「悠理は何処です?」
「どうしましたの?清四郎。」
「あいつ、この前受けた数学試験で0点だったんですよ!あれだけ教え込んだというのに!」
「まぁ・・・!一問も正解しなかったんですのね。」
「酷いもんです。」
「でもそんなに怒らなくてもいいのでは?相手は悠理でしょう?予測の範疇ですわ。」
「それは………確かにそう、ですけど………」
「何か───ありましたの?」
「べ、別に、何も…………」
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「清四郎、行っちゃった?」
「あら、悠理。そんなところに隠れていましたのね。」
「はぁ………あいつ怒ってたなぁ…………どーしよ。」
「一体、何がありましたの?」
「…………んとさ。数学のテストで、もし30点採れたら……キスさせる約束だったんだ。」
「え…………?」
「ほら、清四郎が一生懸命教えてくんなきゃ、成績上がんないだろ?あいつ最近、あたいの馬鹿さ加減にモチベーション下がっちゃっててさ。提案してみたんだ………こっちから。」
「…………それで0点しか採れなくて、腹が立ってるんですのね。」
「ん………なんか悪かったなぁ……って。」
「あら、可愛らしいこと。悠理も本当は30点採りたかったんでしょう?」
「えっ!?あ、いや………その………別にキスしたかったわけじゃ………」
「条件など無くとも……お互いがしたい時にするのが自然なのではなくて?」
「………やっぱ、そう?」
「ええ。」
「うん、そだよな。わあった。あたい………行くよ。」
「はいはい。」
この話を清四郎へと届けた悠理。
「自然───確かに何事も自然が一番ですよね。」
「だろ?」
「ええ。」
妙に納得した清四郎が、所構わず、心赴くがままにキスを求め始めたのは当然のことだった。
「や、やっぱ………テストで………」
「却下します。」