白い恋人たち

 

街はクリスマス一色。
キラキラ、キラキラ
溢れる光と、耳に優しい音楽。

雪がちらつく中、これまた甘いカップルが一組、人目も憚らずいちゃついている。

「こんな薄着をして………。いくら馬鹿でも風邪をひきますよ。」

「一言余計だ!だいたいこの格好は………」

「僕のため、ですよね。解ってます。すごく可愛いですよ。」

そう言って彼は、彼女の首へと自分のマフラーを巻きつけた。

「あたい、別に寒くなんか………」

「これからスケートに行くんでしょう?確実に冷えますから、こうしていなさい。」

それはいつもの数倍は優しい言葉で、彼女は思わず赤面してしまう。
その上、彼は彼女の冷えきった手を包むように持ち上げ、自分の吐息で温め始めたではないか。

「せ、せ、せぇしろ!」

「おや、何を恥ずかしがってるんです?」

「は、恥ずかしいわい!んな馬鹿っプルみたいなこと!」

「周りを見なさい。誰もこちらのことなど気にも留めてませんよ。」

恐る恐る移動させた視線の先には、あからさまに顔を背ける人々の群れ。

「気にしてる!絶対に、みんな気にしてるってば!」

「………まったく。おまえが人目を意識するようになるとはね。昔は傍若無人のモデルケースみたいな人間だったくせに。」

「むっ?」

「それだけ成長したということでしょうが………今は、今だけは……」

『このままで』

囁くように告げられた言葉から、彼の求める心が滲み出ていて、彼女はすっかり大人しくなってしまった。

強まる雪。

足早に去り行く人々。

けれど二人の周りは時間が止まったかのように静かで………

寒さを感じないまま、キスを交わす。

「………悠理、メリークリスマス。」

こてん
コートの胸元に埋めた顔は、トナカイの鼻よりも赤くて、それでもか細い声で彼女は答える。

「メリークリスマス………清四郎。……………大好き。」

恋人達の世界を雪が覆う。

誰にも覗かれない真っ白な世界の中、二人は一つに重なったまま、聖なる日を慈しんだ。