狐の婿取り

化け狐の娘と帝の義弟
禁断の恋や、如何に?

狐の婿取り

狐の婿入り〜第十話〜

狐の婿取りシリーズ 競うかのような鈴虫の音。 池には鴨の番(つがい)が優雅に水をかいている。 ススキや萩が冷たい風に揺れ、秋の庭を彩る。 いつしか深まっていた季節の中、悠理はただただ暇そうに庭を眺めていた。 い...
狐の婿取り

狐の婿取り~第九話~

悠理が清四郎の屋敷で過ごすようになって五日ほどが経つ。 着物も食べ物も、不足なく用意され、それはまさしくお姫様待遇であった。 使用人として連れてこられた魅録が清四郎と顔を合わせることは稀だったが、日中どこかしらへ出かけている...
狐の婿取り

狐の婿取り~第八話~

※R注意 カテゴリー:狐の婿取り 人気のない門から静かに案内された先は、あまりにも立派な寝殿だった。 大きな池にかけられた反り橋を幾度も渡り、多くの樹木が植えられた中庭を通る。 春になれば恐らく、見事な梅や桜に彩られ...
狐の婿取り

狐の婿取り~第七話~

夜風が強い。 連日の雨はおさまったが、日を追うごとに寒くなってきている。 もう、すぐそこにまで冬が訪れていると判り、悠理は小さく肩を竦めた。 今日は酒を飲む気になれず、夕飯の後は魅録の冒険話に耳を傾けていた。 何でもこの男、時と...
狐の婿取り

狐の婿取り~第六話~

ザァザァ──── あぁ、雨だ。 地面を打ち付ける激しい雨。 冷えた空気と埃立つような勢いの雨粒。 そういえば、あの恋しい男と出会った時も、雨が降っていた。 みすぼらしい女を洞窟に招き入れ、僅かな食料を分け与えただけでなく、...
狐の婿取り

狐の婿取り~第五話~

帝に書簡を届けた後、朝廷への挨拶を済ませた清四郎は、長旅に疲れた身体を白木の床に横たえ月を眺めていた。 すすきの穂が細い風に揺れ、もの悲しさすら感じられる閑庭。 青く、まあるい月が空を照らしている。 そんな冴え冴えとした───晩秋...
狐の婿取り

狐の婿取り~第四話~

それから三日が経ち─── 二人はとうとう京の都へ足を踏み入れた。 旅の終わりに近付けば近付くほど歩みは遅くなり、宿に寄れば、食べる間を惜しんで互いを求め合う。 ────どうせ今だけの関係。雲の上の御仁に想いを寄せても無駄なこと...
狐の婿取り

狐の婿取り~第三話~

「さぁ!寄ってらっしゃい!うちの焼き栗は最高だよ!」 その日。 約半日歩いて到着した宿場町では、辺りから甘い香りが漂っていた。 まだ日も高く、賑わいを見せる街道。 並ぶ店の軒先では、芋や栗と共に、キジを焼く芳ばしい香りが食欲をそ...
狐の婿取り

狐の婿入り~第二話~

闇を舞う火花。 焚き火がゆっくり、消えかけようとしていた。 亥の刻を過ぎたあたりだろうか。 雨は小降りに落ち着いているが、夜の冷え込みはなかなかに厳しい。 唯一の暖に頼りながら、互いの身の上話に興じた二人は、徐々に薄暗くなる岩壁...
狐の婿取り

狐の婿入り~第一話~

とある山道を、帝の遣いを済ませた清四郎は足早に歩いていた。 ここは近道だが獣が多く住む。 日が暮れる前にどうしても通り過ぎたかった。 「雨が降りそうですな。もう少し急がなくては・・・」 抱えた書簡をもう一重、布でくるみ、もし...