「悠理……後ろを向いて………」
「や………これ、やだ……」
「大丈夫………恥ずかしくないから。僕の言うとおりにしなさい。」
「恥ずかしいとかじゃなくて………おまえの顔、見えなくなっちゃう……だろ………」
「なら………あそこにある姿見を見てればいい。僕の顔も見えるでしょう?」
「そ、そっちのが恥ずかしいじゃんか!」
「仕方ないんですよ。恥じらうおまえは…………可愛すぎて、より興奮するんですから。」
結局、清四郎は悠理の言うことを聞かなかった。
後ろから覆い被さるように抱きしめ、細い腰を引き寄せる。
堅くなったモノがあそこを擦り、わざと滑りを増やすような動きで、とことん焦らす。
意地の悪い男の、いつもの遣り方。
「………挿れるなら………早く挿れろ!」
悠理は涙を滲ませ、詰った。
「ふふ………挿れて欲しいんですね?」
その言葉を待っていたとばかりに、清四郎は音を立て、押し入った。
グチュリ………
淫らに湿った音が部屋全体に響く。「あ………っん!」
いつもとは違う角度で膣壁を擦られ、悠理の目が星のように瞬いた。
しなやかな弾力ある杭が胎内を目指し、緩やかに探り始める。
「あぁ………悠理。やはりこの体位が好いんですね。すごい締め付けですよ?」
「んなこと………あっ………ぁん!」
腹の奥から滲み出す快楽に、知らず知らずきつく締めあげる悠理。
清四郎のモノもまた、自然とその膨らみを大きくしてゆく。
「は………ぁん!こんな………の、くるし………」
圧迫された膣内がヒクヒクと蠢き、涎のように垂れてしまう愛液。
清四郎は嬉しそうにその甘露をすくいあげ、口に含んだ。
そして舌先で味わうように自らの指を舐める。
「甘い…………」
「うそ、甘くなんてないだろ?」
「本当ですよ。悠理のものは全て甘く感じるんです。ん?もしかして………血糖値が高いのか?」
冗談めいた台詞を吐きながら、彼は穏やかに律動を始めた。
淫らな腰使いと真剣な眼差し。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、悠理の中を掻き回す。
「はぁ……ん…………やらしいよぉ……」
悠理は思わず姿見から目を背けてしまった。
清四郎の淫らな姿に、脳が灼き切れそうになる。
奥へ奥へと突き刺す力強い動き。
時々、強弱をつけて緩く掻き回すことも。
視覚的な興奮と感覚的な気持ち良さに、悠理の息が詰まる。
清四郎の美しい腰が、自分を快感の渦へ落とし込もうとしているのだ。
甘く切ない責め苦で、乱れた痴態を引き出そうとしているのだ。
悠理は涙をこぼしながら、何度も甲高い嬌声をあげた。
どれだけ歯を食いしばっても、身体はあっさり裏切り続ける。
彼女の意志など何の役にも立たないとばかりに───
ああ、溺れてしまう。
この快感に。
「んぁっ、あぁぁ……!!」
「悠理っ………!」
間もなく訪れた絶頂と共に、清四郎の迸りが子宮を打つ。
それは幸せな瞬間。
彼の熱い子種が胎内に染み込んでゆく感覚は、何度味わっても恍惚とさせた。
「ん……ふっ……ぅ………」
余韻に体を震わせる清四郎は、押し付ける腰を軽く揺らし、汗だくの背中に何度もキスを落とす。
愛しい婚約者の背中。
美しく、淡い光を放っている。
「んっ…………」
清四郎が離れていくと、空洞が名残惜しげに口を閉じた。
力なく落ちた腰がシーツに沈む。
どろり………
すると熱い体液が悠理の太腿を濡らし、その感触が震えるほどの官能を引き出してゆく。
そしてそれは悠理に思いがけない言葉を吐き出させた。
「………抜かないで………せぇしろ…………」
「………え?」
「もっといっぱい………………中に居て?」
交際と同時に婚約して半年。
今までそんなはしたない台詞を口にしたことはない。
悠理は瞼を赤くしながら、ゆっくりと振り向いた。
だがそこには、ぽかんと口を開ける清四郎の姿が。
「な、なに?」
