thirst for love(R)
thirst for love(横恋慕)
悠理はあの夜から変化した。
いや、元の悠理に戻ったと言った方が正しいだろうか。
溌剌とした笑顔を見せ、そして素直に甘えてくる。可愛い・・・・・。
まるで昔の、子供のような悠理。
思わず目を細め懐かしむ。
そんな懐古の念に囚われながらも、彼女の魅力を最大限に引き出すべく、僕は愛を注いだ。
「あ・・・ん、せいしろう・・」
「悠理・・綺麗だ。僕がどれほどおまえに夢中か解りますか?」
「む・・ちゅう?」
「ええ・・。」
悠理の全てに耽溺する僕を、彼女は不思議そうに見つめてくる。
「せいしろうがあたいに夢中・・・ふふ・・面白いな。」
「結婚する前はあまりそう言った言葉を告げてこなかったから。でも、これからは覚悟しておいてくださいね。」
「ええ!?んな恥ずかしい事、まだ言うつもりなのか?」
「恥ずかしい?そんなわけないでしょう?」
染まった頬を軽く抓り、その後キスを落とす。
「おまえだって僕の言葉が・・・想いが、欲しかったはずだ。」
「・・・・そ、そりゃ・・そうだけど。」
「二度と’自信が無い’なんて思わせないから・・・。」
そう言って彼女の唇を覆い、激しい口付けを交わす。
すぐに翻弄され、ぐったりと身を預けてくる悠理は、すっかり熱を帯びていた。
愛しい・・・。
少しでも離れていたくないと感じるほど、身が焦げる。
悠理の切ない想いを知ってからというもの、僕の我儘に拍車がかかった。
仕事中のふとした時。
出先での冷たい風に身を震わせた時。
彼女と繋がりたいと思ってしまう。
その行き場のない欲望がたとえ悠理を縛ろうとも、もう留めることは出来なかった。
電話をかけ、メールをし、少しでも意識をこちらに向けさせたい。
甘い言葉を吐き出す僕をその耳元に感じながら、欲情し、身を捩(よじ)りつつ帰りを待てば良い。
そして・・・それが見えない縄となるのなら、僕はようやく彼女を雁字搦めにしてやれる。
悠理という’束縛出来ないはずの女’を、確実に捕らえることが出来るのだ。
「せいしろう。あたい、おまえの奥さんで良かった・・」
「悠理?」
「そりゃちょっとヤなこともあったけどさ。・・・・・でも、やっぱ鼻高いもん!」
エヘヘ・・と笑うあどけなさ。
嗚呼、悠理。
そうだ・・・。
おまえはそのシンプルな性格故、悩むのだな。
僕の愛があまりにも複雑で爛れているからこそ、困っていたんだな。
思わず同情してしまうその心は、やはり僕の傲慢さで埋め尽くされている。
でも安心しろ。
すぐにどんな不安も消し去ってやるから。
一つの陰口も叩けないほど、おまえの魅力を引き出してやる。
「愛してる・・。おまえを妻に出来て、僕こそが世界一幸せな男だ。」
「そ、そう?」
「ええ・・解らせてやりますよ。これからたっぷりと、ね。」
目を背けたくなるような愛をたっぷりと味わい、それに慣れた頃、彼女は誰もがひれ伏すほど美しくなる。
そしてそんな彼女のつま先に口付けることこそ、僕のささやかな願望なのだ。