New Voyage

New Voyage(R)

高級ホテルのリネンは肌触りが格別だ。
無論この部屋はスイートであるからして、当然使われている物全てに金がかかっている。
朝日が昇ろうとする中、清四郎はベッドの上で気絶したように眠る悠理をまんじりと見つめていた。随分、手酷く抱いてしまった………

あの後、少しの我慢も出来なかった自分を振り返る。
二杯目のシャンパンを飲み干した後、慈悲深い悠理につけ込んでベッドまで抱えて歩いた。
珍しく洒落たワンピースを着込んでいた彼女に覆い被さり、引き千切るようにファスナーを下ろす。

『情熱』、なんて格好の良いものでは無い。
『獣欲』、と呼ぶに相応しい行為だった。

二人して、芳香漂う吐息を絡めながら激しい口付けを愉しむ。
悠理の吐き出す全てを、自分の体内に取り込みたいと強く感じた。
どうせ、彼女に狂っているのだ。
それならば、余すこと無く知って貰わなければ・・・・・。

「せ、せぇしろ・・・ちょ・・・怖いってば・・・・!」

「怖い?僕が?」

悠理は動揺を隠さず、不安げな視線を投げかける。
自分が受け入れた男を計りかねているようなその表情に、欲望が噴き上げる。

「まさか今更逃げられるなんて、思ってませんよね?」

「そ、そんなこと思ってないけど・・・。」

「なら、覚悟を決めて下さいよ?」

そう言って再びキスを始めると、悠理の覚悟とやらが徐々に見え始めた。
恐る恐る、震える舌を差し出してくる健気な姿。

全く、可愛い女だ。

遠慮無くそれを奪い、啜り、絡みつく。
この年齢まで男を知らないとは、まさに奇跡。
無論彼女に近付く輩は、可能な限りこの手で排除してきたわけだが・・・。

ワンピースを脱がせ、下着姿となった悠理をじっくりと視線で犯す。
薄いピンクの華奢なソレにふと違和感を感じるが、それよりも釘付けとなるのは、昔に比べ確実に丸みを帯びた身体。
腰は括れ、少年っぽさが無くなった首筋から肩にかけてのライン。
いつの間に、こんなにも女性へと成長していたのだろう。

無意識に喉が渇き始める。
掌に収まるほどの小さな下着をゆっくりと解くと、悠理は恥じらいながらも胸の前から腕を広げる。
その可憐な膨らみを目にした途端、急激に動悸が速まった。
馬鹿な・・・・!
女の胸など幾度となく見てきたというのに・・・・。

「なに?」

「・・・・・驚きましたね。綺麗な胸をしてるじゃないですか。」

「そ、そんなこと・・・ホントは思ってないだろ?」

「いや・・・本音ですよ。」

触れようとする手を思わず見つめてしまう。
こんなにも綺麗な物に、果たして容易(たやす)く触れてもいいのだろうか。
無論、自分以外の輩に触れさせるわけにはいかない。
清四郎はそっと羽を掴むよう乳房に手を翳(かざ)す。
やんわりと揉めば、そのあまりの柔らかさに脳髄が蕩ける気がした。

弾け飛ぶ理性。
自制心の鍵など、とっくにどこかへと消え去っている。

気が付けばむしゃぶりつくように吸っていた。
僅かな肉を寄せ、その頂点を舌で転がす。
軽く歯を立てる度に、頭上で悠理の甘い啼き声が響く。
その声はまるで媚薬。
あっという間に限界まで昂ぶる分身。
自嘲する暇も無いほど、この女に飢えていたんだと自覚させられる。

「ああ・・・堪らない・・・ゆうり・・ゆうり・・・・おまえが欲しい・・!」

のぼせたように告げることで、激しい想いを伝えようとする。
もしくは許しを請うつもりなのか?
下半身を隠す薄い布を引き千切り、全てを露にすれば、悠理はとうとう涙を零し始めた。

「や・・・ぁ・・・・・見るなぁ・・・!」

「大丈夫。すごく綺麗だから・・・。」

一旦、腕に閉じ込め、落ち着くまで頭を撫でてやる。

「自信を持て。おまえは本当に綺麗な身体をしているんですよ。」

「・・・・・誰と比べてんだよ。」

「・・・・・。」

「馬鹿・・・」

胸に縋りつき、小さな嫉妬心を見せつけてくる。
瞬間、こいつも女なんだな、と強く感じた。

既に勃ちあがった突起を捏ねるように愛撫し、顔中にキスを浴びせる。
快感に眉根を寄せ、目を瞑りながら、悠理は真っ赤になっていた。
落ち着いた頃を見計らい、そろりと下半身に触れる。
その間ももちろん、落ち着かせるよう首筋や胸へのキスを忘れない。

