第五話

 

“このまま閉じ込めてしまいたい”

そう感じるほど、清四郎の心は悠理を縛りたがっていた。
しかし教師として大人として、そんな事は到底出来ない。
彼女を飛躍させること・・・それは自分に課せられた最低限の義務だ。

「ん・・・・せんせ・・・なに・・考えてんの?」

清四郎の胸の突起を指先で触れながら、悠理は不満げに見下ろした。

「君の事ですよ。」

「うそ・・だ・・違うこと考えてた。」

「嘘じゃない。」

揺らめく腰を両手で押さえ込み、下から思い切り突き上げる。

「んんっ!!!」

唇を噛み締め、快感の涙を零し、悠理は胸を反らした。

「ああ・・・やはり我慢が利かないか・・。」

清四郎は悠理を持ち上げると、あっという間にベッドの枕へと押しつける。
俯せた状態で・・。

「せ・・せんせ・・・」

「枕を噛んでいなさい。どう足掻いても君は声を洩らすだろうから。」

言いながらその昂ぶりを埋め込んでいく。

「薬は・・・飲んでいますね?」

「ん・・・うん・・・」

それは実家の病院で処方した経口避妊薬。
清四郎は同居した次の日に、すぐさまそれを手配した。
悠理の胎内を直に味わうため、どうしても欠かせない方法。
自分でもとことん鬼畜だと思わざるを得なかったが、彼女の中はそれほどまでに心地良かったのだ。
たとえ万が一、子を孕んだとしても・・・それこそが自分の望みではないのか?
清四郎は野蛮な妄想に浸る。

激しい律動を加え、押し殺された声を聞き、単純に反応する愚息。

『ああ・・・もう、僕は溺れきっている。』

何もかも捨てて、悠理と二人で暮らしていきたい・・・そんな悪魔の甘言が幾度脳内を巡ったことだろう。

「ゆうり・・・悠理・・」

うわ言のように名を呼びながら、清四郎は更に奥へと貫き始めた。
悠理の薄い背中に汗が滴り落ちる。
本当は汗などではなく、自分から飛び出す白濁したものをぶちまけたいが、しかし胎内で出すことの魅力には逆らえない。

「ん・・せ、せんせ・・も・・・う・・」

「ああ、僕も・・・そろそろ・・」

同じタイミングで達することが出来るのも彼女だけ。
清四郎は泡立ち始めた入り口を目に捉え、悠理の快感を追う手助けを始める。
そろり・・と長い手を伸ばし、秘められた花芽を擽るように弄れば、悠理は枕を噛み締め、首を激しく横に振った。

「んんっっ・・・!!」

「よく締まる・・・悠理・・・出しますよ・・・・」

「ひっ・・!」

短く叫んだ悠理を抱きしめ、清四郎は欲望の全てをその中に吐き出した。



小さく痙攣する身体を包み込みながらも、なかなか分身を出そうとはせず、
清四郎は余韻に浸るかのように目を瞑っていた。
隣の気配が気になりながらの行為だったが、悠理はかなり興奮していたように思う。
心臓を打つ音がやけに速いのだ。
悠理だけではない。
自分も興奮していた。
声を押し殺すという制限が、彼女の身体を更に敏感にさせる。

『今度は目隠しでもしてやりますか。』

大人の欲望が頭を過ぎるが、そんな事を考えていたら、またもや力が漲ってくる。

「あ・・・せんせ・・・また・・」

「もっと欲しい?」

「ん・・・。」

「可愛いな。」

どれだけ貪っても足りない女。
生徒だというのに、まだまだ子供だというのに・・・
清四郎の飽くなき欲望を見事受け入れてくれている。

「好きだ・・・。授業中も君を見れば・・どんどんと欲が湧いてくる。自分でも抑えられないほどに。」

「・・・あんなクールな顔して?せんせ・・・やらし・・・」

「君は?」

「あたい?」

「僕を見て、欲情したりしませんか?」

「・・・な・・・・何言って・・!」

途端に頬を染めて横を向く姿。
清四郎はその横顔に口付けると、耳元でぞっとするほど甘く囁いた。

「濡れたり・・・しないんですか?」

「あ・・・」

嘘のように反応する身体は、清四郎の逞しい肉茎をとろりと濡らす。

「・・・おや、いい反応ですね。」

「や、やだ・・」

「胎内(なか)もキュッと締まって・・僕を絞り尽そうとしている。」

「あ・・はぁ・・・も・・動いてぇ・・・」

官能的な声と共に悠理の下半身が蠢き出すと、清四郎はようやく身体を起こした。
そしてくるりと仰向けにさせた後、サイドテーブルに置かれた腕時計の下のハンカチを手にし、悠理の口へと突っ込む。

「ふがっ!」

「今度は君の顔を見ながらイきたい。少し苦しいだろうが我慢してくれ。」

「んん・・・!」

真っ赤な顔は抗議の証。
しかし、悠理は何も出来ないまま、清四郎の激しい抽送に溺れ始める。

「ああ・・すごくイイ・・本当に素晴らしい身体を・・・している。」

「ん・・・ふ・・!」

興奮の度合いを示すかのように、悠理の鼻から洩れる息遣いの感覚が短くなる。

「イイんですか・・・すごく締まってますよ?」

意地悪く問われても、コクコクと頷くしかない。

「いい子だ。たっぷり中に出してやりますからね・・。」

『さっきも出したじゃん!』

と無言の驚きを見せるが、清四郎はすでに無我夢中で腰を振り始めていた。

「あ・あ・・・・悠理・・・・ゆうり・・・!」

恍惚とした顔で自分の名を呼ばれると、歓喜が駆け巡る。
悠理は求められる快感に、すっかり身を委ねていた。

「・・も・・う、イッてしまう・・・・・・悠理・・・」

清四郎は達する直前、悠理の口からハンカチを抜き取ると、代わりに自分の舌を突っ込んだ。
なんの遠慮もない激しいキスを交わし、汗ばんだ肌を抱きしめる。
互いの嬌声を閉じ込めながらエクスタシーを感じれば、そこはもう、天国のように白い世界が広がっていた。



泥のような眠りにつく二人。
いつもの体勢で・・・・。
クーラーの風がのぼせた身体を心地よく包み込む。

清四郎は眠り落ちていきながらも、携帯電話でアラームをセットする。
早朝には悠理を自室へと帰さねばならない。
だが、それまではこうして抱きしめていたい。

今までの人生でこんなリスキーな行動を起こしたことはなかった。
いつも石橋を叩き、慎重に慎重を重ね、真っ当に歩んできた。
それなのに・・今はこの刺激こそ「生きている」という感覚を与えてくれる。
彼女を手にし、彼女との未来を考える。
それこそが「己の人生」なのだと突きつけられた気がするのだ。

もう、手放せない。
手放せば、自分の足元は一気に崩れ去ることだろう。
これがどんな過ちだとしても、岩をも通す一念で必ず達成してみせる。

清四郎の胸に炎が宿る。
悠理に対する彼の想いは、強い執着と共に激しく燃え広がろうとしていた。