For this must ever be(R)

とある晩秋の一日。

その日、悠理は勝手知ったる菊正宗邸にずかずかと乗り込んだ。
朝七時半。
いつもならとっくに起きているはずの男が、しかし今朝は前夜の飲み会がたたったのか、いまだ布団の中に沈んでいる。悠理は乱暴に部屋の扉を開けると、こんもりと膨らんだベッドへと飛び乗った。
彼女に年頃の女としての自覚は微塵もない為、無論、年頃の男の事情など解るはずもない。
羽毛布団を勢いよくガバっと捲り、清四郎の上に馬乗りとなる。
気だるげに腕を持ち上げ顔を隠す男は、余りある色気に満ち溢れていた。

ドクン

条件反射のように、悠理の胸が鳴る。
恋人に見惚れる様になったのも、つい最近の事。

交際三ヶ月目の二人は今年20歳。
何故か一足飛びで身体を結んでしまった為、悠理は男女間の知識に乏しい。
今更ながらに、それを一つずつ教え込まれているのだが、ずる賢い清四郎のこと。
当然ながら、都合の良い部分しか教えようとしない。
なので彼女の知識は大きく偏っているのだが、そんなことはともかく―――。

悠理がふと視線を下げれば、パジャマ越しに膨らんだ下腹部が目に飛び込んでくる。

「なんだ?これ」

この年だ。
普通なら男の生理現象を知らぬはずは無いというのに、無教養な悠理は無遠慮な手でそれに触れた。

「………こら。」

清四郎が小さな声で嗜めると、慌てて引っ込める。

「何をしてるんです、全く。」

「せ、せぇしろ、これなに!?なんでこんなんなってんの?」

「・・・・・それを聞きますか。」

若干二日酔いの残る頭で清四郎は呻くように答える。

「´朝勃ち`ですよ。所謂男の生理現象です。初めて見ましたか?」

「う、うん。」

「ふ・・・あれやこれや教えるのは確かに僕の役目でしたね。」

戸惑いながらも視線を外せない悠理の手を掴み、もう一度自分のモノへと触れさせる。

「わっ!!硬い!!」

悠理は興味津々の様子で瞳を輝かせ、叫んだ。

「あぁ・・起き抜けからお前に触られているなんて信じられないな。」

うっとりと呟く清四郎を無視し、「これ、どうしたら、小さくなんの?」・・・と無邪気に尋ねる。

「まぁ、暫くすれば・・・・トイレで用を足せば戻りますよ。」

悠理はごくっと唾液を飲み込んだ。

「・・・・・・エッチしたら、どうなる?」

「・・・・・・・試してみますか?」

こくりと頷く恋人の素直さをほくそ笑みながら、清四郎は重ね合わせた手を擦り上げた。
悠理のスイッチが完全にオンになったことを読み取って。

「かなり硬いですよ。朝から意識が飛ぶかもしれませんが・・・・・・・大丈夫ですよね?」

言いながら悠理のシャツに手を伸ばし始める。
すでに太股を男の脚にもじもじと擦り付け、期待に胸踊らせているのがよく解る。

「んっ・・だいじょぶ。」

「なら、ズボンを脱いで上から乗ってきてください。」

「え!いきなり?」

「もう、濡れてるんでしょう?」

図星だった。
悠理は頬を染め、そっと自分の股間に触れる。
薄いレギンス越しにでも解る湿ったそこは、期待からか、たっぷりと水分を湛えていた。
そろっとレギンスを抜き取り、ショーツ一枚になる。
しかし朝の光が差し込む中、こうした行為をする恥ずかしさからか、なかなか最後の一枚が脱げない。

「悠理、僕も脱がせてくれ。」

言われた通り、男のパジャマと黒のボクサーブリーフを下ろす。
長くて硬いそれは、引き締まった腹に触れるほどピンと勃ち上がっていた。
そんな淫猥な姿を堂々と見せつけ、清四郎は余裕の笑みを溢す。

「ほら、悠理の好きにしていいですよ。」

「う、うん。」

直接触れるとその熱に驚かされ、跳ね返るような弾力と吸い付くようなしっとりとした肌質に、悠理は夢中になってしまう。

チュ・・・・

まずはそれに口付けた。
ピクンと跳ねる逞しい肉茎。
愛しい男のモノを愛撫する悦びを感じる。
すべすべの質感を確かめ、血管をなぞるよう舌先を使いながら、黒い茂みから上へ、そしてまた下へと繰り返す。

「は……ぁ…」

溜め息のような吐息が洩れ聞こえ、悠理は更に秘所を濡らした。

「せぇしろ、凄い・・・・こんなに硬いんだ。」

「おや、いつも硬いつもりですが、物足りませんでしたか?」

その言葉を聞き、ぶんぶんと首を振る悠理。

「ちがう。いつも薄暗い中入れられちゃうから・・・よく解んなくて。こうやって、明るいところでマジマジと見るのも初めてだし・・・・ちょっとドキドキする。」

自分の唾液で濡れた肉茎をじっとりと見つめる。

「可愛いことを言いますね。」

その視線と言葉に煽られた清四郎は、忙しなく上半身を起こすと、悠理の身体を自分へと引き寄せる。

「気が変わりました。僕がたっぷりと突き上げてあげましょう。」

欲望を隠そうともしない視線に射竦められ、悠理は最後の布をようやく足から滑らせる。
そして厚くて頑丈な胸板に自分のものを合わせ、清四郎にキスを求めた。
滲み出る期待を伝えるかのように。



