「さ、悠理。ここに来て、僕にもサービスしてください。」
「あのなぁ~・・・あたいが好き好んでこんなカッコしてると思ってんのかよ。」
「ゲームに負けたんですから、仕方ないでしょう?」
「くそっ!人生ゲームには自信あったのに!」
「ふ………最後は悲惨な末路でしたね。」
剣菱家で行われたクリスマスパーティ。
いつもの六人+剣菱夫妻で盛り上がったのは、お決まりの余興『人生ゲームDX』だ。
最初は順当に出世コースを歩んでいた悠理。
だが結局、トップの成績でゴールしたのは百合子と清四郎だった。
ド貧民になった悠理は罰として、可憐が持参した「バニーガール」の衣装であれこれ働かされることとなり、恋人である清四郎も大満足な表情だったのだが、
次第にそれも曇り始め、とうとう皆の前から拐うよう寝室へと引きずり込んでしまった。
悠理としても、恥ずかしさ2000%だったので、それはそれで有り難かったのだが………。
どうやら雲居きは怪しい。
清四郎はソファに座り、膝を叩くと、冒頭の台詞を口にした。
要するに………自分だけのバニーガールになってくれ、と云うことだ。
「…………何すりゃいいんだ?」
「跨がって………しっかりと………そう。」
悠理が渋々言われた通りにすると、彼は一転、嬉しそうな笑顔を見せた。
「よく似合ってますよ。あぁ、詰め物が邪魔ですね。」
可憐のサイズに悠理の胸が合うはずもなく、いつかの美童のようにストッキングが詰め込まれていたのだ。
さすがに湯呑みは見当たらなかったものの。
「もう………ほんっと、おまえってスケベ………」
「悠理にだけ……ですよ。僕が興奮させられるのは。」
「ふん。こんな衣装、可憐の方が良かったんじゃないの?」
「完成形には興味ありません。」
「ん?」
「未成熟だからこそ隙が生まれ、男はそこに煽られるんです。」
「???」
膝上の悠理を優しく撫でる清四郎は、悦に入ったのか、言葉数少なくなり、恋人を欲情させるよう膝を小刻みに動かし始めた。
「ん……こら……………」
「悠理………もっとこちらに密着して……」
言いながらまあるい尻を揉みほぐす。
「ま、まさか……やるつもりじゃないだろうな?これ、可憐のだぞ!?」
「クリーニングに出せばいいでしょう?………いや、買い取る方が早いか。後々楽しめますしね。」
スイッチが入った清四郎を止める術はない。
彼の欲望が鎮まる頃には、きっとこの衣装はボロボロになっているに違いなかった。
腰を強く引き寄せられた悠理はキスをかわすことが出来ず、そのまま彼の情熱に溺れていく。
時折、息継ぎの間に囁かれる甘い言葉、「すごく可愛い」には、脳髄までもが痺れてしまう。
「せぇしろ………」
たった数分のキスで、厚い胸板にくったりと身を預けた彼女は、若い猫のように柔らかく、後はもう、どうにでもしてくれ、といった風情だ。
ほくそ笑む清四郎は、小さな白い尻尾を摘まみながら、黒い衣装の隙間へと指を差し込んで行く。
「あ………っ」
自分でもはっきりと解る泥濘。
悠理は恥ずかしそうに唇を噛むが、どんどん侵入し始める長い指を、結局止めることはしなかった。
「もう、こんなにして………。ウサギのくせにやらしいな。」
「ふ……ふん。サービスだよ。」
「ほう……では、遠慮なく楽しませてもらいましょうか。」
片手で器用にベルトを外した男は、この上なく硬い欲望を黒い布越しに擦り付ける。
「あっ!」
「なるほど………下着はTバックですか。」
そして、重なり合うそれらを一気にずらすと、躊躇わず、一番奥へと沈めていった。
「ひぃ………んっ!!」
どうしてこんなにも簡単に扉をこじ開けられてしまうのか。
悠理の身体は全開で清四郎を迎え入れ、熱い肉が縦横無尽に暴れ始める。
「あっあ………っん、やぁ………ぁん」
「聞こえるでしょう?ウサギさん。この淫らな音が。」
「やん……やだぁ。」
「ほら、もっと腰を振って。サービスしてくれないと………狼が本気になってしまいますよ。」
「お、狼?」
「そう……男はウサギを前にしたら、狼になってしまうんです。こんな風に、ね。」
激しさを増す突き上げに、弓反ってしまう悠理。
いつになく興奮している恋人は、確かに獣じみた目をしていた。
「………っあぁ!!!」
熱い
熱い
どこもかしこも熱く、溶けてゆく。
清四郎が獣というのなら、自分も同じ。
補食されるべき、獣なのだ。
「あ、もっと……もっと食べてぇ!」
「悠理!」
細い喉元にかぶりつく清四郎は、さらに力強い律動を加え、悠理を翻弄する。
いつもよりも早い絶頂が目の前にまでやって来ていて、それに手を伸ばすかのように亀頭で抉り、最奥を穿つ。
「………っく!いきますよ、悠理!」
「ああっ………!せぇしろ!!」
最後の理性で抜いたそれは、白い飛沫を飛ばし、黒い衣装をとことん汚してしまった。
もう………可憐には返せそうもない。
・
・
・
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「ふーん、ま、いいけど?」
手渡された封筒には満足いく金額が入っていたのだろう。
可憐はそれをハンドバッグに入れ、にやっと口端を上げた。
「あんた、ゲームで買っても負けても、どうせ着せるつもりだったんでしょ?」
「バレてましたか。」
「あの貧相な体にはバニーなんて似合わないのに。清四郎って昔っからマニアックよね。」
「着せる相手が大切なんです。」
「はいはい。惚気なんか聞きたくないわ。じゃ、またよろしく。」
「次は…………ピンクもいいですねぇ。」
「………恋人にイメクラプレイを求める変態ってどうなのかしら。」
「なんとでも。僕が満足出来るならそれでいいんです。」
可憐は悠理の将来を案じながらも、決して逆らってはいけない男に背を向け、足早に立ち去った。
…………ごめんね、悠理。でもあんたも幸せなのよね?
それはあくまでも、希望的観測でしかなかったけれど。