「ああ・・・・・こんなにも濡れて・・・。」

じっとりと潤んだそこをなぞれば、悠理は甘く喘いだ。

「んあぁ・・・何・・?そこ・・・」

くちゅくちゅと水っぽい音をわざとらしく立てる。

「準備が整っているんですよ。もうすっかり女の身体になっているんだな・・・」

「あ、あたい、誰ともしてないぞ!?」

「当然でしょう。そんな事、僕がさせるわけがない。」

唇を塞ぎ、唾液を注ぎ込む。
全て僕の色に染まれば良い・・・!
そんな野蛮な思いに囚われながら・・・。

小さな粒を見つけ、まずは包皮の上から優しく撫でる。
それだけでも激しい快感に身を捩らせる悠理は、なんと敏感な身体をしているのだろう。
歓喜に胸を焦がしながら、さらに少し力を加える。

「ひゃ・・あ!せ、せいしろ・・・や、やめ・・・!」

「止めませんよ。ここが女性の一番感じる部分ですから・・・。」

「お、おかしくなるっ・・!おかしくなるんだってばぁ・・・!」

涙で濡れた顔をぐりぐりと胸に擦りつけてくる。
もどかしさに気が狂いそうなのだろう。

「イかせてあげますよ。あまり苛めるのも可哀想ですからね。」

薄い包皮を剥き、まだ未熟であろうクリトリスを柔らかく揉み込む。

「ひぃ・・!!ぁあ!!」

強すぎる刺激は悠理の身体を弾けるように上下させる。
それを片腕でしっかり抱き寄せ、さらに愛撫を施した。

「悠理・・ほら・・・大丈夫だから・・・イって・・」

耳元で囁かれた小さな声に縋るように、悠理は口を半分開けながら追い求め始めた。

素直な心と身体。
どちらも大変好ましい。

円を描くように強弱を付けながら、その部分を丹念に弄る。
あまり強すぎても快感は砕け散ってしまう。
程良い強さで長く続かせることが大切だ。
それが功を奏したのか、悠理は一人でエクスタシーを手繰り寄せ始めた。

「あ・・・・あぁ・・・せいしろ・・・こわい・・・怖いよぉ・・・」

「怖くない。僕がここに居るでしょう?」

動かす指に少しだけ力を入れる。
すると悠理はビクンと大きく痙攣しながら、初めての強い快感に身を委ね、息を深く吐き出した。

じっとりと汗ばんだ肌。
彼女が纏う仄かに甘い香りが鼻を通り抜ける。
脱力し弛緩した華奢なその身を横たえ、側にあったタオルで汗を拭きとる。
ここまでは上々。
いまだ微かに震える悠理は、恐ろしいと感じるほど艶めかしい姿だ。

ようやくスラックスから昂ぶりを取り出す。
驚くべきはその硬さ。
今すぐにでも、白濁した物が飛び出しそうだった。

さて・・・と思考を巡らせる。
無論、コンドームを持ち歩いてはいるが、それを使うべきか使わぬべきか・・。

「悠理、生理はいつ終わりました?」

「え?」

朦朧としながらも、彼女が口にしたその日から推測するに今日は安全日だ。
ならば、何も考えることなどない。
この剥き出しのペニスで悠理の中をこじ開け、その柔らかい肉を堪能すればいい。
そしてその中にこの穢れきった欲望を放てばいいだけだ。

力無い脚を抱え、大きく開かせる。
なかなかに柔軟な身体だ、と感じる。

「悠理・・入れますよ?」

「・・・・・・あ・・・も、もう?」

「ええ、少し痛むかもしれませんが、その時は僕にしがみつけばいいから。」

細い腰を少し浮かせ、自分の膝を滑り込ませる。
たっぷりと濡れた悠理の秘所は、淡い色の恥毛が張り付いていた。
滾る欲情。
それを今からこの中に注ぎ込む。

ツプリ・・・と先端を沈めれば、悠理の身体が一瞬強張った。
しかし先を進もう。ゆっくりと半分ほどまで挿入させる。

「んっ・・・!!」

ギッチリと埋まっていく肉茎をきつく、しかし、しっとりと包み込む悠理の膣道。
これまた驚くほど気持ちいい。
恍惚とする自分とは反対に、目尻にうっすらと涙を零しながら、悠理は耐えるように唇を結んでいる。