「ひゃぁ・・・あ・・・ん」

「こらっ!声が大きいですよ。」

嗜めるよう耳朶を甘噛みし、しかし律動を抑えようとはしない男。
ビクンビクンと跳ねる身体をがっちりと抱いたまま、清四郎は下から突き上げ続けた。

「だって・・・・こんな・・・・の・・・・すぐにイっちゃうよぉ~」

「イけばいいでしょう?止めませんよ。」

到底敵わない力で抱き締められたまま、下半身は清四郎の分身を咥え込み、あられもない痴態で泣き叫ぶ。
そんな悠理を嬉しそうに見つめ、更なる快感を刻み込もうと、男は激しく腰を振った。
隅々まで擦りあげられ、喉からは悲鳴に似た喘ぎ声しか出てこない。

「ひっ・・・・ぁ!もう、だめぇ!!!」

絶頂はすぐにやってくる。
呆気なく力尽きた悠理は胸板に倒れこんだまま、荒くなった呼吸で肌を震わす。

「感じすぎですよ。」

「だ、だってぇ・・・」

清四郎は覆い被さったままの悠理の尻を撫でつつ、更に自らの昂りを示し、余裕の笑みをこぼした。

「あ、あっ・・・まだ、こんなに硬いのぉ?」

「当然でしょう?イってないんですから。」

「―――せぇしろ、もしかして……気持ちよくない?」

―――馬鹿な!
羞恥と悔しさから涙を溜める悠理を、力一杯突き上げる。

「ひゃあ!!」

「僕がどれだけ興奮してるか、わからないんですか?」

「あっ……あぁ!!」

「あまり煽るな。」

想像を絶する激しい突き上げを前に、悠理はしがみついたまま、喘ぐほかなかった。
胸の先端が清四郎のソレと触れ、痛いまでの刺激が走る。

「ひぁっ!気持ちいいよぉ!」

快感の涙がホロホロと胸を濡らす。

「悠理、腰を振れ。僕も・・・そろそろイキたい。」

切羽詰まった様子の清四郎が、懇願するように目を細めると、悠理はそれだけでエクスタシーを感じてしまう。

どれほどはしたない姿を晒しても、清四郎を感じさせたい!
そう強く願い、拙いながらも必死に腰を動かした。
前後左右へと淫らに……。

「あ、あっ、せぇしろぉ……いいよぉ。」

グチュグチャ………
局部が擦れ合う音が響く。
普段なら耳を覆いたくなるようなソレも、今はどんどん生み出したい。

「くっ………イク、ゆうり!」

「せぇしろぉ!」

二人はほぼ同時に光の扉を開く。
そこは朝日よりも眩しい快楽の世界。
清四郎と悠理は溶け合うように、その中へと身を投じていった。

ぬるぬるとした結合部分が徐々に冷えてきて、微睡んでいた悠理はようやく身体を起こす。

「せぇしろ・・・」

「あぁ。」

快楽のあまり、半ば呆けた顔を見せる男に、再び胸が疼いた。

―――可愛い清四郎。

「気持ちよかった、ね?」

「ええ、これは病み付きになるかもしれません。」

「毎朝、してほしい?」

「―――正直言えば、してほしいです。」

「なら、さ・・・」

悠理はもう一度、身体を密着させ少しだけずり上がると、清四郎の顎下のザリとした感触を唇で確かめる。

「一緒に暮らそ?」

「悠理?」

「あたいも、朝から清四郎が欲しくなる時・・・・・・あるもん。」

ゴーン

それは鐘の音。
無論、白い鳩が羽ばたく教会の・・・・・。
直後、弾き出された清四郎の未来計画は、事細かに設定されている。

「解りました。結婚しましょう。」

「え?結婚?」

「毎朝、僕を楽しませてくれるんでしょう?」

「そ、それは・・・・そだけど・・・」

「となると、結婚が一番自然だと思いませんか?」

「・・・・・まだ付き合って3ヶ月なのに?」

「おまえと出会ってからかれこれ15年以上経つんです。これ以上知るところはないと言うほど知ってますよ。」

そんな正論を言ってのける清四郎に逆らえた試しはなく・・・・
悠理は結局、こくんと頷いた。

「せぇしろ・・・」

「ん?」

「大好き。」

「僕も、大好きです!」

その後・・・・・

仲間達にプロポーズの経緯(いきさつ)を散々聞かれた二人だったが、決して口に出せるようなものでなく・・・・

『永遠の秘密!』

ということで茶を濁したそうな。

HAPPY END