「なぁなぁ……清四郎ってばー。」
「ダメです。」
「いいじゃん、食べようよぉ!」
「絶対にイ・ヤ・だ。」
「なんでだよ!リンゴ飴嫌いなのか?」
「リンゴ飴そのものに好き嫌いはありません。問題は“カップルで20個食べきったら無料!”──なんていう下らないお遊びに付き合いたくないだけです。金なら払えば済む話でしょう?」
「えー、面白いじゃん!ここはあたいが15個食べてやっからさぁ。せーしろは5個でいいよ。」
「五個!?考えただけで胸焼けがする!二個が限度です。」
「わぁったよ。じゃ……18個食うからさ……」
「あのねぇ、悠理。よく考えてみなさい。砂糖の塊とさほど美味くもない林檎で口を真っ赤にする価値が本当にありますか?一個300円×20本ならたった6000円しか得じゃないんですよ?」
「う…………そりゃそうだよ。………でもさ、あたいだってカップルらしいことしたいんだもん。」
「カップルらしいこと?」
「だっておまえ、普段と全然変わんないし、あたいらがデートしてても恋人に見られることって少ないだろ?」
「…………そうですかねぇ?」
「そうだよ!前もフレンチのレストランで友達にしか見られなかったじゃん!」
「なるほど。だから今日はわざわざ浴衣を着てきたわけですか。賢い賢い。」
「そだよ。でも………おまえ手ぇ繋いでくんないし、先々歩くし───こんなんじゃ、恋人って言えないよ。ぐすん…………」
「わ、解った!解ったから泣くな。(汗)リンゴ飴でも綿飴でもとことん付き合いますよ!」
「やったーーー!!ほら、早く行こうぜ!」
「はぁ……ったく。普段はあんなくせに、いきなり女になるんだから困ったもんです。男心なんて、百年経っても気付かないんだろうな、あいつは────」
手を繋ぐだけで欲望に支配されるのは明らか。
───今日も、暴走しそうな自分に悩まされる清四郎であった。