「悠理・・・悠理・・・」

「せぇしろ・・・・」

名を呼べば、真っ直ぐに見つめてくるその瞳。
愛らしくて、愛しくて、その健気さにすぐにでも弾けそうになる。

「おまえが欲しくて気が狂いそうだった・・・。好きで、好きで・・・何をしてでも手に入れたかったんだ。」

「・・・・・うん。」

「まだ、僕が怖いですか?」

「・・・・・ううん。怖く・・・ないよ?」

「なら・・・いいんですね?」

「・・・うん。」

小さく頷いたその返事を合図に、僕は彼女に全てを沈み込ませた。

「ああっ!!!!」

そしてすぐに律動を加える。
温かい悠理の肉襞がきゅうぅと絡みついてくる。
背筋が戦慄くほどの快感に痺れながら、さらに押し入り嵌め込んだ。

「すごい・・・悠理・・・」

「あ・・・あっ・・・・せぇしろぉ・・・・・!」

まだ、だ。
さらに奥を目指し掻き回す。
悠理の胎内はとても初めてとは思えないほど、絶妙なうねりを繰り返していた。

「悠理・・・そ・・んなことされたら・・・・出てしまう・・・・」

「え・・なに・・・?」

そうだ・・・彼女は無意識だ。

・・・ああ!なんと素晴らしい身体に巡り合わせてくれたのか。

滅多にしない神への祈り。
清四郎は激しく突き上げながら、感謝の言葉を胸にした。

「あっ!あ!!せ、せいしろ・・・息が・・・出来・・ないよぉ・・・」

「もうすぐ・・・イく・・・・我慢してくれ!!」

細い腰を掴み大きくスイングさせ、ぶつけるように抜き挿しする。
ジュル、ジュク・・・
湿った音が耳に響き、白く泡立つ膣口を目にした時、脳内に痺れが走った。

「ああ・・・悠理・・・イくぞ・・・!!」

甘い嬌声をあげる悠理の奥深くで、とうとう情熱の全てを吐き出すが、放った後も抜け出せないほど心地よい膣内。
少し柔らかくなった性器を、その柔和な肉の感触で再び硬くさせ始めたが、当の悠理は呆然と天井を見つめたままだ。

「大丈夫か?」

「・・・・あ・・・うん・・・・・・」

気の抜けた返事だが、初めての女は皆こういうものなのだろうか?
見覚えのないその表情を見つめながら、ふぅと溜息を吐く。
そして力を取り戻しつつある肉茎を左右に揺らしながら、悠理の覚醒を促した。

「あ・・まだ・・・・硬い・・・の?」

「気持ちよすぎるんですよ、おまえの中が。」

「そ、なんだ・・・。」

「何度でも昂ぶらせて、何度でも胎内(なか)に吐き出したくなる。」

「・・・・・・・おまえ、もしかして’絶倫’ってヤツなのか?」

「ふ・・・・僕について来れる女などいませんけどね。」

その返事にムッとした悠理は、幼い嫉妬心と対抗心を剥き出しにした。

「あたい、負けないぞ!!?」

思わず苦笑してしまう。
しかしこれでこそ悠理。
自分が求め続けたたった一人の女だ。

「ええ・・・なら、僕をとことん溺れさせて下さい。この身体に・・・。」

「・・・・身体、だけ?」

「心は全ておまえのものですよ。もう、雁字搦めになって解けそうもないな。」

大きな瞳を際立たせた悠理は清四郎を覗き込むと、面白そうに笑った。

「ふふ・・・・変なの。」

「変ですか?」

「清四郎があたいにそんな事言うなんて・・・おかしいよ。」

「でも、本心です。」

「ん・・・・解ってる。あんなことしでかすんだもん。信じるしかないだろ。」

苦笑する男の首に腕を巻き付け、そっと息を吹きかける。

「責任なんて感じなくてイイよ。あたい・・・・おまえとだったらどんな事だって出来そうだから。」

その言葉は、僅かに残っていた理性という名の最後の砦を、呆気なく粉砕した。

「僕も・・・おまえとなら、どんな地獄だって楽しんでやる!」

清四郎は抱き潰すように力を込める。
その暴力的な愛に、悠理は耐えた。

「あ・・あ・・・・せいしろ・・・・せいしろぉ・・・!」

懇願するように告げる名はたった一人の男。
昔も今も、この男だけを頼って生きてきた。

「好き・・・・・・・・せいしろ・・・・好き・・・・!」

苦手なはずだった。
嫌みくさくて、上から目線で・・・でもここぞという時は、必ずこの男が脳裏に浮かぶ。
それが「一つの愛」だなんて、誰も教えてくれなかったのに・・・。

「悠理・・・・・・ゆうり・・・・ああ・・・大好きだ・・!」

愛していた。
いつしか、この女しか「女」と思えなくなっていた。
凡庸な人生など送りたくないと思っていた自分に、必ずといっていいほど大きな刺激を与える悠理。
彼女の周りに渦巻くトラブルを、自分だけが解決できると信じ、そして守ってきたのだ。
どんなリスクを冒してでも、手に入れる。
そう決意した時、真っ直ぐ一本道が見えた。
自分がこれほどまでに破壊的な人間だとは思わなかったが、
それでも悠理を手に入れることに大きな価値を見出したのだ。

「愛してる・・・悠理・・・・・」

手放せない。
もう、絶対に手放さない。
どんな危険な世界にだって、悠理となら飛び込んでいける。

「清四郎、一生は長いぞ?」

「もちろん・・・・・覚悟の上ですよ。」

航海はまだ始まったばかり。
しかしどんな荒波だろうが、二人なら必ず乗り越えていけるだろう。

炎の様な想いを手にした彼らは・・・その夜、いつまでもいつまでも互いを求め合い、愛という名の海で溺れ続けた。