「…………いいんですか?そんなことを言って。僕のストッパーを外して、後悔しませんか?」
そう言って真剣な表情で詰め寄ってくる。
「…………いいよ………いっつも、我慢させてるし………ほんとは………あたいだって………っあんん!」
悠理は最後まで言い切れなかった。
清四郎に乱暴なほど腰を掴まれ、一気に押し入られたから。
「ふぁあん!!あっ……奥…………やぁ!ふかすぎる………」
「無茶苦茶にしますよ?後悔しても………もう、遅い!」
「ひゃぁあああ………!」
想像を遙かに超えた激しい抽送に、悠理の細い体が悲鳴をあげた。
隘路が擦られ、得も言われぬ快感に巻き込まれ、目眩がするほどかき乱される。
耐えるようにシーツを掴むも、清四郎はその腕を掴み、背後へと引き寄せる。
反った胸がふるんと揺れ、腰が弓形になると、悠理の目に否応なく二人の姿が映った。
姿見の中の清四郎はまるで獣のように目を光らせていて、思わず鳥肌が立つ。
「見ていなさい。ずっと………」
「あ………ぁあ………やっ…………」
揺さぶられ、奥の奥までこじ開けられ、悠理は息を吐くのもままならない。
それでも快楽を貪ろうとする体は、清四郎の逞しい肉茎を涎と共に受け入れていた。
擦られ、抉られ、攻め立ててくる凶器。
次第に、ビリビリとした電流のような快感が悠理の中で波紋のように広がっていった。
「悠理………もっと………感じろ………あぁ、最高にうねってる。」
子宮の入り口をズンッと突かれる度に頭が白く弾け、羞恥も思考も奪い去っていく。
もうどんな恥じらいも必要ない。
ただただ、素直になりたかった。
「あ…ぁ………せぇしろ………気持ちいい!気持ちいいよぉ!………あたい………あたい………もうおまえがいなきゃ………だめぇ!!」
その瞬間、清四郎はギリッと奥歯を噛み、愛情と困惑の入り交じった興奮を悠理の体にぶつけた。
まずは細い肩に噛みつく。
そして腕から手を離し、悠理の両胸を掴み取ると、大きな手のひらで揉みくちゃにしながら腰を打ち付けた。
「悠理………悠理っ…………!」
「せぇ……しろ…………ぉ!」
余裕など、もはや一欠片もなかった。
清四郎は悠理の中に全てを吐き出す。
それでもまだ足りないとばかりに腰を動かし、白濁の中で自身を復活させてゆく。
悠理は涙で歪んだ視界の中に、清四郎に喰われる自分を見つけた。
狼のような、否、黒豹のような恋人の姿。
細い肢体には清四郎の腕が絡みついたまま、次に腰を持ち上げられ、繋がった部分を露わにされる。
「あ………うそ…………や、やぁ………」
「おまえが望んだんだ。僕はこれから………どんなやらしいことでも実行する。悠理………覚悟しろ。」
「そ………そんな………」
赤く熟れた肉唇に出入りするその肉棒は、いつもより一回り大きく見えた。
体重をものともせず、上下に揺さぶられる体。
清四郎の口は、汗に濡れた悠理の首を何度も噛み、そして幾つもの愛咬の跡を残してゆく。
「い………イくっ!!」
潮を巻き散らかしながら、悠理は達した。
だが清四郎は休ませようとはしなかった。
何かにとり憑かれたように律動を続ける。
そして何度も吐き出される欲望。
結局、終着点の見えぬまま夜は更け、朝が来ても清四郎は悠理に繋がり続けた。
彼女の枯れた声はそれでも、悦びに満ちている。
ありとあらゆる技巧で深い快楽を知り、何度も意識が飛ぶようなエクスタシーに落とされた身体は、完全に籠絡していた。
その後──────
昼も夜も、淫らな記憶を植え付けられた悠理は、所構わず清四郎を求めるようになる。
そして清四郎もまた、嬉々してそれを受け入れるのだ。
結婚を二ヶ月後に控えたカップルはこうして愛欲の沼に引きずり込まれていった。
無論、新婚旅行に必要なものは大きなベッドだけ。
海も、空も、太陽ですら、彼らは欲しいと思わなかった。
互いの熱と、素直な心。
ただそれだけを求めて────