光り輝く夜景を背に、二人は深く絡み合い、部屋に響く吐息だけで会話する。
グチュグチュと濡れた音はあまりにも卑猥。
悠理は耳を塞ぎたい気持ちを堪え、ただただ揺さぶられていた。


(なんでこんなことに・・・?)

何度も浮かぶ同じ疑問は、彼に穿たれていると、片っ端から消え去っていく。

(友達だったよな。)

今、自分たちの関係は男女のそれであり、何も言い訳出来ないほど深く繋がっている。
下半身だけでなく、口、舌、唾液。
全てが互いのもので共有され、同じ感触と匂いを味わいながら、深みへと嵌まっているのだ。

キスがこんなにも激しいものとは知らなかった。
男の顔をした清四郎が自分の飽くことなく貪る姿も・・・・初めて見る。
唇が糸を引きながらようやく離れ、その淫靡な光景に微睡むことさえ許されず、悠理は再び激しく責め立てられた。

「ああ・・・あっん、あ・・・・・あっ・・・・・」

「もう気持ちよくなってるんですか?初めてのくせにやらしい身体ですね。」

(ハジメテ・・・・)

確かに悠理は初めてだった。
こんな行為をしようと思ったことも、その相手を探そうと思ったことも、今まで一度としてなかった。

(清四郎が初めての男になるんだな・・・・)

そんな当たり前の事を思い浮かべながら、逃れることの出来ない腕の中で声をあげる。

「悠理・・・・・・気持ち良いなら、そう言ってください。おまえがよがる姿を見て、僕もイキたい。」

「んな・・・こと、あっ・・・・・言えないよぉ・・・!」

「ダメだ、言え。・・・・おまえのやらしい姿を・・・僕だけに見せてくれ。」

その声に身体の芯まで痺れるような疼きを感じ、悠理は恥ずかしさを押し殺しながら応えた。

「きもち・・・・いいよぉ・・・・」

繋がった場所が無意識に絞られる。
それは清四郎へと限界を伝えた。

「ああ、僕も気持ち良い。ゆうり、ゆうり・・・・愛してる。」

再び重ねられた唇は彼女の言葉をすっかり奪い取ってしまう。

(え………今、なんて?あたいのこと愛してるって言った?)

気持ちを伝える事も無く繋がってしまった二人が、そこでようやく新たな道筋を見出した。

「ぷはっ!せいしろ・・・あたいを愛してるって・・・ほんと??」

「ああ、愛してる。愛してるから抱きたかった。こうやって・・・おまえの全部が知りたかった。酒のせいなんかじゃないからな!」

がむしゃらに繰り出される腰が、吐き捨てられるような甘い言葉が、悠理を優しく絡め取る。

「せいしろぉ・・・・・・」

「もう逃さない。たとえおまえが僕を好きにならなくても、この身体は絶対に離さない!」

(馬鹿・・・・・・何だよ、エラそうに。最初から、素直に言えよな・・・・)

恐る恐る伸ばした手で、男の背中をぎゅっと抱き締める。
彼はその感触にすら快感を覚えるのか、苦しげに眉を顰めながら悠理を窺った。

「悠理?」

「・・・・・好きだよ。」

「え?」

「相手がおまえだから・・・・あたいはこうして身体を許してるんだよ。そんくらい分かれよな。」

瞬間、清四郎の脊髄を震えるような喜びが駆け抜け、気付けば悠理の中にたっぷりと欲望を吐き出していた。

「あ・・・・」

「あ?」

「すみません、中に・・・出してしまいました。」

「ふぇ?」

「あ、でも・・・・アフターピルがあれば妊娠することはありませんし・・・・・・恐らくは・・・」

申し訳なさそうに釈明しながらも、衰えない昂ぶりを突き刺したまま、再び悠理を揺らし始める。

「べ・・・・別にいいよ・・・・・妊娠しても。」

「え?」

「結婚すりゃいいだけの話だろ?あたいたち、もう25過ぎてるんだし・・・おかしくないじゃん。」

「・・・・・・・・・・・・。」

過去、あれほど自分と結ばれる事を嫌がっていた人間の台詞とは思えないが、清四郎は時の流れと心の変化に感謝しつつ律動を速めた。

「ええ、しましょう・・・出来るだけ早く結婚しましょう。」

「は・・ぁん・・・あ、ちょっと!おまえ、また出すつもりだろ?」

「いけませんか?」

(そりゃ、別に・・・’いけなくはない’けど・・・・・)

「もう遠慮など必要ありませんからね。悠理には僕のモノをたっぷりと味わって欲しいんです・・・。」

「へ、へ、へんたい!!!」

「ええ、変態です。でも、おまえはその変態と結婚してもいいと言ったんでしょう?」

「あ・・・・・あん!!」

激しい動きに何も言えなくなった悠理は、(やっぱ・・・早まったか・・・・)と後悔しながらも、結局は肉欲に勝てず、ずぶずぶと淫楽の世界へ引き摺り込まれていくのであった。