悠理と二人きり、三度目の夏だ。
といっても、いつものメンバーと旅行に出かけることも多く、実質一週間くらいしか二人きりではない。
そんな貴重な時間を、南の島やアフリカに当て、今まで楽しい夏休みを過ごしてきた。
今年もまた、紺碧の空と海がのぞめるカリブ海の小さな島へとやってきたのだが、悠理のテンションは当然、上り調子。
さっきから子供のようにはしゃいでいた。
程良い大きさのクルーザーを借り、島を離れると、そこにはたくさんの魚と美しい珊瑚礁が広がっている。
当然、悠理は潜りたくて仕方ないようだ。
「ダメですよ。ここはサメも多い。」
「えー勿体ないなぁ~。ほら、見ろよ。ファインディング・ニモの世界だじょ?」
目を輝かせる彼女の意見を聞き入れてやりたいが、残念なことに此処は高い確率で人食い鮫が出現するのだ。
一年前もアメリカ人のダイバーが被害に遭っている。
「食いしん坊の鮫に食いしん坊のおまえが食われたら洒落にならない。」
「助けてくんないの?」
「…………身代わりになれと?」
「んなこと言ってない!おまえの拳法でやっつけらんないのかなって。」
僕を買い被りすぎだろう。
そんなこと、和尚だって不可能だ。
いや────意外に出来るのか?
「海の中では彼らの方が有利だ。僕たちはただの餌でしかない。」
「ちぇっ。」
「もう少し浅瀬なら潜っても大丈夫ですよ。戻りますか?」
「………んー、いいや。ここ、誰も居ないし、景色も良いし。」
「二人きりですね。本当に………」
クルーザーのエンジンを留め、デッキチェアに並ぶ。
空はこの上なく高い。
波も穏やかで船酔いもないだろう。
「昼寝でもしましょうかね。」
「それも勿体ないね。」
「こういうことこそ、最高の贅沢と言うんですよ。」
「なら、さ。」
起きあがった悠理の目は爛々と輝いている。
────何か企んだな?
彼女は赤い水着を躊躇なく取り去り、程良く日焼けした裸を僕に重ねてきた。
「………えらく開放的ですね。」
「おまえも………脱ぐ?」
「………………お望みとあらば。しかし僕をひん剥いてしまえば、ただじゃ済みませんよ?」
「もぉ…………スケベ。」
どっちがスケベだか。
でもまあ、確かにこのシチュエーションは悪くない。
青い空の下で乱れる悠理を目に焼き付けておくのも、夏の良い思い出となるだろう。
結局僕たちは、夕暮れ時まで楽しんだ。
海でも山でも宇宙でも───悠理と一緒なら、最高の時が過ごせる。
それはこの先も明らかなる事実だ。