くっそー、あいつ何分待たせんだよ。
チャーター機なら三時間で帰れるって言ってたくせに。
だいたい式の当日までシンガポールで仕事って………おかしいだろ。
ほんと非常識なヤツ!そりゃ……あたいが新婚旅行に二ヶ月かけたいって喚いたから、前倒しになった仕事で、てんてこ舞いってのはわかるけどさ。
にしても、もちっと早く終わらせてくれよー。
あたい、すっぽかされた花嫁みたいになってんじゃん。
「剣菱様。到着されましたよ。」
やっと来たか。
ギリギリ!
この後、バチカンにも行かなきゃなんないし、大変なんだぞ。
「清四郎!遅い!」
「悪かった!エンジントラブルで機体を変更してたんだ。直ぐに着替えるから……っと! 」
ネクタイを外そうとする清四郎に駆け寄って、抱きつく。
あー、良かった。
事故にでも巻き込まれてたらどーしようかと思った。
「悠理?」
「もう、ハラハラさせんなよぉ~・・」
「…………心配させたようですね。」
「ふん、当たり前だろ!お詫びのチューは? 」
「したいのは山々ですが……………口紅、取れちゃいません?」
「塗り直せばいいだけ。」
背伸びして唇を突き出せば、思ってた以上に濃厚なキスが降ってきて、腰が抜けてしまう。
「あほぉ、立てないじゃんかぁ!」
「ドラマチックな挙式になりそうですな。」
結局あたいは、お姫様抱っこされて入場。
おかげで散々冷やかされた挙げ句、腕を組むはずだった父ちゃんは手持ち無沙汰でしょんぼり顔。
まあ、結婚式はあと二回あるわけだし?
そん時には父ちゃんの出番だってあるだろ。