姫始め(お正月作品:R)

「お・と・そ♪ ぞ・う・に♪」

「随分とご機嫌ですな。」

「あったり前だろ!お正月なんだから。」

悠理は振り袖の袂(たもと)を振り回しながらニカっと笑って見せた。


元旦の剣菱邸。
誰よりも早く到着した清四郎は、悠理の寝室で調子っ外れの歌を聴かされていた。

「毎年毎年、剣菱の正月料理は想像を遙かに越えていますからね。夕べの年越し蕎麦は控えめにしましたよ。」

「おっ!じゃあ、あたいと勝負する?」

「遠慮しときます。胃が4つあっても足りない。」

「意気地無しめ!」

「ところで・・・」

たすき掛けに苦戦している悠理を手伝いながら、清四郎はそっと耳元で囁く。
それはもう蕩けるような声で。

「姫始めはいつに?」

「!!!」

「去年の姫納めもしていませんから、出来る事なら元旦の内にお願いしたいんですけどね。」

「ば、ばぁたれ・・正月早々何言ってやがる!」

「むしろ’正月’以外にいつ言うんです?」

「う・・そ、それは・・・。」

口ごもる悠理の耳を軽く舐めた後、襟元に隠れた首へと口付ける。

「早くご馳走を食べさせてくださいよ。」

「・・・じ、じゃあ、後でな。」

「・・・後?」

「い、今は駄目だぞ!折角着付けたのに・・・。」

「着物は容易(たやす)いですよ?睦事を楽しむには・・・」

そう言って、衿下の合わせから手を差し込むと、清四郎は一気に捲り上げた。

「こ、こらぁ・・!ダメだってば!!」

襦袢越しに透ける二本の白い脚が艶めかしくて
宥(なだ)めていたはずの熱が一気にこみ上げる。
薄桃色の襦袢はゆっくりと開かれ、悠理の滑らかな足を清四郎の掌が撫で回した。

「ああ・・・気持ちいい。夕べはおまえを襲うため、ここを訪れようかと思ってたんですが・・・邪魔が入りましてね。」

「じ・・邪魔・・?」

「親父の患者ですよ。慌てて車で病院まで送っていったんです。」

急患などよくあることだが、その時の清四郎の不機嫌さを想像すれば、悠理の背中を悪寒が走った。
なにせ、今自分を犯そうとしている男は「超絶倫」なのだ。
性欲にかけては「美童」を凌(しの)ぐと思われる。
昔、そう指摘した時に返ってきた言葉は・・・

「あんな節操なしと一緒にしないでくださいよ。僕はおまえだけにここまで滾(たぎ)らされるんですから。」

だった。

とにかく清四郎は凄い。
毎日、コトあるごとに仕掛けてくる。
そしてそれに慣された自分は、最早何の言い訳も出来ないほど簡単に身体を開く女となっていた。

「あ・・ん・・・あたいも・・・待ってたのに・・」

「僕を?」

「ん・・・だって、一緒に年越しエッチすんのかな・・って思ってたもん。」

「ほう・・・それはそれは。ご期待に添えず申し訳ない。」

清四郎の手はとうとう悠理の下着へと伸びる。
その薄い布きれはあっという間に床に落とされ、代わりに男の膝を直に受け入れた。

「あ・・・っ・・・!」

ぐりっと、スラックス越しに擦られれば、悠理はもう何も考えられなくなる。
徐々に溢れる淫らな液体が、自分でも解るほど清四郎の膝を濡らしていた。

「すごいな。こんなに濡れて・・・。待っていたという言葉は本当なんですね。」

「・・・んぁ!ほんとだってば。寂しかったんだぞ・・。」

大きな帯が邪魔をする。
清四郎はベッドまで引きずるように連れて行くと、腰を突き出すよう屈ませた。
豪奢な着物は悠理の上半身に掛けられ、薄い肉付きの臀部が露となる。

「ああ・・・なんていい眺めなんだ。写真に撮りたいくらいですよ。」

「だ、ダメだぞ!!」

「・・・解ってます。今はすぐにでもおまえを奪いたい。」

そう言ってスラックスから取り出した性器は、まるで凶器。
二、三度扱いた後、さらにその大きさを際立たせる。

「中・・・はさすがに拙いか。」

仕方ないといった様子で、財布の中から避妊具を取り出す。
装着までの数秒ですら、悠理にとっては焦れったい時間だった。

「せいしろ・・はやくぅ・・・」

「はいはい。今挿れてやりますよ。」

とろとろに濡れた秘所に柔らかく擦りつけ、その具合を確かめる。
薄紅色のそこは何度見ても美しく、まるで花の芯を思わせた。

「一気に奥まで挿れますからね。」

優しく尻を撫でながら、清四郎はその逞しい肉茎を根元まで突き入れる。

「ああ!!!ああ・・イイ・・・!!!!」

途端にあがる嬌声。
耳慣れたその声が清四郎を激しく興奮させた。
がっつり腰を掴むと、獣のような抽送を繰り返す。
ピシャ・・っと太腿にかかる愛液すら心地よい。

「悠理・・・いいぞ・・すごく搾られる・・・」

「あ・・あっ・・・せ、せぇしろぉ・・もっとぉ・・・もっとして・・・」

懇願されずとも、清四郎の滾りはおさまらない。
円を描くように胎内を擦りつけ、そして舐め回すように襞(ひだ)を味わう。

「悠理・・熱くなってますよ。やらしい肉をしている・・・。」

「ん・・きもち・・いい?」

「すごく、ね。ゴム越しじゃなかったらすぐにでも吐き出してしまいそうだ。」

「欲望」というものがここまで自制心を取り払ってしまうのか・・と昔は驚かされたが、
今はそれに身を委ねる自分も悪くないと思う。
清四郎は脳裏に「避妊具」の残数を思い浮かべながら、さらなる律動を加え続けた。

