「講堂で親しげに話していた男は誰です?」
「あ、あいつは・・・あたいにノート貸してくれたヤツだよ。」
(てか、いつの間に覗いてたんだ?学部も違うくせに・・・・)
「そう言えば食堂で三人の男に囲まれていたでしょう?魅録が見当たらなかった、ということは新しいお友達ですか?」
「あ、うん・・・・・そうなるかな?」
(食堂まで??何しに来てたんだよ!)
「一人がおまえの肩に触れましたね?何故許したんです?おまえだってそれに気付いていたんでしょう?」
「え???いや、気付いてない!んなこと知らないよぉ!」
(ヤバい・・・これはマジでヤバい流れだ・・・・)
「ふ・・・・。まだまだ僕の女だという自覚が足りないようだ。お仕置きです。」
「ひぃ・・・・!!」(なんでぇ?)
悠理の身体には紅色の痕跡が無数ある。
嫉妬深い恋人の執着の証が・・・・。
好きだと告白したのは悠理だった。
しかしそれ以上の想いを与えてきたのは清四郎。
彼の中で蓄積されていた感情は、ある意味歪んだ形でぶつけられたのだろう。
清四郎は容赦なく悠理を奪い、そしてその全てを自分の身に取り込んだ。
許さない
他の男に笑いかけることも、おどけることも、甘えることも、そして触れさせることも・・・・・決して許さない。
たとえ親しい関係の魅録にだって、許したくはない。
悠理の白く滑らかな肌は彼の強欲なまでの固執により赤く染まっていく。
『明日は長袖かぁ・・・・』
と涙ながらに考えていると、清四郎は耳輪を甘噛みしながら、そっと告げた。
「長袖は駄目ですよ。ノースリーブと短パンで大学へ行きなさい。」
「え?」
「明日は僕がずっと側に居ます。おまえが誰の物なのか、皆にハッキリと教えてやりましょう。」
引き攣る頬を優しく撫でられたとて、悠理はその言葉に頷くことが出来ない。
「わかりましたね?」
念を押されるよう唇を奪われ、そのままシーツへと押し倒される。
見下ろす男の双眸に狂気が宿っているようにも感じたが、彼女はそれを静かに見逃した。
彼に与えられる甘美な檻。
抜け出したくないと願っているのは悠理の方だ。
「せいしろ・・・・・・愛してるって言って?」
「愛してます。いつかおまえと二人だけで生きていきたい。」
「あたいも・・・・せいしろだけを見つめながら生きていきたいよ・・・・。」
点々と数を増やしていく甘やかなる執着。
彼らの辿り着く先は果たしてどんな世界なのか。
今は誰もその答えを知らない。