。

たった一泊のお泊まりデート。
しかし、清四郎が悠理をベッドから出す事はなかった。
唯一用を足す時だけ。
それもトイレまで抱え上げ、連れ行くという凶行。

「もぉ、勘弁してくれよ。逃げないってば………」

初めてだというのに、悠理はあらゆる体位で貫かれ、快感を教え込まれていた。
彼の体力は尽きることを知らないのか、一睡も寝ずに求めてくる。

「おまえ………帰り運転するんだろ?事故っちゃうよ!」

「なら、もう一泊しますか?」

「あ、あほ!!こっちが死ぬわい!」

果たして、清四郎の飽くなき欲望は遂げられたのか?
どちらにせよ、悠理はもう二度と下着に拘ることはなくなったそうな。

End