「ああ・・せいしろ・・も、イッちゃうよ・・・も・・だめ・・・」

「もう?」

「ん・・中から・・痺れて・・あ・・も、くる・・・」

ビクビクと身体を震わせ、悠理は快感の涙をシーツに沁みこませる。
その様子をつぶさに見つめながら、清四郎は一先ず性器を抜き出した。
そしてスラックスを脱ぎ去りベッドに腰掛けると、悠理に跨がるよう促す。

「好きな様に咥えこみなさい。」

「え・・・」

「次は僕をイカせてくれるんでしょう?」

「・・・・。」

屹立したその肉棒は真上を向いた状態で待ち構えている。
そんな挑発的な様子に、悠理の喉が鳴った。

「着物・・・重くない?」

「そのくらいの重さ、屁でもありませんよ。」

のろりとした動きで清四郎に覆い被さった悠理は、慣れた手つきで性器に触れる。

「これ・・取っちゃ・・ダメ?」

「・・・中に欲しいのか?」

「・・・ん。欲しい。」

「全く・・上の口も下の口も貪欲だな・・おまえは。」

清四郎は逡巡した後、軽く頷いた。
悠理は嬉しそうに薄い皮膜を取り去ると、硬さを確かめながらじっくりと身の内に沈めてゆく。

「・・・あ・・・あ・・硬い・・・すごい・・せいしろ・・・」

恍惚とした声と共に、その白い喉を反らす悠理。
清四郎は陶然と眺めながら、両手をシーツの上についた。
こうなればもう、悠理の独断場だ。
さぞや官能的なダンスが目の前で繰り広げられることだろう。
上下だけでなく、腰を前後に揺らしながら、悠理は清四郎を味わう。
いつの間にここまで上手な動きを身につけたのか・・。
無論、清四郎が教え込んだ所為だが、身体能力の高さがいかんなく発揮されているわけで、
それは男にとって嬉しい誤算だった。

軽々と腰を振り、躊躇うことなく「陰部」を擦りつける。
擦れ合う恥毛すら快感の火種だ。
小さく膨れた花芽はいまやその存在を主張している。
そっと触れてやれば、彼女はきっと呆気なく達するだろう。

しかしそれをグッと我慢し、淫らな動きを堪能する。
穏やかな快感を手繰り寄せようとする恋人の、邪魔をしてはならないからだ。

「あっん・・あ・・・きもちいいよぉ・・」

「ああ・・僕も気持ちいい。おまえは最高だ・・悠理!」

こうして素直な感想を告げることが、彼女の心を沸き立たせると知っている。
清四郎はうっとりとした表情を見せながら、悠理を見上げた。

「ほんと?いい?・・・も、出ちゃう?」

「・・・許可さえ貰えればいつでもおまえの中に吐き出しますよ?」

「あ・・待って・・も、ちょっと・・・」

動きは激しさを増す。
彼女は快感のポイントを、自ら把握しているのだから、間違いはない。

「んっ・・あ・・ここ、気持ちいい・・・あ・・あ・・」

目を瞑り、何かに委ねようとするその姿を見て、清四郎も覚悟を決める。
タイミングよく精を浴びせつけるために・・・。

火照った胎内が次第にうねりを見せ始める。

『そろそろ・・・か。』

腰に力をこめ下から突き上げると、悠理は「ひゃあ!」と甲高い声を上げた。

「ゆうり・・・我慢できない・・・もう、イッて良いか?」

「あ・・うん、うん・・せいしろ・・一緒に・・」

重なり合う動きが激しさを増す。
これほどシンクロすることが出来るのは、お互いだけだ。
愛情だけではなく「相性」というものが存在することを強く感じる。

「あ・・・イくぅ・・!」

大きく仰け反りながら達した身体を咄嗟に支え、清四郎は溜りきった欲望を思う存分放出させた。
「おなか・・空いたな・・・」

再び振り袖を綺麗に整えられた悠理は、清四郎の腕の中ですりすりと頬を寄せる。

「そろそろ奴らも来る頃です。行きますか?」

「うん!いっぱい食べるじょ!」

「あまり食べ過ぎないように。」

「ええ・・・!?なんでぇ・・!」

不満げに見上げてくる単純なおつむの持ち主を、清四郎はさぞ愛しそうに見つめた。

「まだ、僕は食べ足りませんから・・おまえもそうでしょう?」

「!!!」

「デザートの分くらい、残しておきなさいね?」

「・・・う、わぁったよ。」

良い子良い子と撫でられ、猫のように大人しく収まる悠理は、これから始まる一年への期待に胸を高鳴らせる。
清四郎のこの腕が側にある限り、自分はきっと満たされたままだろう。
それは決められた未来。
愛と欲望の全てを手に入れなければ満足しない女は、小さくほくそ笑んだ。