※美可カップル
「可憐!」
白馬の王子さまって、この男の為にあるような代名詞ね。
白いタキシードにピンクのタイ。
金髪を靡かせ微笑めば、周囲五メートルはクラクラ撃沈。
若い子からお年寄りまで、女という女を虜にする男に、あたしは毎度苦笑いするしかない。
「すごく綺麗だよ。お姫様みたいだ。」
「ありがと。」
容姿を褒められるのは慣れてる。
お互いに、ね。
だからクールに微笑むだけ。
あたしが欲しいのは、そんな言葉じゃないのよ、お馬鹿さん。
「そのドレス、‘pepe’のやつ?可愛いいよね、あそこ。最近デザイナーが変わって、グッと良くなったよ。」
「相変わらずねぇ、あんたは。」
「そりゃあ、モデル業界に片足突っ込んでるからさ。今度パリコレに助っ人参加するんだ。一緒に行こうよ。」
彼にとってこの世界は狭い。
美童が教えてくれる様々なジャンルの楽しみ方は、ここ数年あたしをどんどん変化させた。
彼に愛される贅沢がどれほどか、も。
「パリコレ、ねぇ。あんたの元カノたちの温床でしょ?」
「え…………あはは!そんな事今さら気にする可憐じゃないよね?」
そうよ。
あたしは大人の女。
いちいち男の過去に振り回されたりしないわ。
だから言いなさいよ。
今はあたしだけだって、口説きなさいよ。
「まさか…………妬いてる?」
「……………まさか。」
「だよね。」
「……………。」
ふわっと抱き締められ香る匂いは、いつもより濃く感じる。
1/4の異国の血。
それでも体臭は少ない方だけど。
「今夜の可憐、すごく………いいな。」
「え?」
「ほんとはディナーが先だろうけど、予定変更してもいい?」
「美童?」
「先に、狼に食べられちゃって下さい。」
照れずにそんなこと言えるのはあんただけよね。
まあいいわ。
今日はクリスマス。
たまには言うことを聞いてあげましょう。
その代わり………
「いいわよ。薔薇の花束とシャンパンを忘れずにね?」
もちろん、あたしを喜ばせる台詞付きで。